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2019年9月の音楽(とか)のこと

ちょっと前の3連休は伊豆にダイビングのライセンスを取りに行った。大学時代の友達に誘われてあまりイメージはつかないがなんとなーく大金を払い、事前に送られてきた200分越えのDVD教材を絶望的な集中力で形だけ見終えて臨んだ3日間でしたが、最終日に間近に泳ぐウミガメを見てまんまと楽しんでしまった。ウミガメ、すぐそこ泳いでるの、マジすごくないすか。最近彼女に振られて、ダイビング前々日までトルコへ一人傷心旅行へ行き、現地でトルコ絨毯の卸売業を営む男と「ブラザー」と呼び合う間柄になり、数十万のトルコ絨毯を買って帰ってきたという一緒にいった友達の一人はこのダイビングで「人生変わった」そうです。今もラインでやり取りしているという「ブラザー」は近日日本にも絨毯を売りに来るらしい。なるか「ブラザー」との再会。


新しく聴いた音楽

この1ヶ月で一番聴いたのはBonnie "Prince" Billyという90年代から活躍するSSWと、ブライス・デスナー (The National)、現代音楽アンサンブルeight blackbirdとのコラボ作品。Bonnie "Prince" Billyはもともと「これぞアメリカーナ」というべきソングライティングを披露している人でしたが、今作もリワークやトラディショナルなカントリーソングのカバーと持ち味そのままに、ブライス・デスナー、eight blackbirdによる目の覚めるようなインディー・クラシック的なアレンジがこれでもかと取り入れられている。特に1945年に作られ、歌い継がれてきたカントリー・クラッシック「Down In The Willow Garden」のカバーは圧巻。3拍子のビート、ピアノ、ストリングスのフレーズは冴えわたっているし、展開も現代的で完璧。これを機に「Down In The Willow Garden」のカバーをいくつか聴いていたんですが、どれも本当に素晴らしいですね。曲そのものが圧倒的にいい証拠なんだろうな。この曲のカバーでは一番有名であろうしっとり繊細なギターが気持ちいいアート・ガーファンクルによるものや、アイリッシュ・トラッドミュージックのグループであるザ・チーフタンズとBon Iverのコラボ版なんかも、存在感のあるフィドルが鳴る中でおなじみジャスティン・バーノンの歌声が聞こえてきて面白い。


このタイミングで初めて知ったBonny "Prince" Billyは過去作も本当に最高。このアルバムの1曲目「A Minor Place」は僕にとって100点の曲です。一切の過不足もない。このアルバムにPitchforkがスコア10をつけていたというのもつい最近知りました。1曲目の時点で確定してしまうのでそりゃあそう。


去年リリースされたアルバム「針のない画鋲」に続いて過去作が一気にストリーミング配信されたのをきっかけに今は土井玄臣に夢中です。特に自主制作の初作「んんん」はこの1枚で情報量が実に豊かで、この1ヶ月彼の他の作品に行きつく余裕がなかったほど。Frank Ocean「Blonde」が引き合いに出されることの多い最新作「針のない画鋲」に実はそこまでピンときていないんですが、「んんん」はじめ過去作は音数が絶妙でそれなりにビートもありつつの静謐なフォークアルバムでとても聴きやすいです。「Blue Blue Blue」という曲なんかはそれこそ「バニフォーおもちゃ工場の~」とか初期七尾旅人っぽいなーと思って聴いていたらCINRAにこんなインタビューがあったのを見つける。

七尾旅人を聴いて、「この人いてんのやったら、自分音楽やらなくていいなあ」と思って、1回曲作るのをやめたんです。

という最初の大見出し。

歌詞も素晴らしく天才的だ。本人のブログで公開されています。

どの曲もそれぞれに詞を読むだけでクラクラするほど素晴らしいのだけど、今回は終盤2曲「ハトフル」と「朝謡」のリリックを見てみます。

歓喜 ほらっ!
わっ わっ わっ
嬉しい 嬉しいわ 晴れるし 離れるし
あの子言うわ また会えるし 叶うなら
ほらっ ほらっ 手にとって触れる


朝謡は朝めざした 夜からこぼれおちた
秘密の言葉で歌ったら 君に恋をした
触れられない朝謡はいつも歌をうたう
何を語れば響くのか とても迷いながら
あの娘 通る度 祝福しよう
歌えば声は光になるように
「あたし恋をしたみたい 姿は見えないけど
いつも歌が聞こえるの そばで見守ってくれてるみたい」       

天使たちの朝、柔らかな光。このアルバムはある女が男と出会い、歌い、恋をして、繋がって離れて、自ら命を絶つまでの物語だという。ラストトラック「朝謡」を始まりとして、アルバムとは反対方向に二人のストーリーは進んでいくのだ。なんという……!!

