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ECはアプリ化したほういいのか? ~ECアプリの成功事例から考える~

こんにちは、TCOのミカミ・リョーです。最近、EC界隈の情報をチェックしていて、「ECのアプリ化ってどうなの?」と思うことがあります。たとえば、Amazonです。私は、アプリでサクッと買い物をしちゃうわけです。以前レポートしたワービーパーカーも、日本では使えませんでしたがアプリを提供していました。ECサイトのアプリ化というのは、D2Cブランドにとっても気になるトピックではないでしょうか。

果たして、D2Cブランドを含むECサイトは、アプリ化を目指すべきなのか? 今回は、このテーマで考えながら、書いてみたいと思います。

「北欧、暮らしの道具店」は、なぜアプリ提供で売上が伸びたか?

去年(2021年)暮れに、こんなリリースが出ました。

「北欧、暮らしの道具店」。ECの成功事例として、アプリだけでなく、コンテンツマーケティングの文脈でもよく取り上げられますね。

にしても、このリリースの数字すごいですね。アプリ提供開始から1年半で150万ダウンロード、EC売上の6割がアプリ経由だそうです。リリースでは、アプリ成功の要因を「導線のシームレス設計、YouTube動画活用、ウィジェット活用の3点だと分析」とあります。詳細説明は、リリースを見てもらうとして、ミカミ的に気になったのは「この仕組みを機能させたのが何か?」という点です。

それは支持するファンが多いからでしょうね。しかし、ファン化みたいなことはすごく難しい。そのためにCRMに取り組んでいるD2Cブランドもきっと多いはず。「北欧、暮らしの道具店」は、ファンが多いことでも知られていますが、他との違いはどこにあるのでしょうか。こんな記事もありました。

この記事でミカミが注目したのは、「北欧、暮らし道具店」代表・青木耕平氏の次の発言です。

僕らにとっては売れること以上に、「うちに来たら楽しいな」あるいは、「うちの仲間になりたいな」と思ってもらうことが最重要なので、売れるということは、それ以下のことなんですよ。売れるけどおもしろさに反する、快適さに反することはやらないというところはありますね。

https://logmi.jp/business/articles/144896

さっきファンと書きましたが、青木氏の言葉を借りるなら「仲間」なんですね。仲間が集まる場所が「北欧、暮らしの道具店」であって、その仲間が楽しめる仕組みの先にアプリがある。つまり仲間の「楽しい」「おもしろい」を通過した先にアプリが買い物しやすい場を提供していて、売上につながっている。そんな風に考えられますね。

それは長い時間をかけて「北欧、暮らしの道具店」が積み上げていった結果とも言えますが、アプリ化を考える際に大きなヒントになると思います。

アプリ化が結果につながる条件とは?

「北欧、暮らしの道具店」のアプリ成功の背景に多くの「仲間」を集めてきたことがあるとミカミは考えました。だとしたら、ECサイトのアプリ化に向けて、どれぐらいのユーザー数(支持するファン)がいれば成功の可能性は開けるのでしょうか。

そもそもアプリって、まずダウンロードというハードルがありますよね。多くの企業が自社アプリをダウンロードしてもらうために、広告やキャンペーンを展開しています。これがなかなか難しい。広告業界にいる私もその苦労はよくわかります。どうしたらアプリダウンロードのハードルが下がるんでしょうか。まずはユーザー数から考えてみましょう。

ECアプリの成功事例というと、Amazon、楽天、ZOZOTOWN、ユニクロ、ニトリあたりをよく目にします。どこも大企業ですね。その中でミカミ的に興味を持ったのは、ZOZOTOWNです。それはユーザー数と時代的背景が関係しているように思えたからです。

ZOZOTOWNアプリが出たのは、同社沿革によれば2010年11月です。なんと
12年も前なんですね。2010年3月期 第2四半期決算説明会資料によれば、この時期のアクティブユーザー数(過去 1 年以内に 1 回以上購入した会員)は、545,284人でした。ソースは以下のリンクを参照。

https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/wp-content/uploads/2017/02/ir20091029ja01.pdf

