とにかく大好きな小説の書き出し4選。

こんにちは、Kです。


今回は、小説の書き出しについてのお話です。

書き出しは小説の顔。
第一印象みたいなものだと思ってます。

もちろんどの書き出しも素敵なんですが。

中にもすごくいい書き出しがいくつかありまして。

今回はその好きな書き出しを紹介したいなーと。
気になったらぜひお手に取っていただきたいです。

ではさっそく。

第一作目はこちら。

又吉直樹さんの『劇場』です。

この小説の書き出しがこちら。

〈まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはない。もう少しで見えそうだと思ったりもするけど、眼を閉じた状態で見えているのは、まぶたの裏側の皮膚にすぎない。あきらめて、まぶたをあげると、あたりまえのことだけれど風景が見える。〉


のっけからこんなに綺麗な描写があります。

このあとの物語にまぶたの話は出てきません。
まったく出てきません。

ただ、少し又吉さんの感性に触れられた気がしませんか?

そして。
私がこの小説を紹介したのには理由があります。

実はこれ、書き出しより最後の台詞がいいんです。

主人公が舞台の台詞のように、本心を彼女に曝け出すシーン。

ただ、さすがに最後の部分は書けないので。
どうか読んでほしいです。

さて、続いてはこちらの小説。


ロザン菅広文さんの『京大中年』です。

あ、別に好きな芸能人紹介じゃないですよ?
あくまで書き出しが好きな小説ですよ?

たまたまです、ほんとに。

では、『京大中年』の書き出しがこちらです。

〈教科書がある宇治原さん。
 いつでも100点を取ることができた。
 知識という大空をどこまでも高く自由に飛び回ることができた。
 まるで鷹のように。
 教科書がない宇治原さん。
 0点だった。
 飛ばなかった。
 どこにも飛ばなかった。
 ウロウロと歩いていた。
 まるで公園にいる鳩のように。
 教科書がある宇治原さんに戻さなければ。
 京大芸人になるために。〉


ここまでリズムのいい文章、なかなかありません。
ここまで読みやすい文章も、なかなかありません。

実は。
私のnoteの書き方も菅さんを参考にしてます。

いかに一文を短くするか?
いかに読みやすくするか?

などなど。

書き出しからここまで気持ちよく宇治原さんをイジってくれるなんて。

もっと出し惜しんでもいいくらいなのに。

ここまで全力でイジってくれるなんて。

安心して続きを読めます。

「今後、宇治原さんイジリが甘くならないかな?」

そんな不安はいりません。

そしてこちらも、『劇場』と同じ。
最終章が面白いんです。

先ほど書き起こしたのは〈はじめに〉の部分。

読んでほしいのは〈最終章〉〈おわりに〉の部分。

これは、
「ロザンのためのロザンの教科書」
というコンセプトで書かれています。

若い頃の宇治原さんへ。
今の宇治原さんへ。
若い頃の菅さん本人へ。
何なら宇治原さんのご両親へ。

いろんな人への手紙で構成されています。

忙しい方も、スラスラ読めてしまう本です。
ぜひ『京大芸人』『京大少年』と合わせてどうぞ。

次はこちらの本になります。


岩井俊二さんの『ラストレター』です。

ね?
好きな芸能人紹介じゃなかったでしょ?

では、この書き出しがこちらです。


〈未咲へ

 これは君の死から始まる物語だ。
 君が本当に愛していただろう、そしてきっと君を愛していただろう、
 そんな君の周りの愛すべき人々の、ひと夏の物語でもある。
 そして、同じそのひと夏の、僕自身の物語でもある。
 天国に旅立ってしまった君に宛てた、
 僕からの最後のラヴレターだと思って読んでもらえたら幸いである。〉


どうですか?

もう内容が気になりませんか??

たまにありますよね。
最初からヒロインが死んでるパターン。

そして、「僕」はヒロインが好きだったらしい。

なのに、そのヒロインはもういない。

どういう話なんだろう?
と、どんどん気になりませんか?

ただ、このお話途中が中々胸糞展開です。

モヤモヤしたくない方。
胸糞悪くなりたくない方。
やめておいた方がいいかもしれません。

ぜひ、他の本を読んでいただいて。

では、最後はこちらの本になります。

又吉直樹さんのエッセイ集、『月と散文』です。

小説ちゃうやん!!!
また又吉さんやん!!!

ええ。
わかってます。
わかってるんです。

でも、ちょっと心を広く持って。

Kのnoteはぜひ、寛大な心で読んでくださいね。
※もう調子乗らないので、もう少し読んでください。

話を戻しますね。
この書き出しがこちらです。

〈子供の頃、作文を書いたら親が笑ってくれた。気の利いたことを書いたからではない。文章の至るところに、「はずかしかったです」という言葉が並んでいたからだ。〉


頭から、こんなに又吉さんの人間性がわかります。

普通、子供の作文に並ぶ言葉って、

「うれしかったです」
「たのしかったです」
「すごかったです」
「がんばりました」

が、相場ですよね。

私、未だに作文に
「はずかしかったです」
なんて書いたことないです。

「恥ずかしがり屋」
というより、
「申し訳ない意識の強い人」
という感じでしょうか。

でも、ここまでわかりやすい文章で、ここまで人物像をわかりやすくしてくれるなんて。

と、私はちょっと感動してしまいました。


さて。
いかがでしたか?

今回はこの4つにしておきますね。

ちなみにですが。
次回は映画『帰ってきたあぶない刑事』について。
長々と愛を語っていこうと思います。

どうか次回も読んでくださると嬉しいです。

では、ありがとうございました。

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