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【TEALABO channel_14】未来を予測しながら、地道にコツコツ歩み続けるお茶づくり -お茶の明光園 下窪領太さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第14回目は、『お茶の明光園』の下窪領太さんにお話をお伺いしました。

「言葉ではなく、感覚で 」

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『お茶の明光園』は下窪さんのおじいさんが茶畑を開墾し、個人工場を建てたことから スタートしました(※)。長男として生まれ、幼い頃から茶工場に足を運び、遊んだりお手伝いをしたりした記憶が残っているといいます。

そんな下窪さん、高校卒業前にお父さんから「茶業を継いでほしい」と言葉があったそうです。これからの時代のことも考え、まずは県外へ出て、経営のことを学ぶために福岡の専門学校へ進学しました。

しかし、専門学校卒業後は、2年程アルバイトをしながらの生活 でした。

「継ぐことに対して「どうしたらいいか?」という気持ちはあったかもしれません。そんな迷いを断ち切ってくれたのは父でした。」

お父さんから「お茶の問屋に興味がないか?」と連絡があり、それがきっかけで24歳の時に八女(やめ)の会社へ就職することに なります。

その会社では工場に配属され、火入れ(※) やお茶の選別等がメインで6年間勤務しました。

「工場長がとても厳しい方だったのですが、火入れの方法やお茶の淹れ方等を実践しながら教えてもらいました。」

「言葉ではなく、自分の体で身につけていく感覚でした。あの感覚は今でも体に染みついています。」

30歳になり頴娃(えい) 町へUターンし、本格的に『お茶の明光園』の後継者としての日々が始まります。

※お父さんの代から小売も始めています。
※『火入れ』とは・・・荒茶を水分含有量2~3%になるまで乾燥させるとともに、お茶独特の風味を引き出すために行われる。火入れの仕方によって、風味の異なるお茶に仕上がる。

「お茶を通して出会った人たちとの繋がりを大事に 」

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 頴娃に戻ってからは茶業センターや地元のお茶農家等に挨拶まわりをして、顔を覚えてもらうことから始めた下窪さん。同じ地区の仲間たちから色々な集まりに声をかけてもらうようになり、意見交換をしながら勉強をしていったそうです。

Uターンし3年経ったある時のこと。役場に勤める地元の先輩 から「県外の催事に出てみないか?」と声かけを受け、福岡の催事に出展することになります。

 全国的に知覧茶の知名度が高かったこともあり、最初は「頴娃茶って何?」や「頴娃って何て読むの?」とお客様から聞かれることが多くて、販売に苦労したそう。

「次第に販売の方法を工夫して、「この地名読めますか?」とクイズ形式のポップを作り、興味をもってくださった方に試飲していただく形をとっていきました。」

何度か県外での催事で対面販売しているうちに「美味しい」と言ってくれた問屋がお茶を扱ってくれたり、異業種から声がかかり、違う催事に出展したりと『お茶の明光園』の飲んでくれる人が増えていきました

「催事を通して仲が良くなったお客様の中には個人的な付き合いになる方もいらっしゃいます。子供が生まれた時に、自分ごとのように喜んでくれてプレゼントをいただいたこともあります。」

 お茶を通して出会った方々との繋がりを大事にし、県外からわざわざ頴娃に訪れる方を今後は少しずつ増やしていきたいと思っているそうです。

「お客様に対して自分に何ができるか? 」

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「一番大切にしているのはお客様の信頼を裏切らないお茶づくりです。そのために、常にお客様をみて「自分には何ができるか?」を考えています。そこは父の代からずっと変わらないことです。」

自身が大切にされているお茶づくりをそのように話されていました。

そんな下窪さんが実現したいこと。それはお茶の栽培 から販売まで一貫して行うことです。

「問屋で学んだことを活かすことにも繋がりますし、対面販売を行えば、お客様に足を運んでいただけるので地域を盛り上げることに繋がっていくのではと思っています。」

「対面販売で「お茶摘みをしたい」とおっしゃるお客様もいらっしゃるので、グリーンツーリズムのような仕組みを作って、頴娃に足を運んでいただく機会を増やしていきたいです。」

その想いは対面販売でお客様と直接お話ししてきた小窪さんだからこそ感じられるものでした。また、栽培から販売にこだわっているのは、自分たちで火入れ等を行うことでお茶を最高な状態でお客様へ提供できるからといいます。

お客様を想う気持ちが地域の活性や、自身が実現されたいことに繋がっていく。そんな温かい連鎖を予感させる瞬間でした。

「熱意で、結果で、示す 」

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茶業に従事していく上でやりたいことや面白いと思ったことがあればお父さんに提案し、色々と意見をもらうといいます。

「最初は父に厳しいことを言われることもありました。でも、それなりに結果を出せば、それなりに認めてくれる ので、熱意をもって、結果で父に示せるように努力しています。」

4年前から茶畑の一部を改植(※) し“きらり31” という品種を育てているそうで、頴娃でこの品種を取り扱っている茶業者はいないので、お客様や市場でもちゃんと評価を得られるように頑張りたいとも意気込みます。

お茶を良くしたい。

その想いはお父さんも下窪さんも同じです。同じ想いを実現するために親子の対話と実践を繰り返しています。

時代の変化に合わせて変えるべき点もありますが、変えなくてもよい点もあります。そこを見極めながら、父やお茶と向き合い、さらにグレードアップしてお客様に美味しいお茶を飲んでもらいたいです。」

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インタビューの途中、『お茶の明光園』の商品でもある『月光』と『日光』を見せてくださいました。こちらの商品パッケージのデザインは家族で話し合って決めたそうです。

また、現在は9種類の品種を育てており、今年はさらに1種類増える予定だといいます。色々なことに挑戦しようという気持ちが強く感じられました。

※『改植』とは・・・古い茶株を抜き、新しい茶株に植え替えること。

「地道なことをコツコツ積み重ねていくこと 」

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対面販売を通し、お茶の可能性を感じた下窪さん。

「お茶を対面で販売していく中で、お茶の美味しさや背景について知らないお客様は多いと感じました。海外への輸出も多いと思いますが、日本国内でも需要が伸びていくと思っています。」

 足を運んで、地道なことをコツコツ積み重ねていくことで自分たちの想いを実現していきたいという強い意志を感じることができます。

ただし、催事に行くと地域行事に出られないという別の悩みも出てきます。時には地域の方に迷惑をかけてしまうことも。だから、自分が信じてやっていることが地域にも還元できるようになれば嬉しいと、お話ししてくれました。

新しい品種に改植することもですが、下窪さんが想いをもって実践されていることは、未来を予測しながら動いていく必要があります。利益になり、周りの人から評価が得られるのは4〜5年先、もしくは、もっと先かもしれない。

でも、そんな先が見えないことでも、熱意をもって行動されている下窪さんは「やりがいがあります」と力強く言葉を放っていました。

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時代がどんなに変わろうとも、ずっと変わらず大事にするもの。逆に、時代に合わせて、変わらないといけないもの。

その両者を見極めながら、日々コツコツと積み重ねていく下窪さんの姿勢から長い目で未来に向かっていく上で芯となるものを教えてもらった気がしました。

『お茶の明光園』のInstagram
『お茶の明光園』のホームページ

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【プロフィール】
下窪領太(しもくぼりょうた)
1979年南九州市頴娃町生まれ。地元の高校を卒業後、専門学校へ進学。八女にあるお茶の問屋で6年間学び実家へ就農。現在は家業の「お茶の明光園」にて自園の栽培管理と販売を行う。

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