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2.2.1. 「一般」茶道修練者に関する先行研究への批判

歴史上の茶人に関する研究では,過去の史料を元に考察される。
一方で一般的な茶道修練者,特に存命の人物に目を向けた研究は,全て茶道教室内の生徒を対象に行われている。

「若手」茶道修練者

秋田にある裏千家の茶道教室を中心に参与観察を行なった例〔Chiba 2011〕を挙げたい。
そこでは68人の茶道修練者を扱ってはいるが,茶道人口の分布図を物語るように,20代〜30代の生徒はそのうち23人である。

年齢層が分散している分,年齢に着目した分析はし尽くされていない。


「茶室の外」での茶道

北海道で女性の茶道修練者にインタビューを行なった例〔Sakaue 2011〕もある。
この研究では茶室という空間に着目し結論を導いている。
茶道における達成感(a sense of accomplishment)や,そこに存在するという感覚(a strong sense of “being there” )は茶室という場に起因するというものだ。

一般的な茶室の外で行われる茶会での参与観察を試みた本稿とは,結論を求める先が異なっている。


日本で茶道を個性にする

ハワイ在住の日本人茶道修練者を対象に聞き取り調査を行なった例〔宮内 2010〕も触れたい。
そこでは,茶道が海外で暮らす人々のアイデンティフィケーション・ツールであるという結論になっていた。

国内で茶道に取り組む人々,言うなれば国内で茶道をアイデンティティにしている本稿の事例とは,茶道修練者が置かれている状況が大きく異なる。


主婦層以外にとっての茶道

上記の先行研究の研究対象者は,その大多数が女性であった。

Corbett〔2009〕もまた調査対象を女性に限定する。
研究対象,すなわち女性がgracefulness(優美さ)を獲得するために茶道を学んでいると結論づけていた。

本稿のインフォーマントの半数以上は男性であり,女性インフォーマントも本業を持ち働いていた。
主に主婦が優美さを求めて茶道をするというCorbettの結論を,本研究にそのまま当てはめることはできない。



総合すると,現代の茶道修練者を扱った研究では「茶室の中で茶道を習う女性茶道修練者」が議論の対象になってきた。

本稿が対象にするのは,そのどれもに当てはまらなかった層である。



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