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社会人になってからデザインを学び始めた初心者&駆け出しデザイナーの課題と解決策

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回は、社会人になってからデザイナーを目指している人、デザインを始めた人によく見られる課題と、どうすれば解決するかについて語ります。デザイナーを目指したい人、デザインを学んでいる最中の人、デザイナーを目指して就活中の人、駆け出しデザイナーに読んでいただければ幸いです。


その1.審美眼、造形的表現力が幼少期からアップデートされていない

幼少期の記憶、体験をもとに、小中学生の図画工作のレベル感で「自分はものを作るのが得意」と思い込んでいる人達が抱える課題です。特に幼少期にコンクールで賞をもらった等、なにかしらの成功体験がある人が陥り易いと考えられます。

入学に際して実技試験を課され、入学後は常に課題と講評に追われ他者と比較され続ける芸大、美大、専門学校の出身者は段階的に感性、表現力を身に付け、アップデートしていく事が(ほぼ強制的に)できています。

一方、社会に出てから何かのきっかけでデザイナーを目指す事を決めた人達は、それまで美術、デザインに対する感性、表現力を磨く事をしていなかったにもかかわらず、根拠のない謎の自信で「私にもできる」と思ってしまうようです。

謎に自信のある人達の思考・行動はもしかすると、子供基準の感性、表現力、子供時代の成功体験がベースになっているのかもしれませんが、当然ながら大人の社会が求めるデザインに対して、子供時代の成功体験、感性、表現力で臨んでも通用するはずがありません。

解決するには?

・審美眼、観察眼を鍛える
いわゆるインプット作業です。見るべき対象には平面領域のデザインだけでなく、立体の領域 -プロダクトデザイン、インテリアデザイン、建築なども含めましょう。観察眼を鍛えるためには、漠然と外観を眺めるだけでなく、構成要素の分析、内部構造や設計の理解 - 例えば、生き物なら各部位の役割、筋肉、骨格、関節の稼働範囲を理解する、機械なら仕組み、構造、設計思想・コンセプトを把握する等、「見る」の解像度を高める事が必要です。

・アナログなアウトプットの積み重ねで表現力を磨く
インプットだけでなくアウトプットの練習も重要ですが、PC操作だけでなく手作業でのアウトプットも造形的センスを養うには必要だと考えられます。
デザインのラフを考える際はできるだけ手書きにする、イラスト、デッサン、平面構成等、グラフィックデザインのアナログな基礎訓練を、PCから離れ手作業で行う事で、造形的表現力を養う事ができます。

・写真を撮る
芸大、美大では、デザイン科の基礎演習として写真撮影をカリキュラムに組み込んでいる所は多いです。写真撮影を通して、構図感覚、演出、ライティング(文章ではなく光の方)・トーンに対する意識・感覚を学ぶ事ができます。これらの事はデッサンや絵画制作でも学べますが、写真の方が取り組みやすく、習得も速いと思われます。

その2.導き出した「解」のピントが要求からずれている

デザイナーを目指す理由に「モノづくりが好き」「自己表現がしたい」を据えている自己中心的なデザインをする人、自身のセンスだけを頼りにデザインしてしまう人が抱えやすい課題です。

・自己中心的なデザインをする人の場合
デザイナーを目指す理由として「モノづくりが好き」「自己表現がしたい」を挙げる、自己中心的なデザインをする人達は、デザインをする際、他人の要望よりも「自分の作りたいもの」を作る事を優先したり、クライアントの要望を聞いてはいるが理解していない場合が多く、自己満足的なアウトプット、客観的な根拠の無い、主観的で独善的な解釈に基づくアウトプットをやりがちです。

そのような制作物は往々にしてクライアントの要望からも、マーケットのニーズからもズレており、効果的なデザインになりにくい傾向があります。

・自身のセンスだけを頼りにデザインしてしまう人の場合
自身のセンスだけを頼りにデザインしてしまう人の制作物は、課題に対する解としての根拠に乏しく、なぜ?と問われると合理的な説明ができません。また、アウトプットに論理的飛躍が見られる、デザインの言語化を求められた際に言葉に詰まる、言語化が上手くできないといった事例を多く見かけます。

