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Vtuber事務所のアイドル化は既定路線か―ハコネクトを例に将来を展望する

SHIBUYA TSUTAYAとのコラボ企画、新規メンバーとなる24年組の発表など、2024年も半分が過ぎようとしている中、話題に事欠かないVtuber事務所ハコネクト。今回はそんなハコネクトがこれからどう変化していくかというのをバーチャル界全体の傾向を織り交ぜながら展望していこうと思います。ぜひ読んでみてください。


Vtuber事務所は最終的にアイドル化を目指すように

今も尚、衰える気配もないVtuber市場。もちろん、生まれていく数と同じくらい消えていく命もありますが、今こうしている間にも様々なVtuber事務所が誕生しています。最近はただデビューするだけでなく何かしらの企画を設けて始まるVtuber事務所も増えており、例えばXと絡めてリポストによって抽選で賞品をプレゼントしたり、何かしらの目標を定めてそれによってデビューが決定したり等、趣向を凝らした手法が見られます。そのどれもがこのバーチャル界を生き抜くためのやり方であり、少しでも気を引くためのものであると言えるでしょう。

そしてそうやって生まれてきたVtuber事務所は、メンバーを徐々に増やしていき、それに比例してファンの数も増えていきます。そこで出てくるのが“最終的な到達点をどうするのか”という問題です。

Vtuber事務所として何かしらのテーマがあるところならばよいのですが、そうでない場合はメンバーを増やして、ファンの数を増やしたその先に果たして何を見据えるのかとなったときに、具体的なものがないパターンも多く見られます。そしてそのようなVtuber事務所が行きつく先が“グループ単独でのライブ開催”になることが多いように思います。

元々、Vtuberリスナーとアイドルオタクは関連性が深く、同じ毛色を持っていると言えます。配信者側にもかつて、または現在進行形でアイドルオタクをやっているという方も多くおり、そのアイドルオタクとしての経験を活動に生かしているパターンもあります。そうしてVtuberとアイドルは地続きに捉えられるようになり、目指す道として定められることが多いのですね。また、Vtuber事務所最大手であるホロライブがその形で成功しているのも大きな要因の1つと言えるでしょう。

今回、例として紹介するハコネクトも、近年急速に音楽関連のイベントに力を入れ始め、近々事務所初の公式ユニットも結成されます。その過程を追いながら、Vtuber事務所の動きを見ていきましょう。

バラエティ事務所からアイドル事務所へ

私がハコネクトを知ったのは、3期生がデビューしておよそ半年が経過した頃と記憶しています。その頃のハコネクトはどちらかと言うとバラエティ色が強く、また活動のスタイルや配信内容についても、流行を追うというよりは自分たちがやりたいことをやるといった印象が強かったです。これは今でも続いていることですが、メンバーそれぞれがやりたいことを発信し、それを実現するというスタイルは面白い企画を数々生み出し、ハコネクト独自の魅力を作り上げることに成功したと思います。

そんなハコネクトの転機は恐らく4期生が加入したこと。それまでも音楽センスに優れたメンバーはいましたが、4期生の加入によってよりその傾向が強まります。アイドル的なムーブがうまいメンバー、楽器を演奏でき、音楽に特化した能力を持つメンバー、様々な声を使い分けるメンバー等、個性的なメンバーが増え、そこに既存のメンバーが持つ音楽的な能力が組み合わさることで、一気にそちらの方面への活動が増えました。ライブイベントへの出演や外部との歌枠リレーでの共演など、昨年、2023年から今年にかけて、音楽関連でハコネクトの名前を知ったという方も増えている印象です。本来のバラエティタレント的なイメージも残しつつ、活躍の場を広げることが出来たのは成功と言っていいでしょう。

公式ユニットをロールモデルに“何が出来るか”を模索していく

そんなハコネクトが近々新たな試みとして挑戦するのが公式ユニットの結成。これはSHIBUYA TSUTAYAとのコラボ企画によるもので、リスナーからの投票で選ばれた6組のコンビの内、お店で行われる決選投票を勝ち抜いた1組のみがユニットとしてデビューすることとなります。これまでのハコネクトはあまり殺伐とした企画は無かった印象ですが、ここに来てこれまで例にない、競争を煽るような企画を持ち出してきました。といっても、メンバー同士がギスギスすることはなく、それぞれが選ばれたコンビでの配信を増やしてアピールしたり等、健全な競争を行っています。ただ、少なからず精神的な疲弊はメンバー、リスナー両方にあるようなので、今後同じような企画があるかは分かりません。

