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「D2Cとは〇〇である」をまとめてみた。~D2Cの定義とは?~

こんにちは。チョーズン・ワン(以下、TCO)ミカミ・リョーです。ちなみに社名をTCOと略すのは、英語表記のThe Chosen One.incからです。よくTOC(注1)と間違われますが(笑)TCOです。この機会におぼえていただければ。

注1:TOCは、東京都品川区西五反田にある「東京卸売りセンター」の略。現在は株式会社テーオーシーが運営。

私たちTCOは、D2C事業の構築を支援する会社です。が、そもそもD2Cって何でしょうか?

そうですね、「Direct to Consumer」の略ですよね。意味としては、「製品の製造元やサービスの提供元が、インターネットを通じて顧客に直接、商品を販売すること」という説明が一般的です。でも、ネットでD2Cを調べると、一般的な意味をふまえつつも、いろんな「定義」もしくは「解釈」が存在しているんです。

そこで、今回はストレートに「D2Cとは何か?」を取り上げます。さまざまな人によるD2Cに関する発言を分類・整理しながら、D2Cについて考えてみます。

ミカミ流 D2C学派の分類

私なりに、さまざまなメディアで語られたD2Cを調べてみたところ、ある種の傾向が見えてきました。「おおよそ4タイプに分類できるのではないか?」と考えまして、それぞれ名前を付けて「〇〇」学派としています。

(1)「熱い想い」学派

(2)「テクノロジー」学派

(3)「フレームワーク」学派

(4)「オフラインも大切」学派

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一般的なD2Cの定義を中心に置きつつ、縦軸は「オンライン」と「オフライン」、横軸は「機能的」と「情緒的」として、4つの学派を配置してみました。

では、ミカミ・リョーが分類した4つの学派について、メディアにおける発言を引用しながら見ていきましょう。


(1)「熱い想い」学派

まずは、創業者の想い、メーカーとしての矜持を感じさせるグループです。

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代表的な意見を二つ、引用します。

D2Cとはつまり、「マインド」なのかなと/いわゆる顧客とマーケットの関わり方に対する1つのプロテスト

クラシコム 代表取締役 青木耕平氏
出典:https://netshop.impress.co.jp/node/8125

D2Cの手法を選んだのは「ZENBは当社の在り方やこれから目指す方針を象徴する存在。その想いを限られた人にでもきちんと伝えたかったためです。最初からD2Cブランドをつくろうとしたわけではなく、結果的にそうなった

ミツカンホールディングス 新規事業開発マーケティンググループ 長岡雅彦氏
出典:https://www.advertimes.com/20210401/article344946/amp/

顧客に届けたいのは商品だけでなく、プロダクトに込めたメッセージであったり、企業姿勢であったり、そういった「熱い想い」を感じます。D2Cに関する書籍でも「想い」は頻出ワード。D2Cと言われて「そうそう、この感じ」と共感する方も多いのではないでしょうか?

(2)「テクノロジー」学派

一般的な意味でも「インターネットを通じて」とある通り、D2Cを語るときに、デジタルやテクノロジーの要素ははずせません。

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本来の意味からもベーシックな要素ですが、ここではとくに重要視する意見として整理しました。オンラインはD2Cの必要条件という考え方です。

D2C/DNVBブランドに対するアジャストは、簡単にいうと「商品の作り方、見せ方、売り方をデジタル化していく」に尽きます。そこで、まず私たちはECの概念そのものを刷新して、「テクノロジーを使った新しいブランド体験・購買体験」と定義し直しました。

電通デジタル デジタルコマース事業部長 三橋良平氏
出典:https://www.d-sol.jp/webinar_report/d2c-new-standard

D2Cはメーカー業であるとともに、メディア業でもあり、テック業でもあるのが特徴です。いかにデジタルを駆使して顧客とコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めていくかが重要で、単なる“中抜きのメーカー業”ではない。