自身のセンスだけを頼りにデザインしてしまう人も自己中心的なデザインをする人同様、クライアントの要望、マーケットのニーズからズレてしまう事がよくありますが、時々まぐれ当たりが出たりすることもあります。

一度成功体験を得てしまうと、それをもとに根拠のないデザインを繰り返してしまうので再現性に乏しく、また仕事のやり方が属人的なので、他者とのノウハウ共有、デザインシステム構築が難しくなってしまいます。ともすると、自己中心的なデザインをする事よりも厄介かもしれません。

解決するには?

・「デザインはビジネス」を徹底する
デザインはビジネスであり、ビジネスを行うにあたって出てくる課題を解決する手段として活用することを旨としています。デザイナーとして仕事をするにあったっては、常に周囲に望まれている事、求められている事に対する解を導き出すことに徹底しましょう。

・自分に対してドライになる
自分の「好き」「気持ち良い」「やりたい」を抑えられる位に、自分に対してドライになりましょう。クライアントはデザイナーの自分語りを求めてはいませんし、クライアントのビジネスは、デザイナーのために用意した自己表現のテーマでも、デザイナーが好き勝手できるおもちゃでもありません。

・傾聴力を鍛える

クライアントに対するヒアリングは、単純に話の聞き取りをするだけでなく、話の内容の理解、相手の意見を受け入れる事が重要になります。また、クライアントの事だけでなく、その周辺環境や背景にまで視野を広げて、「知ろう」「理解しよう」とする事が大切です。

・業界、マーケットのリサーチ、データ収集を行う
デザインの制作を始める前に、まずは業界の傾向、同業者・競合がどのようなサービスを展開していて、どのようなデザインをしているのか等、リサーチを行い、データの収集しましょう。客観的なデータを根拠にして、自分の推測・思い込みによる判断・行動、自身のセンスだけを頼りにしたアウトプットをできるだけ無くすように心がけると、自己満足、自身のセンスに頼り切ったデザインから脱する事が出来ます。

・分析と言語化の練習を積む
デザインの分析・言語化練習は自身のやっていることの客観視と論理化、合理化の訓練になります。ただし、他人のデザインの分析と言語化ばかりやっていても、自分のデザインの言語化は上手くなりません。普段から自分の行動、感覚、感情等の無意識的、自動的な反応を意識的に捉え、なぜ?を考えたり、言語化する訓練をしましょう。また、分析、言語化する対象はデザインだけに絞らず、あらゆる物事を対象としましょう。

手っ取り早い解決方法は自分よりも仕事が出来る人達とチームで勉強or仕事する事

自身のウィークポイントを改善し、自分の殻を破る手っ取り早い方法は、自分より「できる」人達と協業する事だと思います。

自身よりも仕事ができる人達の仕事のやり方、仕事のルール、思考・思想に触れる事で、仕事のレベル感、アウトプットの質、自分の知らない世界、自分の至らない部分を知り、改善していく事が可能になります。

ただし、あまりにもレベルのかけ離れた人達といきなり接触してしまうと劣等感に押しつぶされてしまうので、自身がなりたいと思うレベルと同等か、ちょっと上のレベルの人達と一緒に勉強、もしくは仕事をするのが良いでしょう。

自分と同じレベル感の人同士で集まるのは、モチベーションの維持や心の慰めにはなるかもしれませんが、上達のために得られるものは少ないのでおすすめできません。

制作会社等に就職した場合、アートディレクターや先輩デザイナー達と協業する事になり、なかば強制的に「自分以外の様々な事」を体験することになりますが、実務未経験のままいきなりフリーランスになると、そのような自身を客観視できる体験をする機会に恵まれません。

実務未経験でフリーランスになってしまって経験不足に悩んでいる人は、フリーランス同士でチームを組んで活動している人達と繋がりを作って、案件にチームの一員として参画することを試みると良いかもしれませんね。


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