話を本題に戻しますと、そうして最終的に選ばれたユニットには、キービジュアルやオリジナル曲の作成、はたまた更に活動の幅を広げるためのクラウドファンディングなども予定されているそうです。個人的にはここに注目しています。

これまで音楽面でのノウハウが無かったハコネクトにとって、今回のユニット企画は果たしてどんな活動が出来るのかを試しながら運用していく、所謂ロールモデル的な役割になるのではないかと思います。きっと、今後もユニットは増えていくと予想されますが、どのようなロードマップを描いていくかは初のユニットが何が出来るか、どれだけの利益を生み出せるかにかかってきそう。選ばれたユニットはそれぞれ思い描く活動があるようですが、運営との間で摺り合わせを行い、よりよい方針を決めていくでしょう。

個人的にぜひとも見たいのが3D化。多くのVtuberが目標として定めているものであり、活動の幅もグッと広がるため、この機会にぜひ実装してほしい。いきなり全メンバーとなると難しいものの、今回のユニット企画の一環としてまずは1組、2人だけならばコストも抑えられると思います。もしかしたらクラウドファンディングもこういったものを想定している可能性も…!

メンバーによって3Dがある、ないという格差が生まれてしまうと、様々な問題も発生しそうですが、私としては転換期にあると言えるハコネクトにとって必要なことなのかなと思います。そうなった場合、今後、どんどん3D化するメンバーは増えていくと思うので、今回ユニットとして選ばれたメンバー以外のファンはしばらく我慢する必要があるかもしれません。

3Dの良さはライブだけでなく日常の配信でも

3Dを実装して何をするかということでまず思い浮かぶのが、やはりライブでしょう。2Dでは見せられない動きや表現など、明らかに違いが生まれる部分だと思います。これまで出演してきたようなライブイベントでもさらに映えるパフォーマンスが期待できそうです。

そしてもう1つ見たいのが、日常での3D配信。さすがに全配信を3Dで行うのは無理がありますが、例えば月に1回事務所からの配信で3Dのメンバーが出演するバラエティ番組的な配信を行うなど面白そうです。3Dは何もライブのみで使えるものでなく、体を動かすような配信なら2Dよりもさらに魅力的になるはず。2Dの場合は例えば3人が画面に映っていて、その内2人が話している場合、どうしても2人に注目してしまいますが、3Dだと3人目の動きも見られるのでそれが楽しい。カメラに何かをアピールしたり、逆に退屈そうにしていたりなど、動きだけでメンバーの個性が出て面白さが倍増します。画面の情報量は確実に増して、さらに楽しい配信が出来そうです。

まだ誰も3D化していない現在ならば夢物語ですが、近い将来3D化するメンバーが増えて来たらこういった配信も定期的に見たいですね。

ハコネクトの歩みは他のVtuber事務所も注目!?

ハコネクトは今や25人のメンバーが所属するバーチャル界でもかなりの大所帯。それでいて、人数を持て余すことなく、全員に活躍の機会があるのは大変素晴らしいです。そしてユニット企画を立ち上げて、さらに音楽的な方面へと活躍の幅を広げていこうとしているその様は、他のVtuber事務所としても参考になることが多そう。果たして、どのように運営していくのか、注目したいですね。

先程ちらっと書いた通り、今はハコネクトにとって転換期と言える時期にあるため、どうしても前に進む足並みはみんな同じとはいかないかもしれません。その時にリスナーがそれに対して不満を述べてしまうと、足取りが鈍化してしまう可能性もあるので、ぜひとも温かく見守っていきたいところです。Vtuber事務所の運営はどうしても表に出せないことが多く、口を閉ざしがちなので、リスナーとの齟齬は多くなりますが、信じて待つことも重要かもしれません。

最後に

今回は、ハコネクトを例にしてVtuber事務所の将来を展望してきました。やはり、3D化というのは1つの大きな出来事であり、これがあるかないかでライブイベントでの映えも変わってきます。アイドル化を目指すVtuber事務所にとって重要な要素であることは間違いないでしょう。

ハコネクトメンバーの3D化に関しては、あくまで私の予想であり、そこまでの想定はされていないかもしれませんが、メンバーにとっても悲願であるため、ぜひとも叶えてあげてほしい。音楽関連だけでなく、ハコネクトらしいバラエティの面でも有効に活用できると思うので、実装してほしいですね。

転換期にあるハコネクトがこれからどういった動きを見せるのか、バーチャル界を追う者としても要注目です。しっかりと注視していきたいです。

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