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2019/07/21 風をよむ「嫌なら出て行けばいい?」

・トランプ大統領の人種差別発言に波紋

・アメリカ差別の歴史 公民権運動

・今後のアメリカは分断の道を辿るのか?

トランプ大統領「彼女たちはいつも我々に“この国をどうしろこうしろ”と言うが、アメリカが好きでないなら出て行ってもらえばいい」

民主党の、白人ではない4人の女性議員を、念頭に置いた、トランプ大統領の乱暴な発言。

この発言に支持者たちは・・・

トランプ政権支持者「彼女を送り返せ、送り返せ!送り返せ!」

こうしたトランプ大統領の発言に対して、女性議員たちは、
人種差別だとして激しく反発しています。

イルハン・オマル議員「大統領が我々の憲法を踏みにじるのを許すことをやめ、大統領を弾劾すべき時が来たのです」

オカシオ=コルテス議員「全米の子どもたちに伝えたい。大統領がなんと言おうと、この国はあなたたちのものです」

16日には、アメリカ議会の下院本会議で、トランプ発言は「人種差別的だ」と非難する決議案が提出され、野党・民主党に加え、与党・共和党からも4人が賛成、可決されました。

こうした事態を、アメリカ研究が専門の国際基督教大学、森本あんり教授は・・・

森本あんり・国際基督教大学教授「不満を票として集めて、トランプさんの政治が今進んでいる。怒り続けてもらわないと再選は危ないわけですよね。怒りが政治のツールになってしまっている。アメリカという国が本来体現すべき正義、平等という価値理念がほとんど死にかけていると痛感した」

改めて問われる、アメリカ社会の、人種差別問題。
5年前には、こんな映像が、世界を驚かせました。


黒人男性「おまわりさん、俺のことはほっといてくれ」

2014年、ニューヨークで白人警官が、黒人男性を逮捕しようとした際、

黒人男性「息ができない、息ができない」

警官に背後から首を絞められ、地面に押さえつけられた後、この黒人男性は死亡しました。

その後、捜査を続けてきた連邦地検は、5年後の今月16日、証拠不十分で起訴を見送り、捜査終了を発表。人種差別の疑惑はうやむやのまま、置き去りにされたのです。

半世紀前の1963年、キング牧師を中心にした大規模な運動が展開。
翌年、人種差別の撤廃をはかる公民権法が成立しました。

また、2009年には黒人のオバマ大統領が誕生するなど、幕を閉じるかに見えた、アメリカの人種差別の歴史は、今また目を覚まし、差別的言動が、公然と頭をもたげ始めたのです。

そもそも、なぜ、人の意識に差別感情が生まれるのでしょう?

森本あんり・国際基督教大学教授「差別意識の根底には、<他者化>がある。他者化というのは、自分と他人との間に線を引いて区別する。ひとくくりにしてレッテル貼りをする。 こういうイメージとして相手を作ってしまえば、分かりやすい。その中には、差別的な見方が含まれるんですね」


こうして作り出された、<他者>に、不満のはけ口が向けられた時、どんな悲劇につながるか・・・歴史が教えています。

ヒトラー政権下で行われた、大量のユダヤ人虐殺。ゲルマン民族の人種的優越性を誇るために差別され、虐殺されたユダヤ人は、600万人に上ると言われます。

第二次大戦後、この悲劇への反省の上に、国際世論は<人種差別>を許さないとする理念を掲げ、再出発したはずでした。

それなのに、なぜ今の民主主義国のリーダーである、アメリカの大統領の口から、今また、差別的な言葉が飛びだし、それに喝采の声が上がるのでしょう?

森本あんり・国際基督教大学教授「戦後、我々が教え込まれてきた、理想、民主主義、平等、他者の尊重、多元性、こういうものが、当然だと、受け止められなくなってしまった。前のように共産主義との戦いという、冷戦構造がありませんので敵が見えなくなってしまっている。そうすると、内に別の敵を見いだし、それをやっつけて、自分を確認するということが起きやすい状況になっている」

トランプ大統領の人種差別発言でアメリカ社会の分断はさらに深まるのでしょうか?

トランプ大統領「アメリカが好きでないなら出て行ってもらえばいい」

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