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新型コロナウイルス 神戸大学・岩田健太郎教授インタビュー(2月19日取材)

新型コロナウイルスの感染が広がったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」は“新型コロナウイルスの製造機だ”としてYoutubeに動画を投稿し(現在は削除)その惨状を告発した神戸大学・岩田健太郎教授を取材しました。岩田教授が船内のゾーニングが不十分であったと主張する一方、厚生労働省は20日、「クルーズ船内の感染防御策について」として船内の感染管理など、具体的にどのような対策を講じてきたのかを公表。汚染したガウン等の感染防具を脱ぐゾーンは設けられ、そのほかの業務区域とは明確に分離されていたとしています。

村瀬キャスター:
先生のユーチューブの動画を拝見させて頂きました。動画のタイトルが「ダイヤモンド・プリンセスはCOVIDー19製造機」というタイトルになっていましたけれども、どうしてそういうふうに思われたのか教えていただけますか。

岩田教授:

普通は隔離をしているときは感染がこれ以上起きないという前提で対策をとるわけですけれども、実際には500人以上の方が感染してしまっている、そしてなぜ感染が起きてるのかっていうことの根拠となるデータ収集、解析がされていない。中に入ってわかったら、感染対策が適切に行われていないので、クルーズ内の二次感染が非常に高いリスクで起きると。可能性が高いと考えました。実際にクルーズの中にいるアメリカのドクターとかも同じようなことを考えて、ホワイトハウスに連絡して、アメリカはチャーター便で帰ってしまいました。自国の人を連れて。さらに2週間の隔離期間をおいています。同様のことはカナダとか香港とか韓国がやっています。さらなる2週間隔離を置いています。隔離を置いているということはどういうことかというと、2月5日以後やっていた検疫の隔離策は、日本がやってた隔離策はうまくいってなかったと各国が判断したことを意味しています。私が言ってることと同じで、要は日本の厚労省だけが自分たちはちゃんとやってますと主張するんだけれども世界はそうは思ってない、私もそうは思ってないということです。

村瀬キャスター:
専門家の先生が実際に船の中に入られて、どの部分が具体的にちゃんとできていない、隔離政策としてちゃんとできていないと、どの部分を見てそう思われましたか。

岩田教授:
隔離の観点で言うとレッドとグリーンがちゃんと区別できていないことを意味しますね。レッドとグリーンというのは簡単に言うと、レッドゾーンはウイルスがいると考えるゾーンです。そしてそのために自分はきちっとした防護服を着て自分を守ることをする、これがレッドのゾーン。レッドにいる人はみんな防護服を着ていなきゃいけない。グリーンはウイルスがいないと。安心できるゾーンです。そこにはウイルスが1匹もいなくて、もちろん目には見えませんがいないという根拠を持たないといけない。そこでは何を触っても大丈夫です。そこでは防護服は着ちゃいけないんです。なぜならば防護服は危ないところを回ってウイルスが体の防護服の表面に付着するかもしれなくて、付着したウイルスをそのまままき散らしてしまうとグリーンがグリーンじゃなくなる。ところがダイヤモンド・プリンセスの中はいろんな人が入ってたが防護服を着た人が歩き回ってるのと同じ場所で普通の人が歩き回ってる。ということはグリーンでありながらレッドであるみたいなゾーンができてるわけです。

