良い茶葉の見分け方:玉露

玉露は日本茶の中でも、特に高価なお茶の一つです。
旨味や甘味を最大限茶葉から引き出すための、栽培・製造工程での手間や費用が他のお茶とは一線を画します。そのため、高価な茶葉となってしまうのです。
もちろん、その価格に見合った、玉露にしかない香味体験があることも確かです。
玉露は以上の理由からも、特に茶葉選びに失敗したくないお茶の一つではないでしょうか。


1.良い玉露とは
何と言っても玉露の持ち味は、その旨味や甘味です。
特に、甘味の強いものほど良い玉露と言えます。
対して、苦味や渋味がある玉露は良いとは言えません。

香りについては、海苔のような香りである『覆い香』が強いほど良い玉露です。
ですが飲む際には、あまり香りが漂うことはありません。玉露は低い温度で淹れるためです。
そういう意味では、玉露において重要な香りとは飲んだ際の口の中から鼻に抜ける香り『口中香』であると言えるでしょう。

また、水色は澄んでいるものほど良いとされます。
昔は『玉露の白水』と言って、無色透明の玉露が最上級とされたようです。
近年では品種の変化や製造方法の変化もあって、青色がかった水色の玉露が良質であると評価されます。


2.茶葉の見分け方
まず茶葉の色ですが、緑色が濃い物を選びましょう。エメラルドグリーンの印象が強ければ強いほど、なお良しです。
ただ、黒色が濃いものは要注意です。収穫が遅れると、濃緑を通り越し黒ずんでくることがあるのです。

しかしながら、可能性は高くはないですが、黒色が濃くても良い玉露というものもあります。
品種の違いなどで黒色が濃い場合などです。

そのような際は、茶葉の形で判断することができます。茶葉に扁平なものが多くないかをチェックするのです。
収穫が遅れて茶葉が黒い場合は、当然収穫が遅れた分だけ茶葉が固くなりますので、茶葉を揉む際も上手く撚れずに扁平な茶葉が多くなります。
ですので、扁平な茶葉の多い少ないを見ることで、その茶葉がどのような理由で黒いのかを判断することができます。

ちなみに玉露の茶葉の形についての補足ですが、煎茶やかぶせ茶と比べて、針のように鋭く撚れているものは少ない傾向があります。
玉露の茶葉は栽培の都合上、水分や栄養素が多く、固く揉み込まれずに少し緩めに揉まれることが多いためです。
これ自体は、欠点ではありません。

最後になりましたが、玉露の茶葉の品質チェックにおいて最も重要なのはその香りです。
香りさえよければ、色や形から出た判断を覆すこともあります。

具体的には、海苔のような香り『覆い香』が強いかどうかなのですが、実は『覆い香』には二種類あります。
本当に海苔のような香りのものと、かすかに砂糖菓子も思わせるような、フルーティーさ・みずみずしさを感じるものという二種類です。
後者の玉露の方が、より甘味や旨味が強く、苦味や渋味のほとんどない良い玉露です。


3.茶葉の見分け方:有機栽培の茶葉の場合
まだ煎茶などに比べれば少ないですが、玉露にも有機栽培の茶葉は存在します。
有機栽培の玉露の茶葉は、そうでない玉露と比べ緑色が濃くはないことがあります。

化学肥料よりも有機肥料は吸収が緩やかですので、肥料成分の葉緑素への変換も緩やかな傾向があるためです。ただ、もちろんしっかりと緑色が濃いケースもあります。
有機栽培の場合は、茶葉の色が通常よりもやや薄くても許容範囲です。

しかしながら、葉の形状に関しては煎茶やかぶせ茶と比べ、玉露は有機栽培でも扁平な茶葉が多いということは少ないです。
元々、玉露と言う茶葉は水分や栄養素が多く、有機栽培であっても収穫が遅れない限りは茶葉が柔らかいためでしょう。

香りについては有機栽培でないものよりも、やや薄く感じるかもしれません。
ですがこれは特に玉露の場合、有機栽培のものが持つ特徴なのです。

有機栽培の玉露は、決して味や香りが薄いわけではありません。
ただ、そうでない玉露よりも舌や鼻腔に印象が残り続けることが少ないのです。

印象が残り続けた方が良いのか、それともそうでない方が良いのかは、個人の好みの問題です。どちらが良い悪いではありません。
印象が残る玉露の方が満足感があるという評価もあれば、すぐに口中や鼻腔を通り抜けた方が上品であるという評価も存在します。


4.茶葉の見分け方:茶期の違い
最後に、玉露の一番茶と二番茶・三番茶の見分け方について触れておきます。
玉露は基本的には一番茶しか生産しませんが、二番茶・三番茶が生産できないわけではありません。
ただ、他のお茶と比べても、一番茶以降は極端に品質が悪くなる傾向があります。元々、高品質が特徴のお茶なため、その落差も激しいのです。

まず一番茶以外は、緑色に艶が少なくなります。黒さもそうですが、暗い印象もかなり強くなります。
また、茶葉の形状も一番茶以外は、扁平な茶葉が多く混じりだします。

香りも芳しさを失い、かぶせ茶や煎茶のような香りになってきます。
『覆い香』が減って他の香りがしてきたり、単純に、もう良い香りとは言えなくなってくるのです。

以上の特徴が当てはまると、ひょっとすると二番茶・三番茶の可能性があります。


玉露は他のお茶よりも旨味・甘味の強さという、明確な評価軸があります。
許されるのであれば、茶葉を口に放り込んで食べてみるのも、良い評価方法です。
茶殻ですら、醤油をかけて美味しく食べることができます。
美味しく淹れた後に美味しく食べるという『お茶のフルコース』が楽しめるのも、玉露の大きな魅力の一つです。

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