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日本選手権クロスカントリー展望①女子プレビュー

田中vs.廣中の日本選手権5000mバトルの再現か
廣中世代、田中世代の有望選手が多数エントリー

日本選手権クロスカントリーは2月27日、福岡市の海の中道海浜公園で以下の4部門が行われる。
U20女子・6km
U20男子・8km
シニア女子・8km
シニア男子・10km
 シニア女子では田中希実(豊田自動織機TC・21)廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ・20)の対決が白熱しそうだ。日本選手権5000mでは熾烈な争いの末、田中が優勝して東京五輪代表に内定した。好勝負の再現が期待できる。
 日本選手権同種目3位の萩谷楓(エディオン・20)も若手成長株。大学生では関谷夏希(大東大院1年)和田有菜(名城大3年)高松智美ムセンビ(名城大3年)らが上位候補だ。どこまで2強に食い下がれるかが注目される。

●クロスカントリーでも実績のある田中&廣中

 現在の日本女子長距離界“3強”は誰か?
多くの人が新谷仁美(積水化学・33)、田中希実、廣中璃梨佳の名前を挙げるだろう。
 新谷は10000mで19年世界陸上11位、昨年の日本選手権優勝者でそのときに30分20秒44と日本記録を大幅に更新した。田中は5000mで世界陸上14位、昨年は1500mと3000mで日本記録を更新し、日本選手権は1500mと5000mを制した。この2人は東京五輪代表にも内定している。そして廣中はクイーンズ駅伝1区で、2年連続圧倒的な力を見せて区間賞を獲得。5000mでは日本人3人目の14分台をマークした。
 3強のうち田中と廣中が、日本選手権クロスカントリーに出場する。今大会における2強と言っていい。トラックの専門種目は同じ5000mだが、2人のこれまでの戦績を見ると田中はトラックで、廣中はロードでの活躍が多かった。季節的にも田中は温かい時期に強く、廣中は涼しい時期に強い。
 昨年12月の日本選手権の田中は、自身の調子が落ちていたためプレッシャーを感じていた。廣中も相手が田中ということで、駅伝のように思い切って飛ばすことができなかった。お互いにベストレースができないなかで、後半は2人ともものすごいスピードで走り、田中が0.46秒差で競り勝った。レース直後に廣中が祝福のために歩み寄ったが、田中は意識が朦朧としてそれに気づかないほど激しいレースだった。
 1学年差の2人は2年前の今大会で、田中はシニア優勝者、廣中はU20優勝者となった。クロスカントリーは2人とも得意とする。東京五輪代表がかかっていたトラックの日本選手権と違い、今大会はリラックスモードで臨めるだろう。ピリピリ感はないが、2人とも力を発揮することで、より激しい対決になるのではないか。

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●廣中世代の有望選手がエントリー

 萩谷楓は昨年、日本トップレベルに成長した。
 3000mでは田中が日本新を出したレースで2位に続き、8分48秒12の日本歴代3位をマークした。5000mでは昨年の日本選手権3位で、田中と廣中の戦いには加われなかったが、4位以下の集団は引き離した。昨年7月には15分05秒78と、適用期間外ではあったが東京五輪参加標準記録(15分10秒00)を上回るタイムで走っている。
 同学年の廣中に隠れてしまいがちだが、間違いなく日本代表候補である。
 廣中&萩谷と同じ高卒2年目には有望選手が多く、今大会にも小笠原朱里(デンソー・20)、宮田梨奈(九電工・20)、中村優希(パナソニック・20)らがエントリーした。
 小笠原は高校2年時に日本選手権5000mで3位に入って関係者を驚かせた。そのときのタイムは15分23秒56の高校歴代2位、高校2年最高記録。シニアでも通用するレベルだった。高校3年時に調子を落とした時期もあったが、デンソー入社後にじっくり練習して立て直し、昨年はクイーンズ駅伝5区で区間2位と健闘した。
 2月14日の全日本実業団ハーフマラソンは、転倒した影響もあって15位。今ひとつだったが、松元利弘監督は今年、5000mは15分20秒台を、10000mは31分30秒台を期待している。

●田中世代は学生にも注目選手

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 高卒3年目の田中は学連登録こそしていないが、同志社大に通う大学生でもある。同学年にはやはり有望選手が多く、和田有菜や高松智美ムセンビなど、学生選手が頑張っている。
 和田は昨年の日本選手権5000mで7位に入賞。そのレースで15分25秒14の学生歴代5位をマークした。大学1年時にはU20世界陸上3000mに出場し、優勝した田中とともにレースを先導して4位と健闘した。
 高松は大学1年時に5000mで15分26秒76の学生歴代8位をマーク。種目は5000mだが田中、和田と一緒にU20世界陸上に遠征し7位に入賞した。
 17年の今大会U20の部では、当時高校2年生の高松が優勝。翌18年は廣中がやはり2年生で優勝し、高松が2位、和田が3位と続いた。そして19年はU20で廣中が2連勝。シニアでは田中が優勝し、高松が3位に入っている。
 20~21歳の若手選手を中心に紹介してきたが、代表経験選手では18年アジア大会5000mの山ノ内みなみ(京セラ・28)、15年世界陸上5000m代表の鷲見梓沙(ユニバーサルエンターテインメント・24)がエントリーしている。調子を落としていた時期もあった2人が、どのレベルまで復調しているか。
 また、全日本実業団ハーフマラソンで6位と健闘した吉川侑美(ユニクロ・30)、7位の逸木和香菜(九電工・26)らもエントリーした。前述の小笠原、矢野栞理(デンソー・26)、川口桃佳(豊田自動織機・22)ら、2週間の間隔でハーフマラソンから転戦する選手たちの走りも注目したい。

TEXT by 寺田辰朗

27日(土)午後3時30分 TBS系列
『クロスカントリー日本選手権』


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