岩田教授:
よくメディアのほうで「感染が起きたのは防護服を着てなかったからじゃないか」という話が出るんですけど、防護服を着ればいいってものじゃなくて、適切な場合にちゃんと着て適切な時は脱いでなきゃいけない。着ればいいってものじゃなくて「ここでは脱ぐ場所」「ここは着てなきゃダメですよ」と区別してちゃんとした線が必要です。ここから向こうは着る、ここから手前は着ない。その線はまったく無くて、どこがPP(防護服のこと)着る場所で、どこがPP着てはいけない場所なのかわからないまま同じスペースにPPを着てる人、防護服ですね、着てない人が混在してた、つまりこれは、うまくいってないということです。このことは何をしてるかというとグリーンと言われてるところにも実はあちこちウイルスがくっついてる可能性があって、これはほかの感染症の専門家の人にも同じ感想を言われたんですけど、触ったりしたらウイルスつくかもしれないと。自分が防護服を着ないでマスクだけ付けているこの状態に、実は感染が起きてしまうかもしれない。ものすごい怖いわけです。アフリカでエボラと対峙してるときはグリーンとレッドで完璧に分かれてる。グリーンにいるときはふつうの半そでのシャツとズボンだけ。素手で良いし顔に何もつけなくていいしマスクもつけない、ご飯も食べれると。ひとたびレッドに入るときは写真で見る宇宙服みたいながっちりしたPPをつけて完璧な状態にして患者さんのエリアに入る。そしてそのレッドゾーンから出るときはPPを全部脱いで、PPのくっついたウイルスが絶対にグリーンに入っていかない処置をしてグリーンに入る。これを続けることであんなにひどかったエボラのアウトブレイクでも医療従事者が感染しないための基本的な戦略というのは成り立っていた。つまりクルーズの中で厚労省が主張するには「レッドとグリーンちゃんとつくってたよ」と言うんだけど、ちゃんとはできてなくて。どうしてかというと形式的なPPつける場所とか脱ぐ場所みたいなのはちゃんとつくってたんですけど、日本環境感染学会の方もつくられたらしいんですけど、でもどこがレッドでどこがグリーンかの区別をちゃんとしないまま運用されてる。それはぜんぜん目的を達してない。つまり彼らは表面的な形式は満たしてるけど、「レッドとグリーンつくりました」みたいな。でもちゃんとできてなければ感染が起きてしまって、感染が起きてしまうということは要はできてないということですね。だから官僚の方の目指す目標は「プランを作りました」なんです。我々プロの感染対策の人が目指してるのは、「プランができました」なんです。“つくった”プランと、プランが“働いてる”のと大きな差があって、我々は「プランができてますよ」ではダメなんです。ちゃんと機能して初めてできてる。要するに彼らの言うできると我々の言うできるは次元が全然違う

村瀬キャスター:
先生からご覧になって厚労省が言っている船の中にあるグリーンゾーンというのはグリーンゾーンになってないということですか。

岩田教授:
そうです。特に懸念されたのが本部ですね。船の中にあるんですけど、本部の中もウイルスがくっついてもおかしくないような状況になってる。そこにたくさんの人が厚労省の方がいたり検疫所の方がいたりDMAT(災害派遣医療チーム)がいたり、DPAT(精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチーム)というメンタルの方がいたり、非常にたくさんの方が無防備でごはん食べたりスマホいじったりしてるところにウイルスが混じっていないという保証がどこにもないという状況。これは非常にこわい。我々が何がこわいって、何が安全で何が安全じゃないかの区別ができてないのが一番感染に対してこわいわけです。だから私はアフリカにいたときよりも、クルーズの中の方が圧倒的にこわくて、自分も感染するのではないかと本当に心から恐怖を感じました。感染症のプロがわかってる。わかっていれば恐怖する。それを勉強してない人はわからないです。形だけ満たしてPP着たり脱いだりしてちゃんと仕事してるかのようなフリができます。

村瀬キャスター:
船の中の本部なりグリーンゾーンと呼ばれているところがグリーンゾーンになってないというのは、具体的にどういう行動がグリーンゾーンを汚染する可能性があったと御覧になりましたか。

岩田教授:
PPを着てどこまで入れるかというところがちゃんとルール化されてないということですね。PPを着て歩くところをグリーンには絶対してはいけないというところも徹底されていない。DMATは災害医療の専門家集団で本来は感染症対策の訓練を受けてない、無理に来ていただいてるお気の毒な状況なんですけど、彼らがやれるわけはないしやる必要もないわけです。だからこそ感染対策チームはそこをしっかりやるわけですけど、結局環境感染学会は3日で去ってしまい、DMATの方ご立腹でした。「感染対策チームが逃げちゃった」と言っていた。感染対策チームがちゃんと常駐していてその方たちが意思の決定権、プランの施行が、権利が与えられてやるんですけど、結局専門家は五月雨式に時々入って抜けてっていう方がいるんですけど、何かを決めたくても厚労省の上の人に相談しないといけないし、しばしばそれは却下されるし、要するにプロの意見がちゃんと生かされないわけですね。なんといっても日本にCDC(疫病対策センター)がないことが一番の問題、最大の原因なんですけど、そういうことなんです。

村瀬キャスター:
確認になってしまいますけれども、グリーンゾーンでも防護服を着ているような場面があったのでしょうか。

岩田教授:
そうです。本部の中にPPを着てる人が立ったり座ったり歩いたりしてる。

村瀬キャスター:
防護服についた汚染源をグリーンゾーンに持ち込んでることになる?