2010年というと、iPhone3GSが登場したタイミングでもあるんです。だからスマホで「アプリを使う」環境も整ってきたのも大きく影響したかもしれませんね。2010年当時、アクティブユーザーが50万人を超えてさらなるユーザー数増への期待が高まっていた点は、ZOZOとしてもアプリ化の判断材料になったかもしれません。新しいことに挑戦しようという企業姿勢もあったと思いますが。ちなみに、2021年7-9月期のZOZOTOWNアクティブ会員数は850万7997人だそうです。今さらですが、10年ですごい成長ですね。

次に挙げる例は、最近のケースです。「SHEIN」をご存じですか。中華系のファストファッションとして話題です。欧米での展開で火が付いたようですが、世界中でZ世代に絶大な支持を得ています。『東京ガールズコレクション 2022 SPRING/SUMMER』への参加もニュースになっていました。そんなSHEINは、昨年アプリのダウンロードがAmazonを抜いたと話題になりました。

その人気の背景のひとつには、「SNS上での圧倒的なデジタルマーケティング」があると、以下の記事では解説しています。

2019年では、年間Instagramで3240回、Facebookで2456回、Twitterでは1936回投稿。Instagram上の公式サイトのフォロワー数は、2021年8月現在2142万フォロワーまで成長した。また、TikTokでは、2020年最も話題となったファッションブランドとして認知されている

https://toyokeizai.net/articles/-/452310

なるほど。SHEINのユーザーはSNS上で集められたわけですね。その数とアプリダウンロードとの相関を直接結び付けるのは難しいかもしれませんが、SNSでZ世代ユーザーの生活に入り込んだ段階で、アプリダウンロードのハードルはかなり下がったと推測できます。

アプリ化を検討する前にやるべきこととは?

ZOZOTOWNは、12年前にアクティブユーザーが50万人を超えたタイミングでアプリ化に踏み切った。SHEINはSNSで話題となり、Instagramで2000万以上のフォロワーを獲得して、Amazonを抜くショッピングアプリになった。この2つの事例からもアプリ化成功のカギは、ある程度ユーザーの分母が必要なことはうかがえます。

しかし、ユーザー数を増やす以上に大事なのは、「北欧、暮らしの道具店」がそうであるように、「アプリがユーザーの日常に寄りそえる環境をつくれるか?」かもしれません。SHEINは、SNSを介してZ世代の日常に食い込みました。ZOZOTOWNも、その後WEARでのコーディネート提案やコスメ展開など、生活の中でのタッチポイントを増やしてきました。そうなったとき、スマートフォンからダイレクトにつながるアプリは欠かせなくなります。ミカミがAmazonですぐポチってしまうのも同じです。

ECサイトのアプリ化を推奨する記事もネットではよく目にします。アプリ化で売上増みたいな。しかし、アプリ化は手段であって目的ではありません。支持してくれるユーザーがどれぐらいいるか。そしてそのユーザーの日常にどうしたら寄り添えるか。そこをセットで考えたとき、D2CブランドやECサイトがアプリ化を検討するタイミングが見えてくるかもしれません。

ミカミ的まとめ

「ECのアプリ化ってどうなの?」を考えてきたわけですが、その前にやることがあるような気がしてきました。「北欧、暮らしの道具店」が仲間を集めたように、D2Cブランドは、自分たちを支持してくれるユーザーとの関係をどう築いていくかが大事ですね。それは単純にCRMというより、もっと「エモい何か」かも。ミカミも、もうちょっと考えてみます。最後に、その糸口になりそうな「北欧、暮らしの道具店」代表・青木氏のコメントを引用しますね。ではまた。

なによりも重要なのは、ある世界観に来ていただいた方に快適に過ごしていただくこと。買っていただいたらうれしいですし、我々は最近広告のビジネスもやっていますから来ていただくだけでマネタイズができるので、アクセスしている時間がその人にとって期待値を超える快適な時間になる、ということを最優先していることですね。

https://logmi.jp/business/articles/144896

ミカミ・リョー@ECアプリ論、引き続き考察中


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