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【散文】日が暮れると安心する症候群

良い大人であろうとしたけれど
私の中のダメな子どもがひょいと顔を出した

片付けても片付けても
僕以外のところから
次々ゴミが湧いてきて
もうどうしようもなく
全てが虚しくなったんだ

家族団欒を否応なく見せつける
盆と正月が大嫌いだった

鳴かぬならいらない
ホトトギス

糸はプツンとわかりやすい音を立てて
切れたりしない
気付いた時にはもうなくなってるんだ

ケガがきちんと治るまで
キズパワーパッドに包まれて
一人で静かに眠りたい
===
栄える家系と滅びる家系の違いなんて
考えたこともないんでしょう?

私のせいじゃなくて
私の血のせいだから

土台がぐらぐらだと
上にいくら積んでもやがて崩れる
数ある名言の中でも
それだけは真実

愚痴に見せかけた幸せのお披露目

本気で悲しい時は
その話題を口に出すことすらできない

考えて考えて考えてると
やがて消えたくなるから
考えないでいる
===
気づかぬうちに死にかけてまた治る
軽度一酸化炭素中毒みたいな人生

この人達は何が幸せなんだろう?
と思うような人達が笑っている
愚かな私には一生理解できない
温かな幸せを感じて笑っている

心のシャッター閉じっぱなし
中では店主が死んでいる

何を見ても楽しくない時は
無理に笑わなくていいはずだけど
僕は周りに合わせて
笑ってしまうから
疲れてますます具合が悪くなるんだ

聞かないで聞かないで
休み中の出来事なんて聞かないで
===
どうして教えてくれなかったの
他人を許す方法を

歯の矯正みたく
心も矯正できたらな

その家族自慢を聞いてあげた私に
何かいいことありますように

一人が落ち着く
という性質を持った生き物が
人間界でやってけるわけないじゃない

「晩年は小さなアパートで一人暮らししたい」
なんて言ったら
「さみしい人」と
レッテルを貼られるのがこの世界のやり口だ
===
加われない集団から目を逸らして
一人、綱の上を渡る
そっちを見てはいけない
目が眩んで落ちてしまうから

罪悪感から社交辞令すら言えない

おさるのジョージが
無愛想で可愛くなくっても
黄色い帽子のおじさんは
許してくれますか

本を読んで共感しても
ページを閉じればまたひとりぼっち

馬鹿だったら何も考えなくてよかったのに
なんて思ってる馬鹿が一人

ただ機嫌良く暮らすことが
こんなにも難しい
===
何者にもなりたいと思ってない人は
どうすればいいですか

ロックスターの熱い歌詞が
心の空洞をすり抜けていく

いちど虚しさに気付いたら
どんなに誤魔化せた気になっても
もう同じ世界には帰って来られない

私は私が好き
例えどんなに不良品でも

頑張ってもダメだったんだから
ちょっと、一回、逃げさせて
戻ってこれたら戻ってくるから

真っ黒なぬるま湯に浸かるのは
気持ちがいいから
そのうち出られなくなって
ドロドロに溶けてしまうのかもしれない
===
キレイゴトと日常会話の境目が曖昧な
こんな世の中に生まれて

一時間前に考えたことが
一時間後にはもうひっくり返る
書き留めないと
消えてしまう消してしまう
黒い気持ちは特にそうだ

起きてもいいことがないと知ってるから
起きられないんだろうか

日が暮れると安心する症候群

《了》

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