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2020年8月の音楽(とか)のこと

自宅でないところに宿泊するというのは、それだけで非日常を味わえる素晴らしいアクティビティだと思う。このご時勢では特にそのありがたみも増しているわけで、今月は2度のそれで気分を保ってきたと言えるかもしれない。

まず最初はお盆の中ごろに、徒歩15分くらいの最寄りの東横インに一人で一泊しました。実は過去にも一回やっているこの奇行をこれだけカジュアルに繰り出せるのは無料宿泊権5泊分をもらったというのが理由です。これで残るカードは3枚となりました。

偶に泊まる平凡なビジネスホテルの味わいというのは、筆舌尽くしがたく格別なものです。ここで改めて語るまでもなくあとは各々のフィーリングに任せたい。私的なポイントはスマートフォンを家に置いて、Amazon Fire Stick TVと本だけを持っていくことです。近場で買ってきたケンタッキーをお供に、柴崎友香「百年と一日」を読んだり、ブレイキングバッドを数エピソード観たり(今現在はようやくS5の半ばである。もう少し!)、小津安二郎「東京物語」を観たりして過ごした。あとビジネスホテルでは何故か無性に私の中のタランティーノ作品が観たい欲が掻き立てられてしまうので、今回は「ジャッキー・ブラウン」を観返しました。

柴崎友香さんの新刊「百年と一日」、最高だったなー。個人の小さな記憶として閉じ込められている、はたまた時間の流れに飲み込まれてなかったことにされてしまう類の、弱々しいけど誰かにとってちょっと大切な物語がぽつぽつと並ぶ33の短編集。小説や映画、物語の中でしか残し得ない生がここには確かにあると思うのだ。

お盆の次の週の週末には人生で初めてのキャンプに行った。いつかはやりたいと思っていたので、はりきってテントやコットを揃えた結果、炊事系用具は友達に頼りきりにながらも快適に過ごすことができた。そのうち複数人で一緒にソロキャンプに行くのが目標だ。「地面に寝なくていいとか絶対これで決まりじゃんね!!」と意気込んで購入したコットがそれはもう期待以上の働きで、しっかり7時間睡眠をとってしまった。翌日開店直後の温泉でドロドロの身体をリセットし、帰路につく。

夕方近くに帰ってきて冷房をバリバリに稼働させ、部屋を冷やしているうちにもう一度シャワーを浴びる。すべての状態を整えてベッドの上で自らの労をねぎらうその瞬間こそ、アウトドアの真の楽しみであるように思う。偶の不自由や非日常と、そこから戻ってきた快適な日常、そのギャップに揺さぶられることでしか感じ得ないときめきがありはしないか。

そう、例えばフジロックとかね。みなさん配信はご覧になりましたかでしょうか。ちょうど土曜の夜をキャンプ場で過ごしたので、金、日曜の内容に限ってフルタイムで観ることができた。金曜の夕方の時点では、「いうても数時間のダイジェスト配信ですやろ…??」と斜に構えていましたが、愛着溢れる苗場の景色がそうさせるのか、ヘッドライナー特集のThe Stone Rosesのステージに差し掛かるころには明日キャンプ行くのやめようかなとさえ思いました。

サンボマスターの演奏に真剣に感動し涙してしまったり、いてもたってもいられずTwitterにて真っすぐな愛を謳ってしまったり、新しい自分の姿を見せてくれるのが、フジロックというものだろう。

最近は近年のフェスの目玉となるような音楽からちょっと遠ざかっていることもあり、久しぶりだなーという気分で観て愛着を再認識するアクトが多かった。

自分でもちょっとびっくりですが、日曜日のThe xx → James Blakeですらそれに該当してしまっていて、今は目が覚めたようにJames Blakeの1stアルバムを毎日新鮮な気持ちで聴いています。ジャンルとしてのSSWに傾倒してきた私にとって、このタイミングで改めて触れるJames Blakeとして、このアルバムが最も新鮮な発見に溢れていて、かつ好みだ。

