良い茶葉の見分け方:粉茶
粉茶も茎茶と同じように、お茶の仕上げ(二次工程)において、選り分けられて出てくる副産物です。
その名の通り、粉のように細かい葉の破片の集まりが粉茶なのですが、”抹茶”、”粉末茶”とは異なることに注意が必要です。
抹茶は碾茶と呼ばれる、覆いをした栽培法で育てられた茶葉を石臼などで20μmという微粒子サイズに粉砕したものです。
また粉末茶は、煎茶や玉露などをボールミルなどという特別な機械で20μmのサイズに粉砕したものです。
対して、粉茶はサイズとしては一つ一つの大きさが1mm以上はありますので、全くサイズが違います。
抹茶や粉末茶は茶碗に点てて=攪拌して飲んだりしますが、粉茶は急須などで浸出して飲むものです。
さて、説明が長くなりましたが、粉茶は実は通常の葉の部分よりも、その個性や特徴が強調されて表現される傾向があります。
実はお茶屋さんによっては、その店の店主の方が本当に好きなのは粉茶の味わいであったりするほど、濃厚な香味を隠し持つ、知る人ぞ知るお茶が粉茶なのです。
粉茶はどのようなお茶からも取れるものですが、以下では主に販売されていることが多い煎茶と玉露の粉茶に絞ってご紹介します。
1.良い粉茶とは
良い粉茶は先にも述べました通り、選り分けられた通常の葉の部分の特徴・個性が、より強まっているものです。
ですので、煎茶ならばより苦味や渋味の強い玄人好みに、玉露であればより甘味や旨味の濃厚なものとなります。
ただ、どうしても粉茶は副産物として発生するものですので、葉の破片の集まりだけではなく茎の破片も入ってきます。
多少は仕方がないのですが、茎の破片と言ってもひょろ長い”ヒゲ”が目立つものは、良い粉茶とは言えません。
ヒゲはヒゲで美味しかったりするのですが、茎の破片の長細いものですので粉茶に混ざってしまうとどうしても、浸出した際に茎の感じが強くなってしまいます。
粉茶の長所は”葉”の特徴・個性が強まっているものですので、”茎”の特徴・個性が強すぎるのは良くありません。
2.茶葉の見分け方
粉茶の品質は、それが出てくる元となる、仕上げる前の荒茶の品質に依存します。
ですので煎茶の粉茶であれば、それが純煎=覆いの全くされていない純粋な煎茶の荒茶の場合は、緑色がさほど濃くない粉茶の方が良いですし、
現代風の少し覆いをしたような煎茶の荒茶の場合は、やや緑がかった色の粉茶の方が良いでしょう。
玉露の粉茶の場合は、茎の破片までしっかりと緑色に染まっているものがオススメです。
ただ、先の述べました通り、煎茶の粉茶であれ玉露の粉茶であれ、”ヒゲ”が目立つものはよくありません。淹れたお茶の味わいの中で、茎の香味が占める部分が多くなってしまいます。
香りは、正直言って粉茶の場合は嗅ぎにくいです。葉が細かすぎて、鼻を近づけて吸い込むと鼻の中に入ってしまい、むせてしまう可能性があります。
どうしても嗅ぎたい場合は、匂いが薄くなってしまいますが、少し距離を取って嗅ぎましょう。
香りの評価は、その粉茶が出てきた、元となる茶葉に依存します。
詳しくはそれぞれの茶葉の『良い茶葉の見分け方』にもありますが、
純煎であれば山や森の中を思わせる爽快な香りがあるか、現代風の少し覆いをしたような煎茶の場合はふくよかな香りがするか、
玉露の場合は海苔のような香り『覆い香』が強いかどうかなどです。
3.茶葉の見分け方:有機栽培の茶葉の場合
有機栽培の粉茶の場合も、その粉茶の元となる茶葉の場合に準じます。
煎茶であれば色は緑色が濃くない傾向が現れますが、香りはむしろ芳しくなることがあります。
玉露の場合も色は緑色が濃くなかったり、香りはすっきりとしたものになったりする傾向があります。
ただ、元々粉茶は元となるお茶の特徴・個性を強調した香味を持つお茶ですので、有機栽培で何かが薄まったとしても、最終的には満足のいく味わいのままであることがよくあります。
4.茶葉の見分け方:茶期の違い
最後に、一番茶と二番茶・三番茶の粉茶の見分け方です。
これも元となる茶葉の、茶期別の違いに準じます。
煎茶の場合は、特に香りが薄くなります。玉露の場合も同様です。
また、全体的に色もあせたように感じられるかもしれません。二番茶・三番茶と進むほど、茎も葉も色の鮮やかさを失う傾向があるからです。
これは茶葉そのものの違いではありませんが、二番茶・三番茶の場合は、粉茶はより多く取れることもあります。
二番茶・三番茶は葉が固くなりやすく、その分、揉まれたりする際に砕ける破片=粉が多くなりやすいためです。
以上が、粉茶の特徴です。
より細かく分けると、粉茶にもさらに”真粉(じんこ)”などと呼ばれる部分があったりします。粉茶の中でも粒が多い部分を選り分けたもので、より元となる葉の特徴・個性を受け継いでいます。
また、粉茶は浸出時間を待たずに淹れられるという特徴もあります。
粉茶は細かいため、浸出時間を待たなくても、濃厚な抽出液がすぐ作れるのです。
このような利点の多い特徴から、それぞれのお茶屋さんの店主の方の”隠れフェイバリット茶”であることも少なくない粉茶ですが、あまり販売の現場では目立ちません。
別に店主の方が独り占めしたいからではなく、あくまで粉茶は副産物ですので、量と品質が安定しづらいためです。
もしも粉茶を買う機会・飲む機会がありましたら、是非とも味わっていただくことをオススメします。
自分の中のお茶の世界を拡大するような、思わぬ驚きを届けてくれる粉茶との出会いが、きっとあるはずです。
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