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【ホット検索ワードから見る中国 vol.6】
中国版Twitter“微博(ウェイボー)”で話題になっているホット検索ワード“热搜(rè sōu)”をもとに、「中国の今」を紹介していきます。

今回のホット検索ワード「国慶節」
中国のゴールデンウィークでもある10月1日の中国の建国記念日・国慶節。約一週間の大型連休で、何処もかしこも人だらけになります。人が多すぎて携帯電話の電波が届かず、通信障害が起きた、なんて場所もありました。


(写真2点 微博より)

今年は計7億3000万人の人たちが中国国内を旅行したそうです。それに加え、海外へと出かけた人たちが7000万人。つまり、なんと計8億人が旅行へと出かけたことになります。

さて、中国人の半分以上が旅行へと出かけたこの国慶節。中国各地では、どんな光景がみられたのか。今回は、中国人の連休事情についてお伝えしたいと思います。

■パワフルな中国人

こんなに多くの中国人が旅行するのには理由があります。中国人は一家総出での旅行を好むからです。会社も学校も休みになるので、この機会を利用して家族みんなが集まり、そのついでに旅行にまで出かけます。そのため、どこに行ってもお年寄り、夫婦、子供がたくさんいます。

日本の場合、お年寄りを連れて旅行する場合は、人込みを避けたり、観光しやすい場所を選んだりすると思います。しかし、中国の場合、お年寄りが一緒でもどこにでも行きます。車椅子に乗るおじいさんを連れて、一家で山を登っている姿を見かけたこともあります。本人だけでなく、それを支える家族のパワーに驚きです。

(漳州新闻网より)

今年の国慶節、私は貴州省で世界遺産を巡るバスツアーに参加しました。毎日朝5時頃起きて出発し、バスに4~5時間揺られ、観光地は人を見てるのか景色を見てるのかわからなくなる…。正直とってもハードなスケジュールでしたが、同じツアー参加者には7、80代のお年寄りや、3歳未満の子どもを連れた家族がたくさんいました。

(视角中国より)

■中国人は「並ばない」わけではない

大規模休暇はどこにいっても、人だらけ。そのため、なにをするにも必ず並ばなくてはなりません。中国人は「並ばない」、「横入り」をするという印象を持っている人も多いかと思いますが、実際中国人は、並ぶことにとても慣れています。

(乐居客より)

ただ、「並ぶこと」に関する習慣が大きく違います。
まず、日本と大きく違うのは「前の人との間に隙間を空けない」ということです。少しでも隙間を空けてしまうと、並んでいないとみなされてしまいます。なので、距離を空けないよう、前の人にピッタリくっついて並びます。

この習慣に慣れてしまった私は、日本に帰ったとき、前の人にピッタリくっついて並んでしまい、周りから不審がられたことがあります。

(筆者撮影)

この習慣のせいか、中国の人は圧倒的に「フォーク並び」(※)が苦手です。トイレなども、ひとりひとり個室の前に並んでいることがあります。自分が並んでいる場所と自分との間に距離が空いてるのが不安なようで、フォーク並びを信用できないようです。
※列を一つにし、あいたところに列の先頭の人が入る方式

もう一つ日本と大きく違うのは、中国人は「とりあえず並ぶ」ことをしないということです。例えば、撮影スポットで写真を撮るとします。日本の場合、気がついたら列ができて、順番に並びますが、中国の場合は、撮影スポットを放射線状に囲んで、前の人が去れば、我先にと出ていきます。それでもなんだかんだ成り立っています。

(网易论坛より)

「並ばなければならない」と分かっている場面では並べるのですが、並ぶことが強制されてない場合は並ばないことが多いのです。このような習慣の違いがあるため、日本人から見るとルールを守っていないように見えることがあると思います。しかし、「並ぶ必要がある」とわかれば並ぶので、横入りしそうになっている人がいたら是非教えてあげて下さい。

■学生にとっては稼ぎ時

旅行に行くにしても、結婚式に参加するにしても、なにかとお金がかかってしまう国慶節。一方で、国慶節中に出勤すれば給料が3倍と法律で定められているため、働く事を選ぶ人も多いです。

(新浪新闻より)

私が今回参加した、バスツアーのガイドはなんと現役大学生でした(もちろんガイドの正式な資格を持っている方ですが)。

しかも、「こんなにたくさんの人を一度にガイドするのは初めてです」と。少々心配にもなりましたが、なんとか無事にツアーを楽しむことができました。とはいえ、日本だったら大型連休中のツアーガイドを、大学生の新人バイトに任せるということはしないんじゃないかな…と内心思いました。

最後には「絶対に私の評価(旅行会社に出すアンケート)は5点を付けて下さい。(5点満点)そうでないと、私の給料が減らされてしまいます!学費や生活費を稼がないといけないので、皆さんご協力お願いします!」と。ツッコミどころが満載ですが、これも中国ではよくあること。もしアンケートで低い評価を付けると、直接電話がかかってきて、評価を変えるよう頼まれることもあります。

■楽しめるかどうかはあなた次第

中国の人混みでは、時々(場所によっては結構な確率)でカオスな場面に遭遇します。日本の生活では到底想像できないような事が起こります。

私が今回訪れた場所の一つ、貴州市茘波地区は世界自然遺産にも登録されている自然豊かで美しい場所です。

(筆者撮影)

そこには「水上森林」と呼ばれる、森にある沢のほとりを登るスポットがあります。ここでは人が多すぎて、観光客用の通路が渋滞状態になっていました。それにしびれを切らした人たちは、靴を脱ぎ、直接水に入り沢を登っていました。

(筆者撮影)

しかも、その沢の中で飲み物や食べ物を売っている人も。水の中に胡瓜を入れて冷やしながら胡瓜まるまる一本を売っている人もいました。皮を剥いてから客に渡すとはいえ、果たしてキレイなのか…そこは疑問が残ります。

中国を旅していると「なんで?!」とツッコミたくなる場面、「ありえない!」とキレそうになる場面、「信じられない…」と絶望するような場面、様々な場面に出会います。しかし、そんな場面に出会うほど、次はどんな場面に出会うんだろう?不思議と少しだけワクワクしてきます。(もちろん、もう嫌だ!と思う時もありますが)

「中国の観光客って〇〇だよね」と、日本にいる彼らの姿だけで判断している人たちは、是非一度、中国で彼らの姿を見て欲しいなと思います。しかし、楽しめるかどうかはあなた次第です。

(記事作成 竹内亮 石川優珠)


竹内亮

ドキュメンタリー監督 番組プロデューサー (株)ワノユメ代表

2005年にディレクターデビュー。以来、NHK「長江 天と地の大紀行」「世界遺産」、テレビ東京「未来世紀ジパング」などで、中国関連のドキュメンタリーを作り続ける。2013年、中国人の妻と共に中国·南京市に移住し、番組制作会社ワノユメを設立。2015年、中国最大手の動画サイトで、日本文化を紹介するドキュメンタリー紀行番組「我住在这里的理由」の放送を開始し、2年半で再生回数が3億回を突破。中国最大のSNS・微博(ウェイボー)で「2017年・影響力のある十大旅行番組」に選ばれる。番組を通して日本人と中国人の「庶民の生活」を描き、「面白いリアルな日本・中国」を日中の若い人に伝えていきたいと考えている。