D2Cは、「デジタルでお客さまと直接つながって、意見を聞いて、求める以上のものを作る」というのが根本的な考え方


Takram ディレクター兼ビジネスデザイナー 佐々木康裕氏
出典:https://www.wwdjapan.com/articles/1026710

(D2Cブランドと通販ブランドの一番の大きな違いは、)D2Cはブランドサイトの立ち上げから顧客への情報発信、広告、マーケティング、購入まで全てがデジタルで完結している点だと思います。立ち上がったブランドに関しては、O2O(Online to Offline)のようにリアル店舗への送客も見られますが、あくまでD2Cというトレンドが発生した本質は、これまで消費者はテレビCMや新聞、雑誌などで情報を得ていたのが、スマホの登場以降、SNSやウェブなど全てデジタルで情報を収集するようになり、それが一般化してきたことで、デジタルだけで完結するようになったところにあります。

バルクオム 代表 野口拓也氏
出典:https://www.wwdjapan.com/articles/990114

デジタルのデジタルによるデジタルのためのデジタル。ぐらいデジタルは、やはり重要な要素ですね。オンラインによるテクノロジーがメーカーと顧客の接点を変え、ブランドのあり方を変える。「テックは単なる手段ではない」という姿勢がうかがえます。

(3)「フレームワーク」学派

広告代理店やコンサルの発言でよく目にするのは、D2Cをフレームワークとしてとらえ直す考え方です。

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私は、「熱い想い」学派と「テクノロジー」学派の2つをベーシックとして、「フレームワーク」学派は、そこから派生したものと考えています。

成功しているD2Cブランドには、「強いブランドストーリー」、「ビルトインされたマーケティングモデル」、そして「デジタルとフィジカルの高次元での融合」という3つの特徴が見られる。

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン 鷹野 翔平氏
出典:https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/83725/

D2Cブランドの最大の特徴は「ブランドのファン育成を重視する」という点です。ファンにSNSで拡散してもらって、さらにファンの輪を広げていくこともビジネスモデルの中に組み込まれています。

博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 部長 荒井友久氏
出典:https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/82863/

D2Cとは、デジタル化によって変化した消費行動に最適なマーケティングフレームワークの1つ。

SUPER STUDIO COO 花岡宏明氏
出典:https://note.com/hiroaki_hanaoka/n/nd01a18edc478

D2Cというビジネスモデルに「ストーリー」が肉付けされたようなイメージでしょうか。私も広告業界にいるので、フレームワーク的思考でとらえるタイプです。だから、ここに引用した発言も「どういうことを語っているか」は、わかります。フレームワークとして分類しましたが、言い換えるなら「概念」みたいなものかもしれません。

(4)「オフラインも大切」学派

「フレームワーク」学派による「ストーリー」の肉付けがさらに進むと、D2Cビジネスの範囲が広がっていきます。

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D2Cは「インターネットを通じて」とオンラインを前提にしてきましたが、やがてオフライン(=実店舗)という「ストーリー」が加わってきました。実際、D2Cブランドの商品がドラッグストアに並んだり、リアル店舗を出したり、さらなる派生は進んでいます。

これまでの商品は、大量生産・大量消費のなかで、最大公約数的なサイズや商品展開の中から欲しいものを選ばなければいけないなど、どうしてもお客様が我慢せざるを得ないところがありました。しかし、D2Cであれば、パーソナライズされた製品にしたり、サービスそのものをお客様と一緒に改善できたりする。『自分らしい、豊かな生活ができる』と感じ、お客様にもっと期待を寄せてもらう上で、D2Cは大きな鍵になると思っているんです。

株式会社丸井 代表取締役社長 青野真博氏
出典:https://exp-d.com/event/6948/

D2Cビジネスの本質は、ブランドの熱狂的なファンを増やしていくことにあると思います。しかし、オンライン体験だけで顧客に熱狂的なファンになってもらうことは難しい。フィジカルな空間でブランドの世界観を体験したり、商品にじかに触れたり、スタッフと対面でコミュニケーションを取ったりする中で、ブランドへの理解や愛着を深めてもらうことが大切です。そのような体験を提供する場として、実店舗が必要になるわけです。 

株式会社エクスペリエンスD 代表取締役 坂田照雄氏
出典:https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/88818/

