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洋楽オタクがK-POPを聴く レドベルは"自身のジレンマ"とどう向き合うのか RedVelvet - Cosmic

みなさんこんばんは。

とうとうRedVelvet10周年カムバがやってきました。今走り書きをしています。別記事でアルバム曲について書きます。


ここ数年のレドベルはとにかく自身のコンセプトとその表現に対して非常にストイックでメインストリーム(第四世代第五世代の登場もあるが)とは一線を画していました。それはまるで刀を研ぐ鍛治職人のような、人を斬るための切れ味ではなく、その実用性をも美しさとし、常に己とその作品に向き合う誠実さをカムバックから感じていました。そして僕も、自身が想像できるような容易なリリースはないことを覚悟していました。

G線上のアリアの破壊的サンプリングが春のグルーヴを生み出したFeel  My Rhythm、平面的なガーシュインのサウンドで文字通りコミカルさを表現したBirthday、陰鬱としたサウンドからサビでの多幸感でストーリーを作りあげたChill Kill、どれをとっても挑戦とは切り離せない作品ばかりです。この挑戦はRedVelvetという相反するコンセプトをベースに生まれたグループの宿命なのかもしれません。

特に前作のChill Killは前例にない不思議な曲でした。RedVelvetというコンセプトを体現するような相反するものをひとつの曲に取り込みながら、音楽的ルールは壊さない。初めて聴いた時に感じた急に時空をワープさせられたような、どこにいるのか分からなくなる感覚を今でも覚えています。

そして今作、Cosmicは一見(正しくは一聴?)そういった挑戦がないように聞こえる曲です。非常にスムーズでノリのいいミドルテンポ、サビも聞いていて楽しいナンバーです。
ですがこの曲はChill Killの表現をより洗練させてサマーナンバーに落とし込んでいるように感じます。

最初のパンチーなキックとわざと響きを潰したようなギターサウンド、サックスとシンセではありますがRBBのSassy Meを思い出しました。

非常に出だしが印象的な曲です。タイトルのSassy、生意気な雰囲気をオシャレに表してます。cosmicはよりBoom Boom Bassのようなグルーヴ感に繋げながらも、よりベースとキックの強烈さが目立ちます。とても爽やかな恋を思わせる始まりではありません。
囁くようなボーカルからBメロへ、伸びのあるウェンディのボーカルから一気に広がりをみせそのままcosmicを体現する解放感のあるサビへ。ここまで非常に自然な展開です。冒頭の怪しく忍び寄るような不穏さはどこにもなく、ギャップがあることにも気付かされません。
サビはまさに宇宙を駆け巡るような広々としたリバーブと壮大さを語るストリングスが彩る仕上がりになっています。ファンとしては非常に大きな愛を感じざるを得ません。1番でかいものは宇宙なので。
不気味でクールな要素がありながら、明快でストレートなサビ、Chill Killと無関係とはなかなか言えないような構成でありながら、非常に自然な大衆受けもしそうな仕上がりです。
実はこれってめちゃくちゃ功績なのでは…と思ってます。自身のやりたいコンセプトを貫きながらもみんなに聞いてもらえるものを作る、アーティストが抱えるジレンマを蔑ろにせず、じっくりと向き合ってきたからこそ出来ることです。10年も活動するグループがまだ音楽と真剣に向き合ってくれるというのはファンとしては本当に嬉しく誇らしいことです。RedVelvetとして与えられた役割に彼女たちが向きたい、これ以上ない正解を与えた素晴らしいカムバックでした。

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