見出し画像

2023年3月の(音楽とかの)こと

「3月のこと」もとい「3月11日」のこと。

14:30過ぎ、吉祥寺駅から15分ほど歩いたところにあるバー『SILENCIO』へ。

この日店内で開かれるイベントでDJをするためである。

この日に至るまでの流れを説明すると、

・2年くらい前に何やら素晴らしい音楽がかかりそうなバーをネットで見つける。その店は『SILENCIO』というそう。(実際の由来は違うそうですが、) World Standard!!

・情報チェックしつつも状況変わらぬまま1年くらい経つ。その間SNSなどでも自分の周りでは『SILENCIO』を実際に訪問したとかそのような類の情報を目にすることはなかった。

・Twitterでしばしば交流のあったkitapashiさんがお店に行ったというのをある日ふいに見かける。その後あれよあれよという間に常連になっていくようすを観測する。

・先の年末年始にたくさん休んで活動的になったタイミングでわたしもいよいよ『SILENCIO』に行ってみようかと思い立つ。1月半ば、次の週末にしようと決める。そこから間髪入れずにkitapashiさんからその『SILENCIO』でDJをしないかというお誘いを頂く。なんでも、kitapashiさんと親交のある常連さん企画のフォーク/アンビエント等静かな音楽が中心のイベントであるという。

・次の週末、実際に『SILENCIO』へ。店内にはほとんどの時間わたしだけだったので、店主さんと3月のDJのことに加え、それ以外の音楽の話を2時間ほど。sheyeye recordsのオンライン出品全然買えない話や、最近のレコード高い話など。とても居心地のいい時間を過ごし、最後に店内で売られているレコ―ドの中からGianluigi Trovesiのソロ作『Les Boîtes À Musique』を見つけて、購入。大変に満足して帰路に着く。

イタリアのサックス/クラリネット奏者であるGianluigi Trovesiといえば、81年のトリオ作品『Cinque Piccole Storie』の強烈な演奏を気に入っていたのです。なんというかカバーアートから音が滲み出ている。

・数週間後、yumboのライブ情報が届く。歓喜。しかし、3/11という日付を確認した途端に、『SILENCIO』でのイベントのことを思いだし、よりにもよってなんでその日なんだと動揺で頭がいっぱいになってしまう。泣く泣く『SILENCIO』でのイベントはキャンセルしたい旨を伝える。

・協議の結果、トップバッターの自分の出番が終わったら1時間もせずにお暇し、yumboのライブに向かうというかなり失礼ムーブなのでは?と心配になるプランを提案してもらう。大変ありがたくお言葉に甘えることにする。

・その後は1ヶ月くらい楽しみに当日を待つ。初めて念願のyumboのライブを観られるのだという事実を日に日に喜びとして噛みしめられるようになる。

ものすごく回り道をしたけれども、ここで再び3/11の14:30過ぎに戻る。イベントのスタート、つまり自分の出番までの30分くらいの間、他のDJの方々や、店主さんにあいさつしたり、レコードでDJをやるのは初めてだったので、機材の簡単な使い方をレクチャー頂いたりして過ごす。

練習で数曲かけていた流れそのままにぬるっと自分の本編を始める。気を抜くとすぐyumboへ意識が飛んでしまいがちなことが見え見えの骨組みに、現行USのクワイエットなSSWの至高であると信じてやまないものや、およそ大抵のDJ現場向きでないことは明らかなソロギターや、ソロピアノ作品などを絡めたセットを完遂する。流している作品からの会話も都度生まれ楽しい1時間だった。

過去に何度かDJのようなものをしたとき、自分の好きなクワイエットな音楽の一般的なDJというフォーマットへのハマらなさを痛感し、同時に抱いたそういう”DJ現場でハマらない音楽”はどこでどうやって流れればいいんだろうという積年のモヤモヤが、この日の素晴らしいイベントで少しだけ解消された気がします。

だからこそ主催のmoooriyamaさんやkitapashiさん、その他のDJとライブアクトの方々の出番もじっくり楽しみたかったのだけれど、断腸の思いで店を後にし、WWWへ向かった。

また誘ってもらえることがあるのならば、次はもっとじっくりと参加したい。

WWWへは『SILENCIO』にも来てくれた友人と共に向かう。

3年5ヶ月ぶりの東京公演ということでわたしのように待望している人も多かったのか、到着したときには満員に近い盛況ぶりだった。何の根拠もないがてっきりテニスコーツからのタイムテーブルだと思い込んでいたところ、おもむろにyumboメンバーが登場し、演奏を始めて勝手に面食らう。(確かに各メンバーの機材はセッティングされていたが、それもテニスコーツは2人で割と省スペースでライブできるがゆえに転換の手間を省いているのだと思いこんでいた。)