ここは議論のわかれるところですね。D2Cのブランド体験を広げていった先が実店舗という考え方もわかります。一方で、非D2Cブランドとオフラインで横並びになっていくことがゴールのようにとらえてしまうと、ちょっとモヤモヤしますよね。ただ、顧客にとって、実はオンラインもオフラインも変わりません。最適解は、D2Cブランドの戦略によるのかもしれませんが、私はD2Cの定義からは、少しはみ出していると感じる部分もあります。

ミカミ的まとめ

みなさん、いかがだったでしょうか? 「定義」や「解釈」って人それぞれですよね。ポジションある人の定義がスタンダードではないので、みなさんにとっての"D2Cとは何か?"を考えてみてください。その定義や解釈に論理的な根拠があり、わかりやすければ、もしかして業界のスタンダードになるかもしれません。

そもそも、D2Cって言葉って誰がいつどこで作ったのでしょうか。すみません、これは調べてもわかりませんでした。どなたかご存じの方いたら教えてください!

参考までに、海外の有名D2Cブランドの設立年を見てみましょう。

Warby Parker(アイウェアブランド)⇒2010年設立
Allbirds(シューズブランド)⇒2014年設立
Indochino(オーダースーツブランド)⇒2007年設立

これらのブランドが立ち上がった2007年から2014年の間、D2Cなんて言葉は存在してなかったですよね(少なくとも私はそう記憶してます)。とすると、以下のような流れでD2Cという言葉が広まってきたのではないでしょうか。

①海外(特に米国)ブランドで目立ったところが出てくる
②それを米国の誰かが「D2C」って言葉でくくる
③日本の誰かがその「D2C」って言葉を輸入する
④日本のメーカーのキーマンがD2Cに興味を持つ

そして④までの流れを受けて、まさに今回取り上げたように……

⑤それぞれがD2Cの定義を語りだす

といった感じではないでしょうか。あくまでも私の推測ですが。

ミカミにとっての「D2C」とは?

さんざん人の言葉を見てきましたが、最後に、私 ミカミ・リョーが、現時点でD2Cをどうとらえているか整理します。「製品の製造元やサービスの提供元が、インターネットを通じて顧客に直接、商品を販売すること」という一般的な意味合いを前提としつつ、私にとってのD2Cとは……

「新たな営業手法」です。

・メーカーにとって:顧客視点の新たな価値提案⇒顧客へのアピール
・広告代理店にとって:フレームワーク⇒メーカーへの提案
・D2C支援会社にとって:新しい言葉・視点⇒メーカーへの提案

D2Cは、あらゆる立場が、それぞれのターゲット向けに活用する「営業手法」となっている「構造」ではないか。という見立てです。

私が分類した〇〇学派は、メーカー、広告代理店、D2C支援会社が、それぞれの立場や視点から整理されたものだと考えています(もちろん重複はありますが)。それらを俯瞰すると「営業手法」という大きなくくりが見えてきました。いかがでしょうか。

締めくくりに

これまでも、ビジネスシーンには、いろいろな言葉が出てきました。いわゆるバズワードです。それっぽく聞こえてくるけども、実は定義が曖昧だったり、なんとなくの理解だけでつかわれていたり。DXやビッグデータも、バズワードの例としてよくあがりますね。

私もうっかり曖昧なままつかってた言葉もありました。でも、なんらかの言葉にすると語りやすくなるのは事実。で、その言葉が独り歩きしだすと、いろんな定義や解釈が生まれてくる。今回の記事でまとめたように、私たちTCOの事業領域である「D2C」は、まさそうですね。

先ほど、「みなさんにとっての"D2Cとは何か?"を考えてみてください」と書きましたが、辞書的な意味や背景をふまえたうえで考えていくことが大事ですよ。

たとえば、広まってはいるけれども、定義にしっくりきていない言葉があれば、本来の意味を元に思考を巡らせて、どういうことか整理して、自分なりのとらえ方を作りあげる。それができたら、陰で評論するのではなく、どんどん周りに語っていきましょう。

そのとらえ方が業界のスタンダードになるかもしれませんよね。それを「自分が創った!」「広めた!」となれば、強い自信にもつながりますよ!

自らをスタンダードに! ではまた!

ミカミ・リョー@D2Cを研究中

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