岩田教授:
場合によってはそうなりますけど、そうじゃなくて着て歩いてること自体そもそも問題で、そこにウイルスついてなくても、自分がウイルスがついてるPPなのかついてないPPなのか区別つかないじゃないですか、ウイルス見えないから。そのものがおかしいということ。それはおかしいということが・・・一番シンプルな適切なやり方は、クルーズを全部レッドにすればよかったんです。本部を外のターミナルのビルにして、建物にしてそこでコマンドすればグリーンとレッドの区別は誰の目にも明らかになるので、「船に入るときはPP、出るときは脱ぐ」というシンプルにできたはずでこれだとみんな納得で守れたはずなんですけど。なんか本部にもの入れちゃったためにぐちゃぐちゃになって、その辺のトップの判断が甘かったと思いますね。

村瀬キャスター:
YouTube(に投稿した動画)の中で、患者の方とのすれ違う場面のことについて言及していましたが、どういうことが起きたのか。

岩田教授:
5時過ぎになって厚労省の方からお電話を頂いて、「あなたは出なさい」と言われたんですね。検疫所の方が迎えに来て船から下りるようにと言われて降りるように歩いてたんです。たまたま偶然、藤田医科大学に向かう感染のある方とPPを着たレッドレッドの人がそこを歩いてて、検疫所の人が何の気なしにするすると歩いていく。私もついていかざるをえなくてついていくんですが、検疫所の方が「あ、感染の方とすれ違ったね」って苦笑いする。カジュアルな感じで会話がなされてて、この辺もうありえない話なんですけど、しょっちゅう起きてるんでしょうね、軽く流してるということは。

村瀬キャスター:
中国とかアフリカの現場をご覧になってきた先生としてはありえないこと?

岩田教授:
まったくありえない。そもそもレッドゾーンみたいなところに官僚が入ること自体おかしいし、DPATという精神科の方とかがウイルス感染の可能性にあるところに来ちゃだめで。官僚の方はもっと後ろで感染と関係ないところでコマンドしていただくのが大事で。前線の現場に入っちゃダメだと思うんです。その辺の原則も守られていなかった。みんなでわーっと集まっていつもそうなんですけど、日本の感染対策の現場ってものすごいストレスフルで疲れてみんな疲労してるんですよ。あれがそもそもよくなくて、疲労たまると判断ミスの原因になるので。海外だと適宜休憩して、PP着て作業するときは1時間以上は絶対仕事しないとか決めてゆっくり休養もとって。イライラしたり誰かがなんか言うと「なんでおまえ文句言うんだ」っていうのが日本の現場です。もっともっと議論をして「もっともっと良くしましょう」とディスカッションをたくさんするのが国際舞台の現場なんですけど。基本的な考え方がずいぶん違うと思います。

村瀬キャスター:
職場環境という意味では、先生が話された現場の人なんかは「感染してしまうのかもしれない」ということもおっしゃっていて、根性論みたいな話もあったということなんですけれどもそのあたりご紹介頂いても良いですか。

岩田教授:
 DMATの方は自分が感染するかもしれない、あるいは感染するだろうとおっしゃる方もいて、それはこんな恐いところにいて感染対策のプロも帰っちゃったし、いつ感染するかわからない。 彼らはどうやったら感染しないでいられるかというノウハウも持ってないわけですから、それは目に見えないものは恐いですよね。ですから、あの・・・気の毒だなと。もうちょっと安心した形でお仕事ができればいいのになと思いました。

村瀬キャスター:
感染症対策というのは根性論ではいかないというところがあると思うのですが専門家としてはいかがですか?

