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「海辺で」超ショートショート小説


海を目の前に、笑いながら話す20代の若者2人がいた。

「なぁ、宇宙人っているのかな」

「いるわけないじゃん」

「でもアメリカのNASAは宇宙人と極秘に接触してるっていうポストが溢れてるんだぜ」

「それ見たことある。結局真相は分からないけど、宇宙人に憧れてる人とか、宇宙人こそが神様とか言う人がいるんだろう」

「そうなんだよ。他にもレプティリアンって聞いたことあるかい?」

「あるある、地底人のことだろう。地底には大きな空間があって、そこに人型の爬虫類が住んでるとか…」

「そうそう。イギリスの女王がレプティリアンだっていう動画がSNSで回ってきたんだよなぁ」

「何信じてんだよ。そんなわけないじゃん。結局人間は都合のいい考えしかできないんだよ。地底人とか宇宙人とか、今目の前の人間から離れられる素材があるなら、目の前の事に向き合わないために恐怖と羨望の存在を作るのさ。」

「そうかぁ…。だよなぁ…。」

「まぁ、来たら終わりかもな。そんな訳の分からない人間みたいなのに遭遇したって、人間がどうもできないじゃないか」

2人は海を眺めた。青年たちは、自分達の向き合わないといけない社会という大きな生き物から逃げるように、宇宙とか地底とか、自分のコントロール出来ないものについて語るのだ。

「なぁ、もう帰ろうぜ。明日も仕事なんだからさ」

「そうだな。きついなぁ社会人って」

そういって2人は立ち上がり、その場を後にした。

その直後、海からそれは現れた。
イルカのような頭の、手とも足とも言えない触手が8本。表面はぬめり、またザラザラとした部分もある。体中が様々な傷がついており、目は死んだ魚のような目をして、じっと2人を見ていた。そして何か喋った。すると、無数の影が海に浮かび始めた。これから海底人と人間の出会いが始まる。

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