今年はフォーク/SSW系の良作にとても恵まれていてうれしい。(Sandy) Alex Gの新作はソングライティングの面でElliott Smithが引き合いに出されるのも分からなくはないけれども (「Southern Sky」とかコード感がモロで最高)、何が飛び出してくるか分からないストレンジでサイケなアレンジはDeerhunterのAtlas Soundとかそっちのイメージを僕は持ったりした。大好きなThe Lumineersの新作ももちろんよかったけど、あまり聴けていない。今のところ1st、2ndの方が好きです。

Alabama Shakesのブリタニ―新作は再生した瞬間本当にびっくりしましたね。

Sequoyah Murrayはどなたかがアーサー・ラッセル×デヴ・ハインズ (Blood Orange)と喩えていたのが気になって聴いてみたんですが、これが言い得て妙。ソウル寄りに程よく粘度の上がったアルバム「World of Echo」という感じです。 


国府達矢が2枚同時フルアルバムリリース。まだあまり聴きこめていないが、今は比較的素直なソングライティングが気持ちいい「スラップスティックメロディー」を中心によく聴いている。耳が土井玄臣モードなのでスムーズに行けるわけです。2枚同時と言えばGEZANのフロントマン マヒトゥ・ザ・ピーポーが4月に出したアルバムも最近やっと聴いた。全感覚祭行きます。


橋本絵莉子 (ex.チャットモンチー)の新曲はみなさん聴きましたか?まさかこのタイミングで"アルバム「耳鳴り」みたい" な新曲が聴けるとは思ってもみなかった。もっと言うとカップリングはおろかDVD作品のメニュー画面限定のチョイ曲まで格別の輝きを放っていたあの筆致。間奏の「THIS IS THE 橋本絵莉子」なギターソロを聴いた終いには心はすっかり10年前に戻ってしまう。ボーカルのエコーの塩梅なんかも「すごく分かってる」感じです。僕みたいな「告白」までの3枚に「原点」的な思い入れがあるチャットモンチーラヴァ―達はきっと冷静でいられなくなってしまうでしょう。

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最近買ったレコードでのベストはPATCHWORKというカントリー・ロックバンドの72年の唯一作です。ジャケ可愛い。軽快なフィドルの響きも、冴えわたるコーラスワークも本当に最高なんですが、検索しても情報が皆無でシェアできないのが悲しい。セルフタイトルは特に検索難易度上がりますね。


ライブ

9/13 Jacob Collier @恵比寿ガーデンホール

9/14 ROTH BART BARON @多摩六都科学館 プラネタリウム

どちらも素晴らしかった。特にロットのプラネタリウムライブはこの先もいつまでも心に残り続けるでしょう。

クラウドファンディングでライブプロデュース権を獲得したファン24名が何もかもデザインしたこの日のライブ。演出だけでなく1曲目「よだかの星」、あえて中盤でじっくり演奏された「アルミニウム」、本編ラストの「iki」、セットリストからも愛が伝わってくるようだった。素晴らしい体験をさせてくれたチームの皆さんに感謝します。


その他雑記

クエンティン・タランティーノ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は今年のベスト映画候補の1つだ。

160分全てのショットが最高でした。劇中出てくるプルタブじゃなくて、ツナ缶とかの缶詰式で開けるビールが飲みたい。


9月頭は「ワンス・アポン~」からの気分もちょっとあって大作をじっくり攻めたい気分だったんですが挫折気味です。メルヴィル「白鯨」も「ゲームオブスローンズ」も面白いんですが、なかなか進まない期だ。阿部和重の新作「Orga(ni)sm」も読みたいけど、疲れてしまいそう。

最近友達と行った国分寺のレコ屋「珍屋」はロットのライブで会った別の友達のおすすめ通り最高だった。国分寺南口店は「SSW/Swamp」棚が充実していて素晴らしい。そして安い。なぜかダン・フォーゲルバーグの作品がやたら多い。

思わずたくさん買ってしまいました。聴きこんで感想は来月。オウガの「ハンドルを放す前に」は珍屋ではないですがあまり見ない&お手頃価格に即決してしまった。彼らは「ハンドルを放す前に」を「everrythingsomethingnothing」と訳している。痛快。これが知れただけで買った甲斐があったと思う。



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