岩田教授:
根性なんか全く必要ないです。感染対策はクールにやるだけで、根性を出すところはひとつもないです。だから頑張って「徹夜を重ねて」とかそういうのは正しい感染対策ではないです。

村瀬キャスター:
先生がアフリカの現場も行かれた、中国の現場も見られた、そういうところをご覧になった後に日本の現場をご覧になって比較されてどういう風に思われましたか。

岩田教授:
私はとにかく入って気を失うほどびっくりしたんですけど、とにかくCDCに代わるものがないっていうのが一番問題だし、データを継続して取っていないというのも問題だし、専門家が入ってきても意思決定権がないというのも問題だし、官僚が中にいて外の人たちがもの決めているし、その人達にお伺い立てないともの決められないというのも問題だし、とにかく国際的な基準でいうと非常識なことばかりでまさかここまでひどいとは思っていなかったです。もうちょっといくら日本にCDCがないからとはいえ、もうちょっとましなんじゃないかなと思っていたんですけれども、感染防御という観点からいうと全くダメでした。

村瀬キャスター:
思っていたよりも出来ていないということですね。

岩田教授:
 全然ダメでした。

村瀬キャスター:
そうするとアフリカのシエラレオネとかでの対応の方が日本よりも進んでいたということなのでしょうか。

岩田教授:
もちろん入っているのはWHOとかCDCとか・・・オペレーションは海外がやっているんですけど、リソースが少なくてテントとかで患者のケアをしなければならないとかなんですけどね。ただプリンシプル、原則がしっかりしていれば物としてはそんなたいしたことなくても、ちゃんとある程度対応できるわけです。物を集めても原則原理がしっかりしていないと、全部間違うわけですね。やっぱりその辺、あのー日本にCDCがないというのはほんとに痛いなと思います。

村瀬キャスター:
今日(19日)からですね、下船が始まっておりますけれども、その下船した後も基本的に行動は自由だという政府の対応ですけれどもこのことについては先生はどういう風にご覧になっていますか。

岩田教授:
不思議ですよね。他の国はみんな2週間隔離するって言ってて、日本の方だけ自由にして良いっていう。なぜそういうダブルスタンダードが生じるかっていう興味深いところです。厚労省は要はクルーズ内の二次感染は起きていないと判断しているらしいんですけど、その起きていないという根拠を示すデータはどこにもないんですね。今日感染症研究所があわてて出したんですけど、昨日まで全然出てなかったんです、そういうデータ。もっと出すべきだって言ってたんですけど、あわてて出しました。でもそれは二次感染が起きていないという根拠になるデータでは全然なかったんです。データがないのに「うまくいっているんだ」と。これ典型的な厚労省的メンタリティーで厚労省って普段A(というプラン)を出すと絶対「うまくいく」にすがるんですね。うまくいってないシナリオってつくらない。失敗するっていう可能性はゆるさない、認めない。だからデータを直視できない。失敗していてもやっぱりうまくいっているんだと。管官房長官まさに言ってましたよね。「予定通りいっている」「自分たちはちゃんとやっているんだ」と。「適切だ」ということを言うわけですけれども、何を根拠に適切なのかは基準がない。基準がないということは何をやっても適切って言っちゃえば良いっていうこと。

村瀬キャスター:
14日間の事実上の隔離生活が有効だったという科学的根拠はないというふうに先生はおっしゃる。

岩田教授:
そんなデータはどこにもないです。そうじゃない可能性はプロトコル違反が沢山あった以上は、当然あって、二次感染はむしろ起きてると考えた方が普通、ということは二次感染が感染した日が分からないということで、隔離期間がその感染した分からないXデーから14日と考えると、アメリカやカナダや韓国がやっているように、船から出た後で追加の隔離、2週間のほうがより医学的には妥当性が高い判断だと思う。それをあえてしなかった、対して根拠もないのにしなかった、っていうのは政治的な判断ということになります。医学の判断を政治的に判断するっていうのは常に間違いで、ここにCDCがないのは問題なんですけど、要するに科学的判断ではなく政治的な判断政治的な決着にする。手打ちにするわけですね。ですので、彼らの安全とか感染リスクは妥当に評価されそれに対して、理性的な対応ができているとは言いがたい、おそらく諸外国はそうだと思わない。

