良い茶葉の見分け方:ほうじ茶

ほうじ茶は実は、煎茶や玉露以上に多種多様なお茶かもしれません。
柳茶や煎茶、玉露のほうじ茶もありますし、あるいは茎などを焙じたものもあります。
しかもそれら原料の焙じ方によっても、さらにその品質は変化します。
しかしそのように多種多様だからこそ、その中から自分が心底良いと思えるほうじ茶と出会えた時は、煎茶や玉露以上の感動を与えてくれることがあります。


1.良いほうじ茶とは
ほうじ茶は、お茶屋さんによって”良さ”の方向性が大きく二つあります。
良いほうじ茶ほど”香り”が良いとするものと、”味”が良いとするものとです。
もちろんどちらも良いことを目指して作られてはいますが、最後の最後にどちらを優先するかは個々のお茶屋さんによって異なるのです。

香りの良いほうじ茶とは、華やかな香りがするものです。
香りの種類は色々あり、よくある例えですが焼き菓子のような甘い香りのものもあれば、ポップコーン様の香り、チョコレートのような香りのものもあります。
カラメルのような香りと表現されることもあります。

すっきりとした軽やかな香りを良しとする場合もあれば、どっしりと鼻に印象を残す重厚感のある香りが良しとされる場合もあります。
いずれにせよ強い、複雑で芳しい香りのするほうじ茶ほど、香りの良いほうじ茶と言えます。

対して、味の良いほうじ茶とは、コクがあるほうじ茶です。
舌への重みのある味と言い換えてもいいでしょう。
コクがないほうじ茶は、水を飲んでいるかのような味気ないものとなってしまいます。

コクの正体は細かく言えば甘味や旨味、弱い苦味などですが、それらが合わさって舌への重みのように感じられるのです。

”香り”と”味”、どちらも必要ではあるのですが、どちらも求めると逆に特徴がなくなることがあります。
そのような際、最後にどちらにほうじ茶の品質を傾けるかに、個々のお茶屋さんの考えが反映されるのです。


2.茶葉の見分け方:香りの良いほうじ茶の場合
香りの良いほうじ茶の見分け方ですが、やはり一番良いのは茶葉を嗅いでみることです。
香りを鼻に吸い込んだ際、鼻腔に圧があるかのような強い香りがあるかどうかを感じてみましょう。
その香りが強ければ強いほど、実際に淹れた時のほうじ茶の香りも芳しいものとなります。

茶葉の色は、緑色や黄色を感じないものを選びましょう。
緑色や黄色が残っているほうじ茶は、焙じ方が浅い可能性があります。

茶葉の形は、少しふわりと開いている方が良いです。
原料の茶葉は揉まれているので締まっていますが、焙じる過程で組織が膨張して、ほうじ茶の茶葉は開いたものが多くなります。
開いている茶葉が少ないほうじ茶も、焙じ方が浅い可能性があります。


3.茶葉の見分け方:味の良いほうじ茶の場合
ほうじ茶の味の良さは、茶葉の香りでは判断がつきにくいです。
ただ、もちろん香りが良いことは大前提となります。

茶葉の色は香りの良いほうじ茶とは逆に、緑色や黄色が少し残っているものが良いです。
1~2割程度残っているものを選びましょう。3割以上残っているものは、焙じ加減が弱すぎる可能性があります。
味の良いほうじ茶とはつまり、適度に焙じられていつつも、元となった原料茶葉の味が残っているもののことなのです。

茶葉の形は、さほど香りの良いほうじ茶と変わりません。
若干、開きの弱い茶葉が混じっていることはあります。これも少し焙じ具合が加減されているためです。


4.茶葉の見分け方:有機栽培の茶葉の場合
ほうじ茶に関しては、有機栽培でも他の茶葉ほど、違いが目立ちません。
栽培方法よりも、焙じ方が与える影響の方が大きいためです。

他の茶葉と同じように、有機栽培の方があっさりと飲みやすいというパターンはあるかもしれません。
ただ、逆に有機栽培品の方が一般品よりも芳しいというケースもあります。

有機栽培茶園の茶樹は、人工的に作られた品種ではない、在来種であることが往々にしてあります。
在来種は自然に生まれたもののため、香味にバラつきがあるのですが、不思議なことにほうじ茶ではそのことがプラスに働くことがあるのです。
このような場合は、有機栽培品のほうじ茶の方が、濃厚な味わいになったりすることがあります。

ただ、茶葉だけを確認して有機栽培かどうかを判断するのは、ほうじ茶では難しいと言えるでしょう。


5.茶葉の見分け方:茶期の違い
最後に、一番茶と二番茶・三番茶の見分け方についてです。
とは言えこれについても、ほうじ茶の場合は見分けるのが難しいです。

強いて言えば二番茶・三番茶の方が、茶葉の形が通常よりも大きく膨らんでいたり、葉脈が目立っていることがあります。
ただ、一番茶の収穫の遅いものでもこの傾向は起こり得るため、あくまで参考程度の見分け方です。

また、ほうじ茶の場合は二番茶・三番茶の方が品質が良いと判断されることもあります。
在来種の場合と同じく二番茶・三番茶は、品質にバラつきが存在します。これがほうじ茶になった時には、プラスに働くことがあります。


ほうじ茶は、日本茶業界の中でも他のお茶と比べると、特定の評価基準が存在しません。
逆に言えば、他のお茶と比べるとほうじ茶は、多種多様に楽しむチャンスが存在する、ということになります。日本茶の中でも特異なポジションを占めているお茶です。

また、自宅で茶葉をフライパンで焙じることで、自分好みに作ることができるお茶でもあります。
ほうじ茶のあるお茶ライフは、ない場合と比べて段違いに、楽しみの選択肢が増えること間違いなしです。

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