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クロスカントリー日本選手権展望⑥ 前日会見女子

田中と萩谷が会見でクロスカントリーの特徴に言及
レースは集団で進むことが予想されるが、
萩谷が思い切って前に出る可能性も

 日本選手権クロスカントリーは2月27日、福岡市の海の中道海浜公園で4部門が行われる。前日会見にシニア女子部門からは田中希実(豊田自動織機TC・21)萩谷楓(エディオン・20)が出席した。田中の昨シーズンは1500mと3000mの日本新、1500mと5000mの日本選手権優勝、そして東京五輪5000m代表内定と歴史的な快進撃を見せた。一方の萩谷も5000mで日本選手権3位、記録も15分05秒78で東京五輪標準記録を上回った(適用期間外のため突破扱いにはならない)。
 五輪内定選手と五輪候補選手が、トラックとは勝手が違うクロスカントリーに、どう挑もうとしているのだろうか。前日会見時の2人のコメントを整理して紹介し、2人のコメントや実績から、レース展開も予想してみた。

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●2人が前回出場時に感じたことは?

 クロスカントリーが他の長距離種目と違うのは、芝生、土、砂、アスファルトと複数の路面があること。そして小規模の起伏が頻繁に現れることだ。

田中 今日の雨で地面がぬかるんでいると思うのですが、そういう状況で走るのは初めてになります。蓋を開けてみないとどう走れるかわかりませんが、そこも含めて楽しみたい。
萩谷 クロスカントリーのイメージはやはり、起伏が多くあることです。速さだけでなく、強さも求められる種目です。

 田中は2年前の今大会に優勝している。萩谷は昨年3位だった。田中は2位の山ノ内みなみ(京セラ・28)と1秒差、萩谷は優勝した石澤ゆかり(エディオン・32)と2秒差、2位の和田有菜(名城大3年)と1秒差という接戦だった。前回出場時に2人が印象に残っているクロスカントリーらしさは、どんな点だったのだろう?

田中 2年前は自信が持てず、ペースは、レースの流れに身を任せていました。無我夢中だったこともあり、ペース変動についてはあまり意識できていなかったと思います。ラスト1周で山ノ内さん、高松(智美ムセンビ・名城大3年)さんと3人になったとき、後半の砂地に入っていく前の細かいアップダウンがきつかった覚えがあります。
萩谷 去年は最後まで先頭争いをする位置で走ることができました。自分は上りが得意なので、4周目のコブが続くところの上りで仕掛けたら勝てるな、と思って仕掛けたのですが、意外とその後のサンドセクションで脚がキツくなってしまって、最後で2人に抜かれてしまいました。

 2人の前回出場時のコメントからも、クロスカントリーが簡単に攻略できる大会ではないことがわかる。

●有力選手でも積極的に行けないクロスカントリー

 田中はクロスカントリーに、レース展開の難しさを感じている。トラックではペースを自在に操る選手だが、クロスカントリーはトラックほど経験もないし、大会によってコースがまったく違う。
「力を消耗しないことが重要だと感じています。そこが上手くできないと、力を持っていても走れないんじゃないか、と。選手の力とそのときの状態が大きいのですが、クロスカントリー各大会のコースに対して、レースそのものに対して、そのときどきの状況に合わせて向き合うことが大事なんだと思います」
 自分の調子が良いからと、トラックのようなフラットのコースをイメージして飛ばしたら、その後に起伏などがあれば走りきることができなくなってしまう。そのコースに対して豊富な経験があれば別かもしれないが、普通の状況なら思い切った飛び出しはできない。
 他の選手たちも、トラックの実績で出場選手中ナンバーワンの田中の前を走ることは、なかなかできないだろう。レースは田中を中心に、ある程度の人数の集団で進むことが予想される。

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●高校ではクロスカントリーの練習が多かった萩谷

 萩谷もクロスカントリーの難しさを昨年の3位のときに感じたが、その一方で別の思いも持っている。昨年のトラックで田中に負け続けた経験から、思い切ったスパートを仕掛けることも考えているのだ。
 昨年7~8月に萩谷は、3000m、5000m、1500mと自己新を連発した。その全てのレースで田中の後ろを走ったが、最後まで前に出ることができず勝負には敗れている。田中は先頭を引っ張っても、最後に(あるいは中盤に)切り換えてペースを上げられる選手なのだ。普通に勝負をしようとしても勝てないことは、経験上わかっている。
 昨年の今大会で敗れたが、この1年間の実績を見たら萩谷は大きく成長している。本人も上りが得意とコメントしたが、母校の長野東高はクロスカントリーの練習を積極的に行っていた。
 長野東高は萩谷が3年時に全国高校駅伝で2位になるなど、駅伝の強豪校で、和田や萩谷、細田あい(ダイハツ・25)など卒業生が活躍している。長野東高を長年指導した玉城良二現日体大監督は、「練習のほとんどが河川敷のクロカンコースで行っていた」と話している。
 萩谷は会見で、レース展開について次のようにもコメントした。
「今回は周りの人のレース展開を考えるより、自分自身にチャレンジしていきたい。いつも田中さんの後ろを走って、最後も離される展開が多いので、途中で前に出られることができれば、今後につながると思っています」
 萩谷が自身の殻を破るために、思い切ったスパートをするかもしれない。
 会見では慎重なコメントが多かった田中も、展望記事③で紹介したように、以前の取材では「スタート後に様子を見ながらになりますが、こうしたい、という何かが出てきたら実行に移したい」と話していた。田中のこの1年間の充実を考えれば、例年と同じペースが遅いと感じる可能性は想像できる。
 クロスカントリー攻略の難しさを2人の成長が上回れば、今年の日本選手権クロスカントリーは例年以上の激しいレースになる。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

今日午後3時30分 TBS系列
『クロスカントリー日本選手権』


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