村瀬キャスター:
クルーズ船の中は全てレッドゾーンだと言う風に考えるべきであって、レッドゾーンから出てきてから14日が必要だっていう。

岩田教授:
そうとは限らないんです。当初の隔離がきちっとできて二次感染も起きてないっていうデータもちゃんと集めて、二次感染も起きてませんよとっていうことをきちんと証明、示していれば、明日隔離解除でも良かった。でもそれはしなかった、データを集める、解析せずにうまくいっているプランAの物語になってしまったために、他のシナリオそのものが存在する可能性そのものを無視してしまった。

村瀬キャスター:
先ほどおっしゃった感染研(国立感染研究所)の分析、今日発表されているんですけど、そこのなかには乗員の多く、乗客の一部は隔離が始まった5日以降に感染したと分析している。

岩田教授:
そうですか。

村瀬キャスター:
乗客の大部分は5日以前であると、その明らかな証拠があると。ただし乗員の多く、あるいは乗客の一部は5日以降に感染があったと分析していると認めている。

岩田教授:
その可能性はあると思いますけど、そうだと断言して良いのか分からない。少なくともあれってわずか150人くらいの分析なので全部の感染者のほんの一部しかみていない、だからあれで何かを断言すると結論づけることは絶対できないと思います。

村瀬キャスター:
データもそろっていないということですか。

岩田教授:
そうです、データ取ってないと思います。データの発症日というのを見るんですけど、最初の150人のデータはあったんですね、ところが公表しなかった。本当はすぐ公表すべきだったんですけど。でもまあ今日やっと公表してくれた。他にも500人以上いるんだから他の人の発症日も全部プロットすればよかったんです、本来ならば。1分か2分でできますのでそれができないってことはデータそのものが無いと考えることが自然と言う風に推察しています。

村瀬キャスター:
そうすると判断する材料さえ、データをとっていなかったのでしょうか。

岩田教授:
そうです。二次感染があったかなかったかについて、判断しにくい。

村瀬キャスター:
隔離が始まって5日以降に感染があったのかなかったのかっていうのは重要な点だと思うんですけれども。

岩田教授:
とても重要です。

村瀬キャスター:
政治的にも科学的にも重要だと思うんですけれども。

岩田教授:
そうですね。

村瀬キャスター:
判断できないのは大きな問題だと思うんですが。

岩田教授:
そうですが、もし本当に判断できないなら、普通は悪い方にかけるべき、感染があったと仮説に基づいて隔離したほうが、より安全策で感染がなかったと楽観的な方に進む根拠には乏しい。普通間違えるなら、より結果がでる方に間違える方が我々の根拠になりますよね。

村瀬キャスター:
常に安全サイドに判断をしていく。

岩田教授:
少なくてもリスクが大きい場合は。我々はとにかく今コロナウイルスを広めないというのを目標しています。これ日本全国で・・・これ以上患者が新しく出ないようにするっていうのを現段階の目標にしていてここは一歩も揺らいでいません。国はいろんなフェーズを変えると言ってますけど、いま感染症を・・・の目標そのものは全然ゆらいでなくて、制圧を目標にすべき。もう広がってもいいやという事になってないし、世界中中国の武漢が広がってもいいやとは言ってない。なので押さえ込む努力は必要で、従ってクルーズでの二次感染、三次感染が起きないようにするために、最善を尽くすのは当然だと思います。

村瀬キャスター:
今日下船になっていますけれども、検体検査をしたのがなかには1週間も前の人がいることを取材の中で知りまして、非常に驚いたというかこれでいいのかと。その点はいかがでしょうか。

