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【静岡国際2021・男子200m飯塚翔太】

飯塚が地元で快勝しリオ五輪イヤーと同パターンに
コーナー出口の技術をREADY STEADY TOKYOで確認

 静岡国際が5月3日、静岡県袋井市のエコパスタジアムで行われた。東京五輪女子5000m代表の田中希実(豊田自動織機TC)は800 mに出場。2分03秒19の自己新で2位に入り、日本記録を狙う9日のREADY STEADY TOKYO(国立競技場)1500mに向けて好感触を得た。男子走高跳では優勝した衛藤昂(味の素AGF)と2位の戸邊直人(JAL)が、2m33の五輪参加標準記録は惜しくも失敗したが、2m30をクリアしてREADY STEADY TOKYOに期待をつないだ。そして静岡県出身の飯塚翔太(ミズノ)が男子200 mに20秒52(-0.5)で優勝。走高跳の2人と同様、READY STEADY TOKYOで五輪標準記録(20秒24)に挑む。

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●地元優勝はリオ五輪イヤーと同パターン

 飯塚翔太は日本選手権で4回(13、16、18、20年)優勝し、五輪&世界陸上でも代表常連選手。静岡国際に優勝しても特筆すべきことではないかもしれないが、16年大会以来の優勝という点は目を引いた。
 16年はリオ五輪のシーズンで、静岡国際に20秒38(+1.0)で優勝し、日本選手権には20秒11(+1.8)の日本歴代2位(当時。現日本歴代3位)で優勝。そしてリオ五輪に200 mで出場し、4×100 mRでは銀メダルと好調なシーズンを送った。
 12年ロンドン五輪以来、多くの国際大会を一緒に走ってきた山縣亮太(セイコー)も、出身地広島開催の織田幹雄記念国際(4月29日)で、16年以来の優勝を果たしたばかりだった。
「山縣も地元の大会で、(桐生祥秀、小池祐貴、多田修平らが出場し)あれだけのメンバーの中で優勝しました。自分も同じ状況だったので刺激になりました。優勝したい気持ちが高まりましたね」
 さらに飯塚は、こうも付け加えた。
「地元ということでいえば東京五輪も同じです。声援や拍手だけでもパワーにつなげられます。五輪本番でもパワーをもらって走りたいですね」
 飯塚の地元静岡での優勝は、東京五輪までつながっていく。

●豊田コーチが見た静岡国際の成果と課題

 静岡国際の走り自体の手応えはどうだったのか。飯塚は次のように振り返った。
「予選は脚が回らない状態で直線に入ったのですが、決勝はスタートから60mまでにピッチを上げられました。60~120mは内側を意識して、実際に上手くできていたかわかりませんが、体重を内側の脚に乗せてコーナリングをしました。肩甲骨を上手く動かし、下半身の動きと連動させることで、地面からの反発を受ける力を上げることができ、ストライドを大きくできます。そこは成長を感じられていますね」
 山縣は練習方針や走り方(フォームなど)を慶大入学時から、ずっと1人で判断してきたが、今年2月から高野大樹コーチをつけて相談して決めるようになった(山縣の織田記念記事参照★https://note.com/tbsrikujou/n/n396607a8dc69)。同じ役割を飯塚は、中大入学時からずっと、中大の豊田裕浩コーチに依頼している。飯塚も練習方針や走り方は自身で決めているが、例えば海外合宿に行って新しいことを学ぶときなど、必ず豊田コーチに同行してもらっている。
「新しいことをやるときは僕が決めさせてもらっていますが、現地に行くときは必ず豊田コーチと一緒に行きます。情報を受け取るときの精度が高い方がいいからです。僕だけで受け取るより、2人で共有して考えた方が良い方向に持っていくことができます」
 その豊田コーチは、静岡国際の飯塚の走りをどう見たのか。飯塚が話した2つの点を解説をしてくれた。
 まずはストライドを大きくする点だが、これは飯塚がリオ五輪後にずっと取り組んでいる点だ。日本選手としては大きな身体の飯塚だが、動き自体はコンパクトでピッチ走法といえるかもしれない。それで20秒11まで記録を縮めたが、19秒台を出すにはそのピッチを維持しながら、ストライドを少しでも大きくすることが必要だと考えた。
 なかなか記録には結びついていないが、毎年、なんらかの成果は出ているという。
「このところ(上半身と下半身の)タイミングは合っていて、後半の維持能力は良い状態です。静岡でも接地は上手く行っていて、ストライドの部分は楽に走れていました」
 静岡国際の後半の走りに、豊田コーチは合格点をつけていた。

●コーナーの出口で外に振られない走りを

 もう1点はコーナーの出口の走りで、その点は課題が残ったという。
「昨年がシーズンを通して上手く走れなかった部分です。コーナーを出る前に外側にふくらんで、タイムをロスしてしまっています。トップスピードが上がると、外側に振られやすくなるんです。静岡の前半100mは10秒51でしたが、19秒台を出すためには10秒3台前半が必要になりますから、今後も注意していかないといけない点になります」
 READY STEADY TOKYOでは、トップスプリンターの多くが100mに出場する。200mはライバル不在のレースになるが、20秒24の五輪参加標準記録は早い段階で突破しなければいけない。場所が国立競技場ということで飯塚のテンションは上がるはずだ。前半から思い切って入るだろう。
 そのスピードのなかで、コーナーの出口でも外側に振られない走りができるかどうか。テレビ画面でも、運が良ければチェックできるかもしれない。タイムは風や気温にも大きく影響を受けるが、直線に入るところで飯塚がレーンの中央より内側を走っていれば、フィニッシュしたときに標準記録が出ているかもしれない。

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TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

9日(日)よる6時30分 TBS系列生中継
『READY STEADY TOKYO陸上』
東京2020オリンピックテスト大会

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