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デザイナーには「良い作品を作るデザイナー」と「良い仕事をするデザイナー」がいる、という話

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回は良いデザイナーの2つのタイプについて語ります。職業訓練・スクールでデザインを学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


「良い作品を作るデザイナー」と「良い仕事をするデザイナー」

アートディレクター、デザイナー等、デザインの仕事に携わる人には実に様々な人間性、性格の持ち主がいますし、徹底的にこだわりを持って仕事をする人、反対に適当かつイマイチな仕事をする人等、仕事に対する姿勢や質もさまざまです。

その中でも優秀な人達には、「良い作品」を作る人、「良い仕事」をする人の2つのタイプがあるように思います。

前者はクリエイティブの質の高さの追求に重きを置いている傾向、職人的な気質があり、後者は提供するサービスの質に重きを置いている傾向、奉仕家的な気質があります。

良い作品を作るデザイナーは「良いクリエイター」、良い仕事をするデザイナーは「良いサービスマン」であるとも言えるでしょう。

「良い作品を作る事」「良いサービスを提供する事」そのどちらもデザインの仕事においては重要ですが、状況や求められている事によっては、必ずしも質の高い作品作り=良いデザインにはなりません。

デザインの仕事では、作るものの質の高さの追求以上に、目的、要求に対する最適解を導き出す事、クライアント、エンドユーザー双方に良質な体験を提供できる事が重要です。

筆者が出会った「良い仕事をするデザイナー」に共通する特徴

筆者がデザインの仕事に関わったなかで出会った、良い仕事をするデザイナーだなと感じた人達に共通する特徴のうち、特に印象的なものを4つ挙げてみました。

・「自分が楽しい」ではなく、「他人が喜ぶ」のが好き

デザイナーは「作るのが好き」な人であることが多いと思いますが、良い仕事をするデザイナーはそれ以上に「人に喜んでもらう」のが好きであることが多いです。その思想ゆえなのか、人当たりが良く柔和な性格の人、人懐っこい人が多いのも良い仕事をするデザイナーの特徴です。

・「その人にとっての一番」を理解できる

良い仕事をするデザイナーは「共感力」「傾聴力」に優れていて、デザインを依頼する人の意図や思いを理解し具現化できる人が多いです。

クライアントが求めているものは必ずしも美しいデザイン、高品質なデザインであるとは限りません。良い仕事をするデザイナーは「その人にとっての一番」を理解し、丁度いい塩梅のデザインを提案できる人達です。

・クライアントと協業するという姿勢で仕事をしている

良い仕事をするデザイナーの多くは「デザインはお客様との協業で生まれる」という考え方を持っています。ですが、クライアント側は必ずしもデザインに精通しているとは限りませんし、時として「プロに全てお任せ」よろしく丸投げしようとすることもあります。

良い仕事をするデザイナーはそのようなお客様でも、デザインプロセスに上手に相手を巻き込んでいくコミュニケーション能力を有している人が多いです。

・柔軟な対応、発想ができる

良い作品を作るデザイナーは時として、自身の信念、思想を曲げられず、かたくなに押し通そうとしてしまう事がありますが、良い仕事をするデザイナーは状況や相手に応じて柔軟な対応、発想ができる人が多いです。

かといって妥協や諦めがあるわけでもなく、自分の信念がないというわけでもありません。そのあたりのバランス感覚や調整力が優れた人が多いように思います。

利他的な思考、広い視野を持つ人が求められる時代になっていく

「良いデザイン」を作る人は、基本的に利他的な思考、行動ができる人、目的達成のために広い視野を持って思考、行動ができる人であることが多い様に思います。

これからの時代、職人気質でモノつくりを追求する「良い作品を作るデザイナー」以上に、社会、組織が抱える課題解決の手段としてデザインを活用できるデザイナー、あるいはデザイン思考を持った人の需要が増していくことが予想されます。

一方で「良い作品を作るデザイナー」が不要になるかというとそんなことはなく、これまで通り専門性の高い分野・領域や、高い品質の仕事を求められる現場で重宝されると思います。もともと活躍できる舞台が「良い仕事をするデザイナー」とは違いますし、今後はより一層差別化、棲み分けが進むものと考えられます。

「良い作品を作るデザイナー」へと至る道程が狭き門・茨の道であるのは、これからも変わる事は無いでしょう。全てのデザイナーがクリエイティブの高みを目指すことはできないでしょうし、周囲の期待に応えるためのクリエイティブな活動であれば、必ずしも高みに至る必要はないと思います。

これからデザイナーを目指す人、デザインを勉強中の人は今後の社会の動向、デザインに対して社会が求めるもの、自身の理想とする働き方、やりたい事、適性を見極めたうえで、「良い作品を作るデザイナー」あるいは「良い仕事をするデザイナー」になることを目標にしてみると良いのではないでしょうか。


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