岩田教授:
もちろんよくないです。よくないですけど、そもそも下船の時の検査は不要なんで。やらなきゃいい。検査は凄く無駄なんですよ、検査は人の、検査をする人がわざわざレッドゾーンにいかないといけない、そこでぐりぐりして、それでウィルスがまき散らさせるリスクを冒して、いろいろ怖いんです。ですから検査をするならすごく正しい根拠でやらないといけない。症状のない人の隔離期間がすぎて、検査が陰性でも感染してないという保証にならない。検査後で陽性になることがあるので。根拠にならない検査をなぜするのかということになる。だから、それはすべきではない検査。これ陰性確認の検査をしてはいけない、インフルエンザのときにさんざん学んだことで、インフルエンザの対策を見るが、臨床的に治ったら、治りましたで、インフルエンザが治りましたという証明の検査はない。同様にコロナについても治ったという臨床的に判断すべきで、治ったと証明する必要はない、ましてやかかってないという証明は絶対にできない。できっこない、科学的にできっこないことを無理にやってしまう。これ厚労省の方にも申しあげたんですけど、やることになってるからいう、いわゆる官僚的な判断です。科学的に間違っていても、やると決めた以上はやるということになるんです。つまり、プランAにすがり、プランが間違っていることを認めず、そしてみんなが感染のリスクを高めて、お金も手間もかかっているのに、ずっと続けてしまう。典型的な官僚的な態度ですね。

村瀬キャスター:
限られたリソースの向け方としては誤っているということなんでしょうか?

岩田教授:
科学的にものを考えられないということですね。

村瀬キャスター:
感染の拡大を防いでいく方針には変わりはないと言っていたが、クルーズ船の外でも感染が出てきているが、日本政府の対策は十分だとお考えですか?

岩田教授:
十分かどうかはわかりませんが、クルーズ船の前までは私は日本の感染対策は割とうまくいっていると思っていた。おおむねうまくいっていると思います。ですので・・・細かい間違いはあります。例えばさっき言ったようなチャーター便の飛行機の方の陰性確認の検査とか必要ないんですけど。そういっ
たちょっと細かいエラーはあるんですけど、まあでも全体的にはうまくいっていました。私がすごくやばいなと思ったのはクルーズ船で、あそこをみてやばいと思ったんです。だからクルーズ船は、これはプロがみないとやばいなと思った。実際行ってみたら本当にやばかったというか。

村瀬キャスター:
日本版のCDCの必要性というところ。今回先生が毎回おっしゃっていることだと思うんですけど、さらに実感されたところだと思うんですけど・・・今非常時に改めてそのことが問われていると思うがその点はいかがでしょうか?

岩田教授:
そうです。すごく思います。いつもずっと思ってるんですけど、さらに今回CDCがいないとダメなんだなとわかりました。冷静に考えればCDC作るべきです。あとは厚労省がシャドーなアサインメントを捨てて、もっと深いところのプライドで、日本をよりよくするにはどうしたらいいかというところで、気概を示していただく。自分たちが牽引するのはけしからんという幼稚園児のような論理を出すのではなくて、もっと大人な態度をとってくれれば、必ずCDCできると思うんですけどね。

村瀬キャスター:
専門家が政策決定に関われるようにする、国際的な基準に日本が追いついていくべきだというところなんでしょうか。

岩田教授:
少なくとも感染症の対策のオペレーションは専門家に任せるべきです。あの感染対策のオペレーションを官僚がやるというのは非常にレベルが低い。それはもう時代遅れです。

