見出し画像

2021年2月7日「風をよむ~ ワクチン後進国」

画像1

集められた、大量のニワトリの卵… そこにウイルスを注入し培養…。そうして出来上がるのが、インフルエンザのワクチンです。

画像2

私たちが使うインフルエンザ・ワクチンは、国内でも生産されています。
しかし今、国内でまかなえないため、接種開始に懸念が生じているのが、
新型コロナウイルスのワクチンです。 

画像3

河野太郎行革担当相「依然として供給スケジュールが確定していないのが現状。不公平な取り扱いがされないようにというところは議論している」

火曜日、ワクチンを担当する河野大臣は、EUによるワクチン輸出規制から、
日本への供給に影響が生じる可能性を指摘。その後、日本への輸出は承認されましたが、ワクチンの争奪戦は加熱しています。

画像4

6日時点で、世界で既に1億回を超えたとされる新型コロナのワクチン接種。世界83の国と地域で接種が始まる中、日本は主要国の中で唯一、ワクチンの承認にさえ至っていません。

厚労省は、アメリカのファイザー製ワクチンについて、ようやく今月15日に承認する方向で調整中。

画像5

また今後、兵庫県内で9000万回分の生産が予定されているイギリスのアストラゼネカ製ワクチンも、金曜日に承認申請したばかり。その一方で、中国やロシア、インドなども自前で開発する中、国産ワクチンの接種開始時期は見通せていません。日本の「ワクチン後進国」ぶり。なぜなのでしょうか…

画像6

日本は1970年代、ワクチンの研究開発や製造において、世界の先頭に立っていました。

画像7

例えば、水疱瘡の原因となる水痘帯状疱疹ウイルス。そのワクチンは、日本で発明され、今も世界中で使用されています。

画像8

ところが、1980年代に入ると、幾つかのワクチンについて、接種後の副反応で健康被害が相次ぎ、社会問題化。各地で集団訴訟が起き、国がその責任や補償をめぐり争います。

画像9

この、はしか・おたふく風邪・風疹を予防するMMRワクチンの接種は、
1989年に始まったものの、髄膜炎の副反応が見られ4年で接種を中止。

画像10

それまでは法律で「義務」とされていた予防接種も、1994年の予防接種法改正で「努力義務」へと緩和されます。ワクチンの使用・開発に対する国の姿勢は、徐々に消極的となり、その需要も減少。製薬大手も次々と事業から撤退していきました。こうした経緯を専門家は…

画像11

大阪大学(免疫学):宮坂昌之名誉教授「いくつかのワクチンで思わぬ副反応が出て、健康被害が起きたことに対する政府としての対応が遅かった、あるいは不十分だった。どのくらいのリスクがあって、どのくらいのベネフィット(利益)があるのか、厚労省が分かりやすい形で伝えないといけないと思うんですけど、問題があった。ワクチンに対する不信感というのが生まれてしまった」

画像12

その結果、日本の予防接種制度は世界的に見ても最低レベルといわれるほど大きく後退。それを端的に示した例がありました―。

画像13

2007年、日本では若者を中心に、はしかが流行。しかし、はしかは先進国では既にワクチンによって抑制されており、海外からは、日本は「世界一のはしか輸出大国」と非難されたのです。 

画像14

そこで政府は、「ワクチン産業ビジョン」を公表。企業と連携し、世界に挑む体制を目指しました。

画像15

しかし、国内のワクチン市場規模は、いまだ、およそ1400億円と、医薬品全体の、わずか1.4%にとどまっています。

画像16

そうしたワクチン後進国・日本を襲った今回の新型コロナウイルス。実は、ファイザー製ワクチンなどに使われた、メッセンジャーRNAという新技術の研究は、日本国内でも既に行われていたといいます。

画像17

大阪大学(免疫学):宮坂昌之名誉教授
「このmRNAを、ワクチンに用いようという動きは日本でも行われてましたし、結構進んだ研究もありました。ところが日本の製薬メーカーがワクチンになかなか手を出さない。政府にしろ、製薬メーカーにしろ、日本はどうしても目の前の儲かりそうなもの、お金になりそうなものに飛びつく。科学立国といいながら、リスクがあるものに対しては、なかなかお金を出しません」

画像18

緊急事態宣言が首都圏に出された先月8日。大隅良典、大村智、本庶佑、山中伸弥の、ノーベル医学生理学賞を受賞した4氏が、政府への要望をまとめた声明を発表しました。今後の新たな感染症発生の危険性を考え、
“ワクチン開発に対する国の支援強化”を、訴えたのです。

新型コロナを前に、浮き彫りになった「ワクチン後進国」という現状。
日本はそこから脱することができるのでしょうか―。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?