SSWとしての地の強さを如実に見せつけるような楽曲が意外なほど多いことに今更気づき驚く。楽曲のエッセンスへの深い敬意を感じると同時に、自分の間合いへ巧みな再構築を成し遂げているジョニ・ミッチェル「A Case of You」のピアノ弾き語りカバーはその最たる存在と言えよう。「A Case of You」以外でも、クラッシックSSW的雰囲気たっぷりでジェントルに歌い上げる「Limit to Your Love」、ホワイトゴスペル「Measurements」、他「Why  Don't You Call Me」や「Enough Thunder」といったピアノ弾き語り、それに準ずるピアノ作曲の様子が直に伝わってくるような曲々の充実度よ!! リリースから10年を経た今、SSWサイドのジェイムズ・ブレイクについて再度思いを巡らせてみるのはいかがだろうか。私はここ数日ずっと「逆にジョニ・ミッチェルがカバーしたジェイムズ・ブレイクを聴きたい」という妄想をしながら過ごしています。そもそも「Blue」ら辺の時代のジョニ・ミッチェルじゃなきゃ思ってるようにならなそうな気もする。

それ以外では、マイルス・デイヴィス、チックコリアといったエレクトリックジャズの黎明期を飾った面々の作品から始まって、ECM作品中心にジャズをひたすら物色し続けた夏だった。

この辺りが素養ゼロからのジャズへの入口だったと記録しておきたい。ジャズ的なソロの旨みや各楽器の演奏技能みたいなところは全く分かっていないので、音の足し引きのバランスとか、全体のアンビエンス、各楽器のサウンドプロダクション、メロディみたいなところに注目して聴くしかないのです。

聴きどころのつかめない作品もままありますが、ECMレコードのカタログの充実っぷりはすさまじい。一生かけて楽しめる気がしています。特に好きなのはフィンランド人ドラマーEdward Vesalaのリーダーアルバム「Nan Madol」。張り詰めた空気を演出する粒立ったサウンド、民族音楽やエクスペリメンタル方面に足を伸ばすジャンルレスな作曲がオンリーワンです。

ECMからほんのちょっと離れて、一番好きなのはこの2枚かもしれない。ここら辺までくると割とポップス的というか聴きやすいですね。パット・メセニーのふわふわ軽いギター、大好きなんだよなー。

こんな具合に私の今の関心どころを公開致しましたところで、識者の方々へ恐縮ながらおすすめを募集しておきます。何せ素養のないジャンルなので、まだどこを頼りに進むべきかはっきりとは見えていないのです。


新作、好きなミュージシャンのやつはライブラリにダウンロードしてこそいるが、全然聴きこめていないな。聴いてもなんか内容を覚えていないことが多い。年上の人のゼロ年代後半くらい~10年代初頭辺りまでの新譜を巡る肌感覚みたいのたまに見ますが、今年入ってからの新作へのピントの合わなさ、まさに自分にとってのそれじゃんねという実感がとてもあります。

前作に引き続いて全く話題になっていないBruce Hornsby、前作に引き続いてJustin VernonやyMusicのメンバーががっつり参加しているので聴いてみるといいことあるかもしれません。

あとそういえばANOHNIのBob Dylan、Nina Simoneのカバーもよかったなー。

演奏自体はすでにけっこうしていた「windandwindows」と「FULLPHONY」の2曲を再構築したアルバム、蓮沼執太フルフィル「FULLPHONY」。(「windandwindows」は2年前にソロ名義で出した歌無し版が至高です!!)

リリース記念の配信ライブを先週末に観た。木下美紗都さんがいないのと、ギターもやたら前に出てきたりけっこう印象の変わった「Soul Osci」はじめいろいろありましたが、なんだかRYUTistのためのライブみたいになっていて面白かった。中心を向いて円形に構えるフィルの面々と向かい合うように、中央でメンバーが背中合わせになって構えるRYUTistのフォーメーションがそもそも素晴らしかったな。フィルが制作に関わった「ALIVE」はフリ無しスタンドマイクで4声のコーラスをきめる様が潔くてよかったし、柴田聡子作の「ナイスポーズ」も柴田聡子本人が実際に加わった演奏をみて一気に愛着が湧いてきてしまった。


ROTH BART BARONの新作情報が一気に解禁!!ここ3年、毎年秋はROTH BART BARONの新作とそれに伴う諸々が楽しめるなんて考えてみると実に贅沢なことだ。

PALACE主催の野外ライブイベント「The CAMPFIRE」、絶対行きます。

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