村瀬キャスター:
国際的にはそういうことにはなっていないということですか。

岩田教授:
全然通用しないですね。今・・・SARSの時も2009年の新型インフルの時も日本は感染対策でうまくいったりうまくいかなかったりしているんですけれども、だれも日本の事は見てなかったんです。世界中みんな自分の国のことで精一杯でしたから。でも今は違うんです。今は中国がすごくCOVIDにやられてそして今少しずつ患者さんが減りそうになって、中国頑張れるかっていう時。他のアメリカとかヨーロッパとかタイとかシンガポールとかで患者さんが出ているんだけど、一生懸命それを押さえ込んでいる。全然押さえ込めてないのがクルーズ船。世界中がそれに注目している。しかもいろんな国の人がそこに乗客として乗っている。日本は大丈夫なのか。日本の感染
対策はちゃんとできているのか世界中が注目しています。そのときに厚労省の絶対うまくいっているはずだというプランAしかない、あるいはデータはないんだけど適切にやっています、とか。根拠はないですけど正しいですよといういつもの理屈が日本の記者会見とかでは通用しても、海外の人は納
得理解してくれないですよ。今日も私あちこちの国のメディアの方からインタビュー受けましたけれどテレビとか新聞とか。彼らは絶対に納得しない
です、そんな論理は。それはその厚労省の内輪の論理であって、例えばその岩田が入ってDMATの仕事をまずしなさい、とか。そういう不可解なミッションというのは海外では絶対に起きないわけですね。ただのハラスメントですから、それ。出てけというのはもっとハラスメントですけれども。そういうことはしない。だけどそういうことがまかり通っているのは日本で、日本的情緒の社会ではそういうもんだってみんなあきらめている。だから海外は許してくれないです。日本が、今中国がすごく頑張って、大国としての意地をみせようと頑張っているわけです。うまくいっているところとうまくいっていないところがあると思うんですが、日本は先進国の一つとしてちゃんと世界各国に対して、日本はちゃんとやっているぞというところを出し見せるかどうか。日本の理屈で言えば出来ているって言える、適切にやっていますって言い続ければやってるってことになるんですけれども、海外のメディアはそれじゃあ許してくれないです。根拠はあるのかと、何を根拠にそう言っているんだと聞いてきますよ。エビデンスを示せと言ってきますよ。それは日本の今までの昔の論理のままでそこを乗り越えられるかっていうのは注目です。

村瀬キャスター:

先生最後にですね、今の社会、忖度という言葉が度々使われるような社会でですね、このような発信をされること自体は大変勇気のいったことだと思うんですがなぜこのような発信をされる決意をされたのでしょうか。

岩田教授:
一番素晴らしかったのはうちの奥さんですよね。うちの妻も感染症の専門家なんですけれどもね。神戸でやっているんですけれども、この話したとき「絶対それは表に出すべきだ」って言って。そんなけしからん話あるかと言ってました。いつもいざというときはですね、・・・クルーズ船に行くべきだって言ってくれたのも彼女で。ほんとに行けるのかなって言ってたんですけれども、どんな手段をつかってでも「クルーズ船に行って仕事しなきゃだめだ」って言ったのも彼女で。こんなことになって、もう出てけとかって説明も何もなく言われてそんな理不尽な話があるかって。ちゃんとすっぱ抜いたれって言われてのは・・・。だからいろんな支えがあって助かっています。 

村瀬キャスター:
専門家としての矜持もあるとおもいますね、そこは。

岩田教授:
究極的には日本を良くしたいっていうのがあるんです。だから決して厚労省をたたきたいとかですね、そういうつまらないことを考えているわけではない。もちろん怒りの感情はありますよ。非常にむかつきましたけど昨日は。だけどこのまま三流的な感染対策をしていて、それをなあなあにして流してなかったことにするっていうのは絶対に許されないですから。これをチャンスにしてちゃんと日本も先進国としての感染対策をすべきだと思います。幸か不幸か厚労省も今日はちゃんとデータを出してくれましたしゾーニングも変えてくれたそうなので、弱冠苦い・・・があったかもしれないですけど何か変わる根拠になってくれるかなと思ってます。

村瀬キャスター:
大変失礼ですが厚労省に弓を引いたような形になっていると思うんですけれども・・・先生の社会的な立場とかに危険を感じるようなこと、プレッシャーを感じるような事って今ないですか。

岩田教授:
まぁ・・・あるのかもしれないです。ただ、要は厚労省は私にハラスメントで嫌がらせをすると、泣き寝入りはしないよということはたぶん学んだと思います。彼らがもっとハラスメントをしてくるガッツがあるかどうか知りません。僕はもっと厚労省の人たちは善良な人たちだと思っています。そんなに邪悪な人たちはごく一部の、今回誰がやったかって名前も出してこない非常に卑怯な人なんですけど。そういうのは一人か二人。ほとんどの人は善良でまじめでちゃんとやろうとしている。ただうまくいっていなかった。だから厚労省にはなんの他意もないしちゃんとしてくれることは心から願っています。まぁ・・・奥さんが食べさせてくれますので私がだめでもなんとでもなります。