急いで心の準備を整えながら、初めて実際に目にするyumboの面々が演奏する姿に ”本物のyumboだ" としみじみ感動を覚える。

1曲目「短さについて」、皆木さんのギターがいきなり特に聴きたかったタイプの演奏。前述のとおり ”本物だ” と思う。2曲目「歌の終わり」、大好きな曲。全員のアンサンブルが素晴らしい。会場を満たす管の響きに泣きそうになる。3曲目「わたしの3分前」、これも好きな曲、映像作品『いくつもの宴 multiple banquets 1998─2021』(以下DVDと書く) で何度となく演奏姿を見てきた曲。

芦田さんのペダルスティールを中心に据えるイメージで聴く。4曲目ここで「鬼火」、この日の演奏は懐深くニュートラルな質感な気がしてすごくよかったと思う。3月11日、12年前から現在までのyumboと私の距離、その変遷を想う。5曲目「統一」、昨年の9月、水戸で見た澁谷さんソロでの出来立てほやほやver.、7e.p.のレーベル20周年を記念したコンピレーション『COLORS』で聴けるスタジオ録音ver.、そしてこの日のライブver.と聴いていくにつれて少しずつ解像度が上がっていく実感が心地よい。ライブで聴くと山路さんのドラムの凄まじさ、素晴らしさが分かりやすい。

6曲目「幻のできごと」、この曲だけは当日の演奏がSoundCloudにあがっています。聴き返して改めてこの日の全体的なアンサンブル好きだなと思う。

7曲目「さみしい」、なんと言ったってこの曲の山路さんのドラムである!ようやく聴けて本当にうれしい。あゆ子さんのマイクを通さず叫ぶようなリーディングは初めて見た。これもよい!8曲目「失敗を抱きしめよう」、これまた山路さんのドラムである!この曲はそれ以外にもyumboのよいところを凝縮したような満足感がある。9曲目「間違いの実」、ここに「間違いの実」が来ることでこの日のセットリストの満足度が数段上がって感じた。本当にいいセットリストだった。見所の一つである澁谷さんの間奏のピアノソロが初めて聴くタイプ。いつもはもっと早弾きのようなニュアンスがあるが、この日はリフのような雰囲気の強調されたタイプ。もう一つの見所、澁谷さんとあゆ子さんの脱線寸前のようなスリリングな掛け合いも見事。あゆ子さんのリズムを取る仕草も見たかった通り。ラスト10曲目「悪魔の歌」、最高。この曲は何といっても皆木さんのギターと山路さんのドラム、大切に聴く。

テニスコーツのこちらも素晴らしく、そして革新的なステージからアンコール。yumbo、テニスコーツ、そしてざやえんどうのメンバーでの「家」。ステージ上パンパンになって演奏するようすに、DVDで何度となく見たアンデルセンズやキヌタパンのメンバー、そして工藤冬里と共演していた2003年の武蔵小金井アートランドのようすを重ね、胸がいっぱいになる。画面を通して見たいくつもの宴は確かに実存していて、あの日、あの演奏と現在のyumboは確かにつながっていたのだと強く実感する。yumboのライブを観るのはこれが初めてだったけれど、この日観たのはこの日のステージだけではなかった。わたしはそんな幸せな勘違いをせずにはいられなかったのだ。

ラストは澁谷さん作詞、さやさん作曲による共作曲「しろいもの」。ひたすらに大名曲。これもDVD中2016年せんだい演劇工房 10-BOXでの演奏がフラッシュバック。一生終わってほしくない幸せな時間であった。

WWWから少し移動してビール飲んで、ライブのことについて話して、思い残すことは一つもなく帰路についた。そんな3月11日だった。


残りの3月はほとんど、引っ越し関係と仕事。


2月のことは書けずに飛ばしてしまったのだけれど、2月半ばには引っ越し前の拙宅での最後のレコード会を行った。

以下記録です。(流した順番ちょっと違うかも。)


Nala SinephroとMeiteiの間にわたしが流したものが何かあったような気がするのだけれど思い出せず。

旧拙宅で開催してきたレコード会。引っ越したこれからも続けていきたいものです。


最後に書き忘れていましたが、2月にアップされたyumboのこの写真、ものすごくいいですよね。かわいさがあるなー。

どうぞお気軽にコメント等くださいね。