たとえ人から変だと言われても
あなたは「食べ方」って気にしますか?
私はかなりこだわるタイプなんですよ。それぞれの料理に対して、こういう順序でこう食べる!って決めてるんです。
でも世の中には全然こだわらない人もいて、私が食べ方について熱弁すると変な目で見てくることもあります。
でもいいんです。私の自由だし。それに私は人の食べ方に文句はつけません。人それぞれ。そう思っているから。
だから私の食べ方にも文句は言われたくありません。でも知って欲しいんです。
食とは生きること。つまり食べ方とは生き様。私の生き様を人に知ってもらいたいのです。
さて、私は近所の蕎麦屋にやって参りました。注文したのは『月見そば』。食券をおばちゃんに渡し、臨戦態勢です。通常のそばであればこんなに構えることは無いのですが、『月見そば』だけは別。
注文した時から勝負は始まっているのです。
「月見そばお待たせしました!」
おばちゃんの声と同時にスタートを切ります。とにかく速やかに席につかなければなりません。なんせ今日の相手は『月見そば』なのですから。
席に着き、箸を取り、小さく「いただきます」と『月見そば』への敬意は忘れません。
そして私はいち早く黄身を救出すべく動くのです。
黄身の救出。何を言っているんだと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですがとにかく急がなければならないのです。箸で白身を掴み素早く黄身から剥がします。
つゆの中で白身を剥がされ、くるくる回る黄身。いかに手早く、そして黄身を割ることなく慎重に白身を剥がすか。それが勝負を決めます。
一通り白身を剥がした後はそばで黄身を覆い、底に沈めます。ここで黄身が割れてしまっては台無し。そっと、しかし手早く行います。
ここまで終えれば一安心。この後はゆっくりそばを楽しむことができます。
剥がされた白身とそば。これをゆっくり、できるだけゆっくり味わうのです。最初のうちは白身のテュルンとした生の食感とそば。
そしてゆっくり味わううちに・・・。
つゆの熱でしっかりと固まった白身とそば。これだ!これを待っていたんだよ!
最後にはこんなにしっかりと固まった白身が!最初の勢いから一転、ゆっくりとペースを落としたのは卵に熱を通すため。動と静を使い分け、巧みに『月見そば』を攻略することで見えるその先を・・・!
白身とそばが消えた器。そこにはつゆの熱で進化した黄身が待ち構えています。なぜ黄身を残していたのか。
私にとって玉子とは、いわば宝。その黄身はジュエルなのです!
見て下さい。この黄身は既に生ではありません。かといって半熟とまではいかない。つゆの熱をまとい『月見そば』でしか楽しめない黄身に進化しているのです!
これをつゆと一緒にちゅるんっと口に迎え入れます。
まず感じるのはつゆのうま味。そしてその後に黄身が爆ぜる!この黄身に生卵特有の臭みはありません。ただただ黄身の純粋なうま味が口に広がるのです。
『月見そば』と真摯に向き合うことで出会える、この玉子の進化。『月見そば』を味わい尽くす食べ方!
これをいろんな人に熱弁したのですが、誰一人真似することはありませんでした。
なんでよ。
いや、人の食べ方に口出しはしません。しませんよ。
でも・・・誰か真似してくれてもいいんですよ?
本当に、いいんですよ?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?