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浪江から相馬への、自転車と海鮮の旅。

久しぶりに命の危険を感じた。

東京より3度くらいは涼しい予報の時に、福島沿岸を走る旅に決めて、電車や宿の予約をした。

しかし、当日に近づくにつれて、同じくらいに上がってきた。

浪江の駅に降り立ち、改札のホームに向かう階段を登るとやばい暑さだ。

改札を出て自転車を組み上げるのにも、少しボーッとして時間がかかる。

組み上げて、まずは浪江の道の駅に向かう。

地元の魚のちらし寿司が食べられるらしい。

三千円の上ちらしを頼む。


地物、常磐もの魚で埋まって米が全然出てこない!

とりあえず一番高いのを頼んで大満足だけど、その日のオススメで、もっとシンプルだけど鮮度バッチリの手頃な地物の丼もあるみたいなので、それもおすすめだと思います。

なみえ焼そばでも、十分旨いので是非お立ち寄りください。

食べ終わり、自転車のケージに入れるボトルに水を入れる。600mlほど。

この時点では、まあ大丈夫だろうと思っていた。

走り始める。

風の向きと進む方向が同じだ。

冬には最高のシチュエーション。

風の抵抗がないだけでなく、風が一緒に動いてくれるから寒くない。

しかし、この気温ではやばい。

全く汗の気化熱が働かない。

私が暑さに強いのは、たくさん汗をかけるから。
しかし気化熱が期待できないと非常に危険。

そして、次の困難は、全く日差しを遮るものがないこと。

東日本大震災での津波被害の後、この地域では植林が非常に多くされている。

それがまだ始まったばかりで、高くて1メートルほどのものばかり。

海沿いのルートを選ぶということは、日陰がないということ。

さらに海の前には高いコンクリートの防波堤があり、海が見えない。

久々の自転車旅ということで、水分補給のタイミングを甘く考えていた。

歩く旅に比べて、スピードがあるので、多少はなにかの施設に出くわして水を補給できると思っていた。

しかし、全くない。

一応、ギリギリの水分補給で抑え、どうにか水場を探していたが、昼過ぎ、このままの気温だと危険だと判断した。

例えば、ここでパンクしたら、自転車にトラブルがあって修理に三十分時間がかかったら危険で、自力ではどうにもならなくなる。

走っていると、左に曲がれば「原ノ町駅」方面の表示がでた。

この数年、自分のルートを断念することはしていなかったが、ここで断念しないと駄目だ、と駅に向かって方向を変えた。

残りの水を少し飲んで駅を目指す。

この距離で、この残りの水なら大丈夫だろう。

そして走っていると、信じられない程熱い風が吹いてきた。

これ、まるでサウナの扉を開けた時みたいだぞ。

低いけど山から吹き降りる風、これはフェーン現象か!

この熱風は経験がない。田んぼの真ん中で、こんなに暑いなんて…

すべてが、ギリギリ。

走りながら、今までの旅でのいろんなギリギリが、走馬灯のように思い浮かんで来る。

少し大きな県道にでた。

ふと横を眺めると自動販売機。

「助かった〜!」

もうろうとした中で、まずぬるくなったペットボトルの残りの水を頭からかける。

熱湯かと思うほど。

塩分の入った天然水みたいなのを買い、ゆっくり口の中で含みながら飲む。

ここで一気飲みすると、食道(気管?)がおかしくなるから、ゆっくり慎重に。

一つ難関を越えて走り出す。街に近づくにつれ、水道のある公園もあり、そこでペットボトルに水を満たし、タオルを浸し、体を拭く。

少しずつ、思考が人間に戻っていく。

本当に公園の水道はありがたい。

この温度の水が、一番体に優しい。

国道に出るが延々と照りつける強烈な太陽。キツさは変わらない。道はアップ・ダウンが出てきて交通量もある。

コンビニやホームセンターなどがあれば立寄って、その中で体を多少冷やしては、走る。

ようやく、雲が出てきて、体も楽になり、目的地の相馬。ホテルに着くことが出来た。

シャワーを浴び、いっとき寝て、夕飯だ。

居酒屋を探す。なかなか入りやすい店がなく、探していたら、屋台村みたいな入りやすい所を見つけた。

入ると、オープンしたばかりの新しい店で、お店の対応がギクシャクしていた。最初に接客したのは自分より幾分若い?、昔ライブハウスを経営していたかのような雰囲気の人で、一番入口から遠いスタッフの休憩場所みたいな所に通された。

しかし、スタッフの中の一人の若いお兄さんが、いろんな所に気づいてくれて、席を変えたり、椅子を変えたり、何かと気をかけてくれた。

この人がいるかいないかで、全然自分のこの町での印象が変わる。

これからAIだロボットだ、といろいろあるけど、人間でなければできない仕事があって、まさにこういうことだよな、と思った。

彼みたいな人が、経験を積んでより良い自分の天職を見つけられたら幸せだろう。

また、いろんな職業でそれに合う天職な人を必要としているんじゃないかな。

「人間到る処青山有り」だ。

今日、一番強烈だったのは、暑さではなく、彼の深さだった。

その後、22人の団体が突然来た。

みんな慌てているが、うまく捌いているなぁ。素晴らしい。

では、そろそろ。

私は「老兵は死なず、ただ支払うのみ」で。

ごちそう様でした〜


地物のホッキ貝。こんなに美味いのか〜