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昨季までの正捕手がファームに…読売ジャイアンツの正捕手論争の着地点について考える

今回は今まさにジャイアンツファン、ひいてはプロ野球ファン全体をも巻き込んでいる話題、「ジャイアンツ正捕手論争」について書いていきます。

この話題について簡単に説明すると、今季から阿部慎之助監督に変わった読売ジャイアンツにおいて、2020年から正捕手を務めていた大城卓三選手が控えに回ることが増加し、ついにはファームに落ちてしまったというもの。

話をややこしくしているのが、今季、大城選手が順調に1軍にいたならば取得するとされているFA権。ネットでは「FA権を取得させない為に2軍に幽閉するつもりなのではないか」などというとんでもない論調まで出てきています。さすがにそれはないと思いますが、大城選手について不誠実な対応を続けたならばFAで出て行かれてしまうと考えるファンの方は多いようです。

果たして読売ジャイアンツの正捕手論争、もっとぶっちゃけて言ってしまえば大城選手を球団はどう扱おうとしているのかということについて、今回は書いていきます。素人の予想ではありますが読んでみてください。


阿部監督は大城選手を正捕手に考えていたが…

まず押さえておきたいのが、阿部監督はそもそもシーズン開幕前の構想で、大城選手を正捕手にしたいと考えていたということ。これは紛れもない事実であり、オープン戦での起用方、そして開幕してからの数試合のスターティングメンバ―を見ても間違いないでしょう。

ではそれが変わったのはいつからなのか。転機となったのは4月12日に東京ドームで行われた広島カープ戦です。この試合は結果として9‐4でジャイアンツが勝利していますが、中盤までは完全にカープのペース。5回までにカープ打線に9安打を許し、ホームランを含めて4失点もしてしまいました。この日の先発投手はエースの戸郷翔征選手であり、相手の先発九里亜蓮選手ということで投手戦が予想された中でのこの展開。ここで阿部監督は6回から戸郷選手を泉圭輔選手に、大城選手を岸田行倫選手にバッテリーを丸ごと交代する思い切った策に出ます。これがバッチリハマり、6回以降、投手を代えながらカープ打線にヒットすら許さずに抑えきり、逆にジャイアンツ打線は6回裏の攻撃で一挙7点を挙げ、大逆転勝利を収めています。この日を境に大城選手がマスクを被る機会は激減しており、この試合が阿部監督の印象に強く残っていると考えられます。

当初は大城選手の故障なども疑われましたが、常にベンチには入っており、代打等での出場もありました。その為、やはり守備面で阿部監督に不満を持たれていることは間違いないでしょう。さらに自慢の打撃も湿りがちで、ここまでの打率は2割にも満たず、本塁打も0。出場機会が少ないこともありますが、少し寂しい数字です。そしてそのことを受けて5月8日に無期限でのファーム調整が決定しました。

対してライバルは絶好調

昨季まで正捕手を務めた選手が2軍に行ったとなると、チームとして大打撃になりそうですが、今季のジャイアンツに関してはそこまでのダメージは受けていません。むしろ、この記事を書いている段階で首位に立っており、好調とも言えるほどです。その理由は代わりとなる選手たちが素晴らしい活躍を見せているからに他なりません。

まず特筆すべきが大城選手の前に正捕手を務めていた小林誠司選手。近年はほとんど第3捕手のような扱いで、トレード説や引退説がまことしやかに囁かれるほどでしたが、今季は昔からコンビを組んでいた菅野智之選手との“スガコバ”が復活。初めはその菅野選手専属のキャッチャーとしてマスクを被っていましたが、安定している守備での立ち振る舞いや、打率は低いながらも印象的な場面でタイムリーやホームランを見せる打撃など、“良かった時の小林選手”を思わせる活躍で、一気に正捕手争いのトップに名乗り出ます。最近は最も多くマスクを被っており、数年ぶりのレギュラーとなっている状態です。

そしてもう1人、岸田選手も好調です。先述したカープ戦でもそうですが、今季はマスクを被った試合でもバッチリ投手を引っぱっていく姿が見られ、昨季まで守備面に不安があったのが嘘のような活躍です。持ち前の打撃でも5月14日の横浜ベイスターズ戦で決勝2ランを放つなど、規定未到達ながら3割を大きく超える数字を残しており、小林選手とはまた違った魅力を見せています。これまで第2捕手に甘んじていましたが、一気に正捕手奪取も見えてきている状態です。

このように、昨季までの正捕手不在という状況でありながら、チームが好調を維持しているのは他の選手がそれを補って余りある活躍を見せているから。ここに今季のジャイアンツの強さの理由がある気がします。

投手陣・野手陣の頑張りも大きい

ここまで捕手にスポットを当てて書いてきましたが、野球は捕手だけで大きな違いを作れるスポーツではありません。リードについて言及されることもありますが、個人的には結果論であることが多い気がします。

