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印刷物デザインのカラーモードはRGB、CMYKのどちらが正しい?という話

元WEBデザイナー(WEBデザイナーになる前はDTPオペレーター)が、デザインについてつらつらと書いていきます。今回は印刷物のデザインを作成する際、カラーモードはRGB、CMYKのどちらが正しいのか?ということについて語ります。デザイナーを目指したい人、デザインを学んでいる人、就活中の人、駆け出しデザイナーに読んでいただければ幸いです。


RGB入稿OKの印刷会社も増えているのでCMYK入稿は「絶対」ではない

最近SNS上で、とあるデザイナーの迂闊な発言が発端で、若手デザイナーとベテランデザイナーの間で印刷物の版下データのカラーモードはRGBかCMYKか論争が起こっていたようです。

かつては印刷物をデータ入稿する際は、版下データのカラーモードはCMYKであることが絶対条件でした。(版下データにRGBが混入していると、版下を作る工程でアラートが出て作成不可能になったりする。)

したがって、「印刷物の版下データはCMYKであるべき」と主張する人達は古株のグラフィックデザイナーが多いようです。

昨今では、印刷技法、印刷機械の多様化によって、版下データがRGBでもOKな印刷会社も増えているようです。ネット入稿、少部数印刷対応の印刷会社はRGBでもOKな場合が多いです。(印刷機材がオフセット印刷機ではなく、データから直接出力する業務用プリンターであることが多いため。)

「印刷物の版下データはRGBでも良い」と主張する人達は昨今のDTP事情に明るいデザイナー、Canvaユーザー、WEBデザイナーに多く見られます。

ちなみに、筆者は「印刷物の版下データはRGBかCMYKか」については「デザイナーの一存では決められない事」と考えています。

そもそも、RGB入稿の可否を決めるのは依頼を受ける印刷会社であって、デザイナーではありませんよね?

印刷会社の環境、印刷技法によってはCMYKでなければならない場合もある

RGB入稿OKな印刷会社も増えてはいますが、印刷会社の環境・設備や、利用する印刷技法によってはCMYKでなければならない事もあります。

RGB入稿がOKな印刷

RGB入稿でもOKな場合は、データからの直接出力が可能な印刷技法が用られる事が多い様です。

巷にある印刷部数100部未満でも発注可能な小ロット対応の印刷サービスは、版を作らずデータから直接出力する業務用プリンターを使っていることが多いです。そのため、入稿された版下データがRGB、CMYKどちらで作られていても出力自体は問題なく行えます。(家庭用のプリンターやカラーコピー機と同じ原理・理屈。)

ちなみに、オフセット印刷機を利用した印刷物作成は、印刷会社の損益の分岐点が「印刷部数1,000部」に設定されている事が多いため、デザイナーが1,000部未満の依頼を印刷会社におこなった場合は、1,000部刷った時と同じ料金を支払うか、断られるかの二択になります。

したがって、印刷部数1,000部未満の小ロット印刷でも対応可能な印刷会社は、RGB入稿がOKである事が多いと考えて良いでしょう。

また、Canvaのような、オンラインでデザイン制作から印刷までを一貫しておこなえるサービスを利用した場合、カラーモードがRGBかCMYKかを気にすることなく印刷が出来る事が多い様です。

CMYK入稿が求められる印刷

・版を作成してオフセット印刷する
基本的に、版を作成してオフセット印刷機を使用する場合は、版下データのカラーモードはCMYKであることが求められます。オフセット印刷の原理を考えれば当然の事といえるでしょう。

親切な印刷会社の場合、デザイナーがRGBで入稿しても印刷会社側でCMYKに変換対応してくれたりしますが、RGBをCMYKに変換する際に色の再現性の問題が出てくるため、印刷物の色の再現に関してうるさい客への対応を面倒だと考える印刷会社も多いです。激安価格で印刷を請け負う会社や小規模の印刷会社は、工数削減、クレーム対応が面倒、瑕疵責任を負いたくない等の理由から、RGB入稿からのオフセット印刷を嫌がる傾向があります。

・特色、先刷り・後刷り、ノセ、箔押し等の印刷技法を使用する
DICやPANTONE等の特色を指定した印刷の場合、RGB対応の業務用プリンターでは対応不可能ですので、CMYKでデータを作成する方が無難であると考えられます。また、先刷り・後刷り、ノセ、箔押し等の版を作成する印刷ならではの表現技法を使う場合は、CMYKで色分解を行う必要があります。

・一度に1万部以上の大量印刷
前述のとおり、オフセット印刷の損益分岐点は「印刷部数1,000部」ですが、逆に一度に大量印刷する場合は値引きが可能になったりします。特に一度に1万部以上の印刷をする場合、オフセット印刷はお得な値段になります。逆に業務用プリンターで大量印刷するのは現実的ではなく、どこの業者でもお断りされるか、オフセット印刷利用をお勧めされると思います。したがって、一度に大量の印刷をする場合は、入稿データはCMYKで作る事が基本になります。

環境、技法を問わず無難なのはCMYK

RGB入稿OKな場合も増えてきてはいるものの、全ての印刷会社の入稿規定、印刷技術はCMYKが基本であることは変わりません。したがって、印刷物のデザイン制作はCMYKで行った方が無難ではあります。

利用する印刷会社をデザイナーが決められる案件であれば、デザイナー側でRGBにするか、CMYKにするかのコントロールが可能ですし、どちらが良いかわからない場合は印刷会社に相談する事もできますが、印刷会社をクライアント側が決める場合や、デザイナーが印刷会社の入稿規定を確認する事が出来ない状況では、版下データはCMYKで作成しておいた方が無難ではないかと思います。


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