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2018/12/09 風をよむ「温暖化に背を向ける世界」


(街の声)「暑いですね、この格好では…」「こんなに暑いのは初めてです」

火曜日、季節外れの暑さが日本列島を襲いました。スケート場ではリンクの一部が解け出すなど、全国300か所以上の地点で観測史上、12月の最高気温を更新。25度を超える夏日の場所が続出しました。

12月とは思えない暑さに日本が見舞われたこの日、ヨーロッパのポーランドでは、地球温暖化を話し合う会議が開かれていました。

「第24回 国連気候変動枠組み条約・締約国会議」、通称「COP(コップ)24」です。

21世紀後半に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする方向を打ち出し、各国が削減目標を立てることを定めた「パリ協定」。それを実行するため、詳しいルール作りが話し合われたのです。

その会場に姿をあらわしたのは、前カリフォルニア州知事で、俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏…

シュワルツェネッガー氏「アメリカはまだパリ協定の枠組みにいる。みんな素晴らしい仕事をしていて、協定にとどまっているのだ。アメリカには”クレイジー”なリーダーがいるが、そうではないアメリカ人がたくさんいることを忘れないで欲しい…アイル・ビー・バック!」

共和党の知事だったシュワルツェネッガー氏。しかし今回、彼が皮肉を言ったのは、共和党のトランプ大統領です。以前から、トランプ大統領は、地球温暖化を否定するような発言を行ってきました。

先月、アメリカ・カリフォルニア州では、史上最悪となる88人もの犠牲者を出す山火事が発生。多くの専門家が地球温暖化との関連を指摘しました。
  
また先月23日、アメリカ政府は温暖化の影響を受けた山火事などにより、2015年以降、およそ45兆円の被害が出たと報告。

さらに“地球温暖化によって今世紀末までにアメリカ経済に年間数十兆円の損失が生じる”と警告まで発したのです。ところが…
 

記者「報告書では経済への影響が甚大だということですが・・」

トランプ大統領「私は信じないよ。信じない」

温暖化対策に、あくまで否定的なトランプ大統領。そして、こうした姿勢を示す国のリーダーはトランプ大統領に限りません。

ボルソナロ・次期ブラジル大統領「ブラジルを偉大で自由で繁栄した国家にするため変革するのです」

10月、大統領戦に勝利したブラジルのボルソナロ次期大統領。選挙戦中に、パリ協定離脱の意向を一時表明し、次期外相にも温暖化対策を疑問視する人物の起用を決めるなどしています。

こうした状況について専門家は…・

前嶋和弘教授(上智大学・国際関係論)「温暖化に対する規制をするということは産業の発展を抑制することだと。こう考える人も結構います。アメリカは世界最大の産油国にもなったし、石炭産業も大きい。トランプ大統領はそれを利用した。温暖化対策より、大胆な開発なんだと。自分の選挙で勝つために必要だった。ブラジルも同じ。産業発展をしていきたいという人たちに向けて都合よく解釈した。温暖化など重要なものじゃないと」

「自分たちに都合の悪い現実には目を背け、あるいは否定する」―今、そうした風潮が世界に広がっています…

先月17日からフランス全土で続く燃料税引き上げへの抗議デモ。国民からの猛反発を買い、来年中の実施は断念されましたが、もともと燃料税の引き上げは、地球温暖化対策の一環として提案されたものでした。

いざ実現させるとなると決して容易ではない温暖化対策。さらに温暖化そのものを真剣にとらえていない人も多いのです。

例えば去年3月、アメリカの「ギャラップ」社が行った世論調査では、「気候変動を深刻にとらえている」か聞いたところ、「深刻」ととらえたのは、民主党支持層では66%、一方、共和党支持層では、わずか18%にとどまったのです。

江守正多・国立環境研究所地球環境研究センター 副センター長「気候変動対策は社会全体としては重要だと理解していても、今の自分の優先順位として見た時にどうしても”他人事”であるというか、自分の生活の上でもっと重要な問題があると。影響は遠くで将来に起きるとか、自分が何か努力してもそんなに有効なのかとか、後ろ向きになりやすい。今ですね、猛暑が増えたり、豪雨が増えたり、温暖化の影響が出ているのは確か。それに対して“自分の問題だ”という受け止めをしている人は残念ながら多くない」

今回のCOP24には、一人の少女が参加していました。グレタ・ツンベルクさん、15歳。1903年、ノーベル化学賞を受賞し、世界で初めて地球温暖化を理論的に予言したスウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウス氏の子孫です。

彼女は8歳の頃から温暖化の問題に関心を持ち、声をあげ続けてきました。

グレタ・ツンベルクさん「何か行動しないといけません。希望がないから、というのは何もしないことの言い訳にはなりません。もちろん希望も必要ですが、それ以上に必要なのは行動です―」


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