ペアリングと品種茶

日本茶は、品種によってその香りや味が変化してきます。
ということは、ペアリングもお茶の品種によって変わってくるのではないでしょうか。

近年、そのような着目点から日本茶の品種の特徴が大きく四種類に分類されました。
その分類についてと、それらをどのようにペアリングするのが良いのかについて、お伝えいたします。


1.品種茶の4つのタイプ
日本茶の品種は、香味によって大きく4種類に分類されます。
『香味バランス型』『旨味・香気型』『渋味・香気型』『渋味型』です。
以下にそれぞれの代表品種を列挙します。

香味バランス型:おおいわせ、おくはるか、おくひかり、おくみどり、おくゆたか、かなやみどり、さきみどり、さみどり、しゅんたろう、はるみどり、はるもえぎ、ふくみどり、めいりょく、みなみさやか、やぶきた、やまとみどり、山の息吹、ゆたかみどり、ゆめわかば、Z1

旨味・香気型:あさつゆ、あさのか、くりたわせ、ごこう、さえあかり、さえみどり、しずかおり、つゆひかり、はると34、摩利支、むさしかおり、ゆめするが

渋味・香気型:香駿、静7132、そうふう、藤かおり、やまかい

渋味型:くらさわ、さやまかおり、するがわせ、べにふうき

これらはもちろん、育て方や土地によってその特徴が増減します。
ですが、その特徴を香味のバランス、香気の良否、香気の強さ、渋味の強さ、旨味の強さの5極でレーダーチャート化した時、その五角形の形がほぼ変化しないことがわかっています。

もちろん、蒸し工程を強くする”深蒸し”や、乾燥工程の温度を強くし”火香”と呼ばれる香りを付加したりすると、品種の特徴は上書きされてしまいます。
ですが、それらのある意味マスキング処理のなされていないお茶、特に品種の特徴が出やすい浅蒸しの煎茶などでは、先に挙げた4種類の特徴は如実に現れてくることでしょう。


2.お菓子と品種茶
では、具体的なペアリングの話に入っていきましょう。

例えば団子やケーキ、あるいはチョコレートであれば、香りに特徴があり、爽快な渋味や苦味があるものが合います。
この場合は『渋味・香気型』の品種が適しています。
または、『渋味型』の品種とも合うでしょう。

上の『渋味・香気型』『渋味型』とも合いますが、練り切りや饅頭、あるいはホワイトチョコレートやカステラなどと、濃厚な旨味の日本茶という”甘党”なペアリングの場合は『旨味・香気型』のお茶が合います。

煎餅、クッキー、ビターチョコレートなどと合わせる場合は、特徴が偏っていないお茶が合います。
ですので『香味バランス型』の品種のお茶が適しています。


3.料理と品種茶
肉料理の場合は、日本茶らしい風味がありつつも特徴が偏っていないお茶が求められます。
『香味バランス型』の品種茶がピッタリです。

魚料理の場合は、食事全体の味体験に広がりを持たせられる、爽快な香りと少しの苦味があるお茶が合います。
ですので『渋味・香気型』を選びましょう。味により集中するのならば『渋味型』とのペアリングも良いかもしれません。

また、魚料理と合うタイプは、中華料理とも適合します。適合の仕方は違いますが、中華料理の場合、上の二つのタイプはその渋味や苦味で、口中をスッキリさせてくれます。
また、中華料理には『香味バランス型』も合います。この場合は、香りと味において強調することの多い中華料理と、『香味バランス型』の日本茶らしいバランスがシンフォニーを生み出します。

野菜に合わせるのならば、旨味の濃い品種がオススメです。
『旨味・香気型』がフィットします。
このタイプの香りの良さも、野菜の食事体験により華やかさを添えてくれることでしょう。


4.フルーツと品種茶
リンゴやブドウには『香味バランス型』が合います。
リンゴもブドウも持っている味・香りが多種多様ですが、そこに『香味バランス型』の日本茶を合わせると、より味・香りの複雑さ・多さ・華やかさが追加されます。

ミカン・ユズ・レモンなどの柑橘系には『渋味・香気型』『渋味型』を合わせることで、それらの持つ甘味がより強調されます。
酸味との対比を強調するならば『旨味・香気型』と合わせるのも、楽しい体験を味わえることでしょう。

栗と『渋味・香気型』『渋味型』とのペアリングも、柑橘系と同様の、栗の甘味を強調する効果を生み出します。
また『旨味・香気型』『香味バランス型』と合わせると、栗の甘味と日本茶の旨味、あるいは日本茶の爽快な香りなどが存分に口中に広がります。


最近ではシングルオリジンの日本茶は一つのブームに収まらず、定着しつつあります。
よって、様々な品種の日本茶を単一で楽しめる機会が増えました。
まだ少しマニアックさの強い楽しみ方ですが、それら品種茶とのペアリングは日本茶のフロンティアとも言えるゾーンです。

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