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SUPER GT 第7戦 オートポリス振り返り

職業柄夏休みが9月にしかとれない千葉県民なので、現地観戦ができるのは日帰りで戻れるモビリティリゾートもてぎ或いは泊まりでスポーツランドSUGOラウンドとなるのだが、1年越しのSUGOは実に面白くなかった笑

マルチメイクのシリーズとはいえ、雨が降ったのでミシュランタイヤを履いていれば勝てるというレースは退屈そのもので、劣悪な通信環境と共にしんどい思い出となった…

ということで、振り返りも書いていなかったのだが、前戦のオートポリスはなかなか気になるところも多かったので久しぶりに書いてみようとおもう。

ホンダ・日産のスペック2エンジンのクオリティは?そして冬のトヨタエンジン最強説。

スポーツランドSUGOで投入されたホンダ、日産のスペック2エンジン。
ウエット路面ではその実力をうかがい知る事は出来なかったが、オートポリスでは特にホンダのエンジンに大幅なアップデートが見られた。
シーズン序盤はトヨタ・日産に対して、ストレート区間では6km/h程度のビハインドがあったもののオートポリスでその差はなくなっていた。

更に、燃費の面でも改善があったようで、最も早くピットインしたのは22周目のSTANLEY、Modulo、ENEOS、au TOM'S。
その翌周にAstemo、ZENT CERUMO、MOTUL NISMO、Red Bull 無限。
24周目にCALSONIC、CRAFTSPORTS。そこからARTA、WedsSportと続いて、戦略的にピットを遅らせたDENSO SARDとピットレーンスタートのため、入れないKeePer TOM'Sを除くとトップのリアライズが入ったのは実に27周目であった。

現在のSUPER GTシリーズではピットに1周でも早く入れたいはずだ。仮にセーフティーカーが導入されれば、F1などと違ってピットレーンがクローズされるからである。

勿論引っ張ってオーバーカットを狙う戦略もあるが、タイヤへの攻撃性が鬼のオートポリスでそれはまず考えにくい。終わったタイヤで引っ張っても新品タイヤに逆転されて抜けないコースでブロックされて終わるからだ。

このオートポリスラウンドを見ると3社の中で日産が燃費の上では不利なのではないかと予想される。
MOTUL NISMOとリアライズの4周の差は近藤監督の戦略もあるとは思うが先頭を走る車と集団の中でスリップを使えた車の差もあるはずだ。
この僅かではあるが燃費の差は同じく抜けないモビリティリゾートもてぎでも効いてくると思われる。

一方で燃費とともにエンジンのもう一つの性能差であるパワーにおいては昔から冬のトヨタというイメージがある。

当たり前の話ではあるが、冬場になれば吸気温度は自然と下がる。そうすると、それに耐えうる強度の骨格が有ることを前提として、燃焼圧を上げてパワーを引き出すことができる…がこれはどうだろうか。最近のトヨタはZENT CERUMOを中心にエンジントラブルでリタイアすることも少なく無い。
嘗てとはエンジンの目指す方向性が違うのかもしれない。
それに、日産・ホンダより一戦分多くマイレージを消費していることも事実だ。

ただし、ポールポジションが取れなかった時点でシーズンの終了が確定するトヨタ陣営は壊れたらその時というカリッカリのチューニングで来る可能性も十分にある。
季節外れの大型台風は富士から吹くのかもしれない。


Astemo奇跡の復活劇と

千両役者のベテランドライバーたち

フリー走行の最後で松下信治のクラッシュで予選参加は絶望的と思われたAstemoだったが、メカニック決死のリカバリーでなんとか予選に参加することができた。

「これくらい絶対に直してやるから。走りに集中して、何も気にせずに待ってくれ」

Astemoのメカニックが松下にかけた言葉だ。
実際見事に修復はなされたのだが、フロントカウルやインタークーラー等は大きく破損。
最低限の修理のみで今シーズンの大一番に挑むことになった。

アライメントもとれていない状態だったが、FIA-F2時代から松下信治はピンチ、そして誰かのために燃えるタイプだ。

炎のアタックでQ1を突破。
アライメントを計測して挑んだQ2では塚越広大が4番グリッドを獲得。レースでは優勝することになる。

SUPER GTではクラッシュが発生したときに備えて各メーカーがパーツトラックを用意している。
ただし全てのパーツが有るわけではないようで、Astemoもボンネット内部の一部のパーツ、特に補強パーツが足りないまま予選を走ったようだ。

ちなみにHRCが決勝レースまでに不足分を空輸でオートポリスへ運んだようで、決勝ではマシンのポテンシャルを十分に発揮し、優勝と相成った。

ドライバー、メカニックはもとより、HRCまでもが一丸となって、最後の最後で17号車がシリーズタイトルの有力候補へ名乗りを上げた。

優勝したAstemoも素晴らしかったが、それに負けず劣らずに輝いたのがSTANLEYの山本尚貴とDENSO SARDの関口雄飛だ。

STANLEYの山本尚貴は厳しいウエイトから不利な戦いかと思われたが、昨年のもてぎでWedsSportの宮田莉朋を抑えたときと同じようにこのオートポリスでもリアライズを完封してみせた。セクター3ではフロントタイヤへの攻撃性が非常に高く、山本が降りた100号車のタイヤはズルズルであったがそれでもなお抑えきるのがホンダのエースたる所以か。

今シーズンは我慢の日々だったチームクニミツが2005年、高橋国光引退後の初優勝となったモビリティリゾートもてぎ(当時はツインリンクもてぎ)で奇跡の逆転タイトルを戴冠し餞とするのか注目したい。

もう一人語りたいのが関口雄飛。
正直な所、日産ファン、特にCRAFTSPORTSのファンは顔も見たくないのではないだろうか。

仮に数ポイントの差でCRAFTSPORTSがタイトルを獲得するに及ばなかった場合、その原因はオートポリスでの関口の頑張りということになるだろう。

明らかにコーナーでは勝負にならなかったが、ストレートの速さを活かして3号車を封じ込めた。

一車身は空けない、でも完全には蓋をしない。
わざと遅らせたスロットルオン。
ターン1では絶対に負けないブレーキング。

勝てない事、即ち負けではない。
関口雄飛のドライビングにチャンピオンの意地を見た。

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