良い茶葉の見分け方:かぶせ茶

かぶせ茶は煎茶と玉露の中間の特徴を持つお茶です。
ですので、煎茶に近いかぶせ茶もあれば、玉露に近いかぶせ茶もあります。
そんなかぶせ茶から”良いかぶせ茶”をどう見わけ買えばいいのかを、このページではお伝えします。


1.良いかぶせ茶とは
かぶせ茶は繰り返しになりますが、煎茶と玉露の中間の特徴を持ちます。
ですので、かぶせ茶の一般的な浸出条件である70℃・一分半という条件で淹れた際、玉露のような旨味がありつつも、煎茶のような苦味もあるというのが理想です。

また香りについても、カバーをしたお茶のみに存在する海苔のような香り『覆い香』がありつつも、煎茶の”深い森の中を思わせる香り”や品種の香りを持っていることが理想です。

また、浸出温度を70℃から下げると玉露の特徴が、上げると煎茶の特徴がより出るようなかぶせ茶であれば言うことはありません。

つまり、煎茶と玉露双方の特徴が含まれている複雑な味や香りを持ちつつも、浸出条件を調整すれば玉露寄りにも煎茶寄りにもなるお茶が、かぶせ茶の理想形です。
実は玉露や煎茶よりも、かぶせ茶の方が”良い”ものを作る・選ぶのは難しいと言えるでしょう。


2.茶葉の見分け方
とは言え、見分け方は存在します。

まず茶葉の色ですが、緑色が濃い物を選びましょう。
黄色がかっていると、煎茶の特徴が強すぎる可能性があります。
また、揉まれて撚れているのではなく、折り畳んだような葉が多いものは良くありません。煎茶や玉露にも共通することですが、収穫が遅れていて味が淡泊な可能性があります。

次に香りを嗅げそうならば、鼻息を少し当て、茶葉が温まって帰ってくる香りを確かめてみてください。
玉露の場合は単純に海苔のような香り『覆い香』が強ければいいのですが、実はかぶせ茶の場合はそこまで海苔のような印象は強くありません。
爽快すぎる香りがあると、煎茶の特徴が強すぎる可能性があります。芳しいと感じられる香りがあれば十分です。そこに少しでも海苔の香りがあれば、かなり良いかぶせ茶と言えるでしょう。


3.茶葉の見分け方:有機栽培の茶葉の場合
昨今では、かぶせ茶にも有機栽培の茶葉が増えてきています。
有機栽培のかぶせ茶では、上記の特徴は以下のように変化してきます。

茶葉の色に関しては煎茶の場合と同じく、緑色が濃くはないことがあります。
化学肥料よりも有機肥料は吸収が緩やかですので、肥料成分の葉緑素への変換も緩やかな傾向があるためです。ただ、もちろんしっかりと濃いケースもあります。
有機栽培の場合は、茶葉の色が通常よりもやや薄くても許容範囲です。

葉の形状も煎茶と同様に、やや扁平な茶葉が多い可能性があります。これは有機栽培であるということ以外に、個々の生産家の方の、揉み方の違いも影響してきます。
有機栽培であれば、ちらほらと扁平な茶葉が混じっているのも許容範囲です。

香りですが、煎茶に近いかぶせ茶の場合は、より芳しいことがあります。
玉露に近いかぶせ茶の場合は、やや薄く感じるかもしれません。

有機の肥料の場合、煎茶は香りがより芳しくなりがちなのですが、覆いをするお茶に関しては香りが薄く感じられることがあります。
理由は判然としませんが、香り成分が味成分に変換されがちなのか、もしくは『覆い香』は化学肥料の方が発散されやすいからかもしれません。

ただ、香りが薄いからといって味も薄いということに直結するわけではありません。
有機栽培の、特に玉露に近い傾向のあるかぶせ茶の場合は、香りが薄いこともあると覚えておくといいでしょう。


4.茶葉の見分け方:茶期の違い
最後に、かぶせ茶の一番茶と二番茶・三番茶の見分け方について触れておきます。

まず一番茶以外は、緑色に艶が少なくなります。黒いというよりは、暗い印象が強くなるのです。
また、茶葉の形状も一番茶以外は、扁平な茶葉が混じっていることがほとんどです。

香りも、複雑さと芳しさを失ってきます。
より具体的には、単純に雑草のように臭かったり、茶問屋が『火香』と呼ぶ香りが強い傾向がでてきます。
焼き菓子のような『火香』は良い香りですが、強すぎると焼き魚を思わせるような印象が現れてくることがあります。
茶葉の臭みを抑えるため乾燥温度を強くしたり、二番茶・三番茶は乾燥に時間がかかったりしますので、結果『火香』が強くなってしまうことがあるのです。

以上の特徴が当てはまると、ひょっとすると二番茶・三番茶の可能性があります。


かぶせ茶はお茶屋さんによっては、販売をしていない可能性もあります。
販売しているお茶屋さんの考え方次第ですが、かぶせ茶の旨味・甘味の強いものは玉露として、苦味・渋味の強いものは煎茶として販売されていることがあるのです。
まだ日本茶の定義づけが制度上などで追いついていないということもありますし、かぶせ茶の分類についてはそこまで問題視されていないという結果でもあります。

ただ、最初に述べました通り、実はかぶせ茶は煎茶や玉露よりも複雑な香味を持つお茶です。
どうしても煎茶や玉露の”サブ”という、どっちつかずな印象が現在のところ強いですが、利用の方法によってはその複雑な特徴が遺憾なく発揮されることもあります。

ひょっとすると、煎茶や玉露以上にあなたのティーライフにフィットするのは、かぶせ茶かもしれません。

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