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クロスカントリー日本選手権 展望② 男子プレビュー

トラック、マラソン、ハーフ、学生駅伝で活躍した選手たちが集結
優勝候補筆頭は10000m日本歴代3位の田村和希

日本選手権クロスカントリーは2月27日、福岡市の海の中道海浜公園で以下の4部門が行われる。
U20女子・6km
U20男子・8km
シニア女子・8km
シニア男子・10km

 シニア男子では一昨年、昨年と2年連続2位の田村和希(住友電工・25)が本命視されている。10000mで東京五輪参加標準記録に迫っているトラックのトップランナーだ。対抗するのは全日本実業団ハーフマラソン4位(日本人2位)の古賀淳紫(安川電機・24)、ニューイヤー駅伝1区区間賞の松枝博輝(富士通・27)、同駅伝5区区間2位で3000m障害有力選手の青木涼真(Honda・23)ら。マラソン東京五輪代表候補(従来の補欠選手)の大塚祥平(九電工・26)、全日本大学駅伝2区区間賞の川瀬翔矢(皇學館大4年)らも注目される。さまざまなカテゴリーの選手が出場してくるのが特徴の大会だ。

●東京五輪をトラックで狙う田村和&松枝

 エントリー選手中、東京五輪に最も近いのが田村和希だろう。12月の日本選手権10000mで3位に入り、27分28秒92の日本歴代3位をマークした。五輪標準記録に0秒92まで迫った。クロスカントリーなのでコースに起伏が設けられているが、10km(10000m)は田村が得意とする距離だ。
 今大会でも一昨年、昨年と連続2位で、クロスカントリーも苦手ではない。出場目的を「練習の一環」と渡辺康幸監督は説明するが、それはどの選手も同じだろう。ピークを合わせない選手たちが、“地力”の部分で勝負する。それを考えたとき、やはり田村が優勝候補筆頭になる。
 同じように5000mで東京五輪代表を目指しているのが松枝博輝で、12月の日本選手権は2位に入った。10km以上の距離が課題だったが、元旦のニューイヤー駅伝は1区(12.3km)区間賞を獲得。2月14日の全日本実業団ハーフマラソン(21.0975km)でも1時間01分29秒(13位)と自己記録を大きく更新した。
 どの選手もピークを合わせないと書いたが、その中でも松枝は「クロスカントリーで優勝を狙っている」と、勝負にこだわりを見せている。ラスト勝負に持ち込めば、松枝の勝機が大きくなる。
 19年の日本選手権では田村が10000mで、松枝が5000mで優勝した。勝負強さの点でいっても、優勝候補の双璧である。

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●得意種目の異なる大塚、古賀、田村友

 その2人に続くグループとして古賀淳紫、田村友佑(黒崎播磨・22)、大塚祥平と、九州の実業団チームに所属する3人の名前が挙げられる。
 古賀は2週間前の全日本実業団ハーフマラソンで4位(日本人2位)と、直近の大会で結果を残している。1年前の同大会でも2位(日本人トップ)と2年連続の好走だった。安川電機の山頭直樹は、この1年間練習でも先頭を走り、全日本実業団ハーフマラソンも狙って上位に入った古賀の成長を認めている。クロスカントリーでも優勝争いが期待できそうだ。
 田村友は今大会で19、20年と2年連続3位。トラックと駅伝では兄の和希との差はまだ大きいが、クロスカントリーでは2年とも兄に続く順位でフィニッシュした。
 マラソン東京五輪代表候補の大塚は、12月の福岡国際マラソンで2時間07分38秒で2位。持久型の選手と思われていたが、スピードにも進境を示した。駒大時代に箱根駅伝山登りの5区区間賞と上りにも強い。
 ハーフマラソンの古賀、クロスカントリーの田村友、マラソンの大塚と、得意種目が異なる3人。トラックで代表を狙う田村和と松枝の2人に、どんな走りで対抗するか楽しみな存在だ。

古賀

●三浦ら3000m障害勢も優勝候補

 3000m障害も五輪標準記録が8分22秒00で、複数の選手に可能性がある。今大会にも代表入りを目指している選手たちがエントリーした。
 タイム的には三浦龍司(順大1年)が、昨年7月のホクレンDistance Challenge千歳大会で8分19秒37の日本歴代2位を出し、長距離関係者を驚愕させた。適用期間外なので突破した扱いにはならないが、すでに五輪標準記録を上回っている。
 三浦は10月の箱根駅伝予選会(21.0975km)日本人1位、11月の全日本大学駅伝1区(9.5km)区間賞と、長い距離にも対応できる。特に全日本大学駅伝で見せたラストスパートは強烈で、田村&松枝に対抗できる勝負強さがあるかもしれない。
 三浦と同じホクレン千歳大会で8分25秒85で走った青木涼真も、標準記録に挑める位置にいる。ニューイヤー駅伝では5区(15.8km)区間2位、区間賞の服部勇馬(トヨタ自動車・27。東京五輪マラソン代表)に1秒差と迫った。10kmの距離にもしっかり対応できる。
 そして3000m障害で存在感が大きくなっているのが滋野聖也(プレス工業・24)だ。19年、20年と日本選手権連続4位、昨年は8分31秒88を出している。5000mでも昨年13分36秒94と、自己記録を30秒以上伸ばしている。10000mは昨年28分39秒77とタイム自体はそれほどでもないが、やはり自己記録を1分近く更新した。クロスカントリーでどんな走りをするか、注目されている。
 リオ五輪3000m障害代表だった塩尻和也(富士通・24)は、全日本実業団ハーフマラソンで144位。15km手前までは松枝と同じ第2集団で走っていたが、腹痛に見舞われて大きくペースダウンした。距離が10kmと短くなる今大会をしっかり走り、4月以降の3000m障害につなげたい。

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●学生の川瀬も優勝候補。箱根駅伝区間賞選手たちもエントリー

 学生では川瀬翔矢が優勝を目標にしている。皇學館大(三重県)は東海学連のため箱根駅伝には出場できないが、11月の全日本大学駅伝2区(11.1km)区間賞、12月の日本選手権5000m4位と、関東勢に劣らない成績を残してきた。
 箱根駅伝2区で日本人トップだった池田耀平(日体大4年)も出場する。日本選手権10000mで27分58秒52と、昨年の日本人学生4番目のタイムで走っている。川瀬と池田、3000m障害の三浦が学生トップ候補で、優勝も狙える力がある。
 箱根駅伝1区区間2位の塩澤稀夕(東海大4年)、前回の箱根駅伝2区区間5位の岸本大紀(青学大2年)も学生トップレベルの選手で、上記3人の争いに加わるかもしれない。
 箱根駅伝で区間賞を取った3選手もエントリーしている。5区の細谷翔馬(帝京大3年)、8区の大保海士(明大4年)、10区の石川拓慎(駒大3年)で、細谷は注目度の高い山登り区間を制し、大保と石川は10000mで28分40秒台の記録を持つ。
 少し以前なら学生選手の28分40秒台は好記録だったが、28分台が当たり前になった今はそこまで評価されなくなった。山登りの5区も以前ほど、平地でも通用するエースが走らなくなっている。3人の区間賞選手にとって、個人でもアピールする絶好の大会になる。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

27日(土)午後3時30分 TBS系列
「クロスカントリー日本選手権」


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