何よりも重要なのは投手自身の能力で、今季のジャイアンツはここも強みとなっています。昨季までは主にリリーフにおいて防御率が12球団の中で比較しても悪く、リードしていても終盤に勝ち越される、または追いつけないほどではないビハインドでも後続の投手が打たれてどうしようもないほど点差が広がるなどのパターンが多く見られました。それが今季はドラフト1位の西舘勇陽選手に、昨季から続けて活躍するバルドナード選手や船迫大雅選手、さらにトレードで加入した泉選手等、安定したピッチングを見せるリリーフ選手が数多くブルペンにおり、さらにファームにもまだまだ菊地大稀選手ら有望株が控えているなど、かなりの厚みを誇っています。ここに故障離脱中の大勢選手や中川皓太選手が復帰してくれば、その厚みはさらに増すこととなり、チームの安定感を向上させてくれることでしょう。

そして鉄壁の守備を誇る野手陣も見逃せません。内野のレギュラーである岡本和真選手、吉川尚輝選手、門脇誠選手、坂本勇人選手は全員が高い守備能力を持っており、他球団と比べても相当なアドバンテージとなっています。さらに外野も若手を多く起用した結果守備範囲がかなり広まっており、守備面だけで言うと近年でもトップクラスといっていいほど。この点も正捕手論争を考える上では大きなポイントであり、守備面でのアドバンテージを踏まえたうえで捕手それぞれの能力を見るべきでしょう。

それぞれの良さを書き出してみる

それではここからは、大城選手、小林選手、岸田選手の3人に絞り、それぞれの良さを見ていきましょう。

まずは大城選手。大城選手の良さは何といっても打撃面。長打を打つ能力は3人の中でも図抜けており、それでいてコンパクトな打撃も出来ます。守備面では強肩を誇り、昨季は三振ゲッツーを取る場面も非常に多く見られました。正捕手論になりたての頃は体力不足を指摘されることもありましたが、現在はそれを払拭しており、よりシーズンを通して活躍できる選手となっています。

次に小林選手。小林選手は一番のベテランで、それだけに細かなところまでよく見えています。守備面での立ち振る舞いは投手に安心感を与えるもので、さすがの貫禄です。そして普段の打撃はあまりよろしくないですが、ここぞという場面で見せる勝負強い打撃も魅力。今季は既に決勝点となるタイムリーやホームランを複数回打っています。守備型の選手でありながらパスボールが多い点は気になりますが、優秀な選手と言えるでしょう。

そして最後に岸田選手。岸田選手の魅力は打席での集中力。常に逆方向を意識したコンパクトで力強い打撃は素晴らしく、捕手だけでなく代打としての適性もあります。今季は守備面でも成長しており、実績では劣りながらも実力では他の2人に負けないものを持っています。

こうして書き出してみると、全員がハッキリとした特徴を持っており、監督としては誰を起用するか、非常に贅沢な悩みになるほど高いレベルにあると言えます。だからこそどのように使うか、阿部監督の用兵に注目が集まるわけですね。投手・守備がいい分、ある程度失点は減らしていけるはずなので、打撃面を重視するのも手ですが果たして…。

阿部監督は決して贔屓起用はしていない

ここで声を大にして言いたいのが、決して阿部監督は贔屓起用をしていないということ。ネットでは「小林選手を贔屓起用している」などという言葉が見られますが、それは前提が間違っています。小林選手を起用したいから使っているのではなく、小林選手が攻守両面で活躍しているからこそ起用しているのです。守備では失点を抑えながら、打撃では印象的な場面で決勝打を放つ。何よりチームを勝利に導いているのですから、現時点では外す理由がありません。それは岸田選手も同様です。だからこそ、今は2人を中心に回し、大城選手をファームで調整させる余裕もあるのです。

後々は大城選手も起用されるはず

元々大城選手を中心に起用したいという阿部監督の言葉にもある通り、大城選手もこのままでは終わりません。小林選手と岸田選手が頑張っている内にコンディションを戻し、万全の状態で1軍に上がってくるはずです。きっと、また活躍するときは来るはず。

ただし、起用は大城選手主体の考え方とはならないと予想します。現時点の小林・岸田体制で十二分にうまくいっているので、大城選手のコンディション調整が終わったとしてもすぐに正捕手返り咲きとはいきません。他2人が疲労や調子のバイオリズムが悪くなった時、初めて大城選手の出番がやってくるでしょう。これこそが健全な競争であり、昨季までの出場数は関係なく、3人が皆フラットな立ち位置で争っているのです。理想的な状態と言えるのではないでしょうか。

阿部監督の手腕には度々疑問の声を聴きますが、個人的にはまだ学んでいく最中のシーズン序盤でありながら、理想と現実の妥協点を見つけてうまく采配していると思います。いきなり優勝という結果を残せるかは分かりませんが、ジャイアンツの未来を任せるにふさわしい器であると考えます。

最後に

今回は、ジャイアンツの正捕手論争について書いてきました。ジャイアンツという注目度の高い球団での出来事ということもあり、様々な場所で論争が交わされていますが、個人的には極めて健全な競争が行われていると見ています。誰かが贔屓で優先されたりということは無く、ただ試合でのパフォーマンスのみで判断される。選手としてもやりがいを感じるものなのではないでしょうか。

個人的には最終的には大城・小林・岸田の3人体制で、シーズン後半には大城選手、岸田選手を中心に回していき、小林選手は菅野選手専任に戻ると予想しますが、果たしてどうなるでしょうか。

フレッシュな新監督の下で、モチベーション高く競争を続ける選手たち。その行方をこれからも見守っていきたいと思います。

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