内質審査とは

内質審査は茶問屋と呼ばれる人々が行う、お茶の判別法の一つです。
茶問屋は生産家が作ったお茶を市場で買い付けるのですが、その際にまず外観審査ということを行います。
外観審査の後に内質審査を行い、そのお茶をどのぐらいの価格で購入するかを決定します。
外観審査と同じく内質審査も、一般の方々がお茶を選ぶ際に活用することができます。


1.内質審査とは
外観審査に対し、お茶の内質つまり中身を確認するのが内質審査です。
茶問屋は、市場に並ぶ百種類以上のお茶から、外観審査を使って数種類を選定します。
そしてその選んだ数種類に内質審査を行い、それらのお茶を幾らで購入するかを決定するのです。

具体的には、お茶を浸出してその香り・味・水色を確認します。


2.内質審査:茶葉の準備
内質審査ではどのお茶も一律で、4gの茶葉を100℃の熱湯に4分浸出させます。
茶問屋や市場によっては、3gの茶葉を100℃で5分浸出の場合もあります。
この条件はお茶を美味しく飲むためではなく、その欠点を暴き出すための条件です。

内質審査では、白い拝見茶碗という器が用いられます。水色を見やすいように白色をしています。
そこにネットカップという道具を入れます。拝見茶碗と同じ形をしている網で、その上から茶葉を入れることで、最後に茶殻が掬い上げやすくなります。
ネットカップは使わなくてもいいですが、あると便利です。

最後に網匙、スプーンが用意されています。
網匙は浸出中に茶殻を何度か掬い上げ、茶殻の香りを確認するための道具です。
スプーンは大匙程度のサイズですが、その先は真円形をしています。これで浸出液を掬って、味を判断します。


3.内質審査:茶殻の香り
まず茶殻の香りを確認します。
浸出中に、茶殻を網匙という道具で何度か掬い上げて行います。

外観審査と同じく、焦げたような臭いや油のような臭いといった、製造工程中のミスから発生する臭いがないかどうかを確認します。
熱湯に浸してようやく、欠点となる臭いが出るお茶というものもあるのです。

もちろん良い面として、煎茶では品種の香りや爽快さのある香り、香木のような香りがするかどうかも確認します。
かぶせ茶や玉露では海苔のような香り『覆い香』、特に瑞々しいウリ科植物のような香りを探します。
そのような香りのあるお茶は、旨味や甘味が豊富に含まれている可能性が高いためです。

浸出液の香りも嗅ぎますが、茶殻の香りに問題がなければ浸出液の香りにも問題はない可能性が高いです。
内質審査時の香りの判断では外観審査時よりも、香りの強度や繊細さが判断しやすくなります。


4.内質審査:浸出液の味
次に、味に異常がないかを確認します。
具体的には、後に残り続けるような苦味や舌を締め付けるような渋味がないか、雑草のようなエグ味がないかどうかです。
熱湯で通常よりも長めに抽出しているので苦味や渋味は出てくるのですが、上記のような特徴があると欠点となします。

逆に、煎茶であれば爽快な苦味とコクがあれば良いお茶です。
かぶせ茶や玉露で、ほぼ苦味や渋味が感じられないものも良いお茶と判断します。


5.内質審査:浸出液の水色
最後に、水色を確認します。
煎茶であれば濃厚な黄色、特に少し赤みがかった黄色をしているものが理想です。
蛍光色のような黄色の場合は、味わいにコクが少ないことがあります。

かぶせ茶や玉露であれば、青みがかった水色が理想です。
煎茶にも言えることですが、あまりに濁りや沈殿物が多いと、お茶の製造工程中の『蒸し』が強すぎる場合があります。
『深蒸し煎茶』の場合はそれで構わないのですが、そうでない場合は濁りや沈殿物が多すぎるのは良くありません。味が単調になることがあるのです。


お茶を買う際に試飲ができる場合、上記のチェック項目を意識すれば、自分が求めるお茶を購入しやすくなるでしょう。
また上記チェック項目は、日常でお茶を味わう際にも役立てられるかと思います。
知っていて飲むのと知らなくて飲むのでは、お茶の味わいは変わるものです。知識はお茶の味を劇的に変えることもあります。
ワインやコーヒーと同じく、お茶にも『知識を飲む』側面があると言えるでしょう。

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