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2023年10月の(音楽とかの)こと

11月2~5日で韓国へ旅行。帰ってきた翌日に山形県鶴岡市に入り、そのまま暮らしている。そう、翌年の4月末まで山形県鶴岡市に短期駐在することになったのだ!!

韓国旅行も、鶴岡でのことも11月のことであるからには、わたしはまず先に10月のことについて書かなければいけない。

10月14日、麓健一のソロライブを観に小田原へ。

2時間半ほど電車を乗り継いで、夕方ごろに初めて小田原駅に降り立ち、会場の「まほらま」というギター&コーヒーショップに向かう。

カフェらしい厨房カウンター、壁には楽器屋のようにギター、20人も入れば一杯の空間で最前に一席空きがあったのでそこに席を取る。演奏が始まるまで30分程時間があったので、座って待つ。左隣には(後に麓さんのMCにより知ることになるのだが)、小学5年生の少年。その後ろの一段高い椅子に母親とその友人と思わしき一人が座るような位置関係で話している内容が時折耳に入る。

それは突然だった。"星のカービィの小説" というフレーズが耳に飛び込んできたのは。

恣意的な文章を書いてしまうことへ感じる抵抗、それでもコテコテの倒置法を使ってしか表現できないと思えるほど、それは突然だったのだ。そしてそのワードはあまりに秀逸であった。何とかワード自体へのリアクションをこらえた後、チラと横を見てみると、カービィやデデデ大王、メタナイトが書かれた表紙、コミック的サイズ感の本のその中身は、それは確かに縦書きの文章が整然と並んでいて、紛れもなく小説であったのだ。星のカービィの小説を読む少年の横で、わたしも必死に文庫本に目を落としているように見せかけて、なんとか笑いの波が収まるのを待った。

今や星のカービィは小説に進出する時代なのだ。ゲームボーイカラーを傾けてコロコロさせたり、ワープスターや色々なマシンに乗せて、7分間シティを無為にトライアルさせたりするだけの存在でなく。

麓さんのライブ。座ってのギターの弾き語りである。初めて麓さんのライブを観た今年7月、大阪 雲州堂での澁谷さん(yumbo)との公演では立ってギターを弾き語りする姿が印象的だったが、じっくりとまた別スタイルを楽しむことができて充実していた。意外と広くてステージの高い雲州堂とはまた会場の雰囲気も違いますし。

全曲大名曲の最新作『3』の楽曲群をじっくりと聴いて楽しむ。7月の大阪では聴けなかった「ヘル」も聴けてよかった。このnoteで2ヶ月に一回はリンクを貼っている気がしますが、この一曲だけでもどうにか全員聴いてくれー。

この日は麓さんのMCも多く、アルバム『3』について、そして曲について興味深い情報を色々と知ることができた。アルバム『3』について、"空間があると褒めてくれた人がいたのがうれしかった" という旨を麓さんが話していたのが、印象深い。わたしは先の「ヘル」や「幽霊船」に代表されるようにそれは、コード感によるものが大きいのではないかなと思う。「幽霊船」のコードの響き方は本当に何回聴いても震えます。

澁谷さんとの共作曲からも「Stardust」、「悪い煙」と聴いてアンコール。小田原に来てから演りたくなったと、まほらまの店主さんも加わってニール・ヤング「After the Gold Rush」のカバー!!麓健一の歌うニール・ヤングの素晴らしさ。ドライかつどこか寂しげなニュアンスを湛えた声質は、少し近しいところがあるような気がする。ときに、この日のMCでツイン・ピークスの話をしていたり、『3』では2曲も歌詞に「アメリカ」というワードが出てくるし、「麓健一とアメリカ」という視点は中々おもしろいところに連れていってくれるのかもしれないという予感があります。

さらにアンコールで好きな「うぐいすの谷」まで聴けて満足。終演後に配っていた過去のライブのフライヤーをもらいに麓さんのもとに行き、少し話をすると「もしかして書いている人ですか?」と聞かれて驚く。とてもうれしい言葉で逆に感謝の意を頂いて、誰のためともなく「書いている人」でよかったなと思う。最近は毎日仕事ばかりしているけれど、こうして月に一度くらいは「書いている人」であり続けたい。

そういえば、この翌日は川崎のほうで土井玄臣もワンマンライブをしていたのですよね。こちらも行きたかったなー。セットリストをみると、珍しく「ダークナイト」や「オスカー」、そして「言祝」といった『The Illuminated Nightingale』『それでも春を待っている』あたりの曲を演っているし。来場者に配られたという近況レポート&最近のデモ音源も気になる。麓健一と土井玄臣 両氏にはいつかぜひとも共演してもらいたいものです。それでなくてもこの週末のようにこれからもちょくちょくとライブをしてほしいものです。


麓さんの公演の前日、公開日にレイトショーで観に行った佐渡岳利『くるりのえいが』が抜群に素晴らしくて、小田原への車中もくるりばかり聴いていた。

音楽を作ること、演奏することの積み重ねをじっくりと撮った演出、まさにこんな作品が観たかったなと思った。3人だけの音が鳴らされるスタジオセッションの内容もイチイチ興味深いし、殊に終盤、一つのハイライト的に配された京都 拾得でのライブの素晴らしさである。「尼崎の魚」、「California coconuts」、「東京」の3曲。オリジナルメンバー3人での圧巻の演奏を観終わったわたしは気づいたら12月の新作のツアーのチケットを取っていた。

音楽以外にも伊豆のスタジオで皆異常においしそうに食べるエビフライや、もっくんの表情の豊かさ (繁の話を聞くときの表情)といった細部の充実、おまけにパンフレットもこれがまた出来がよく隅々まで楽しんだ。

そもそも新作であるところの『感覚は道標』それ自体が大変素晴らしいですからね。こんなにくるりの新作を何度も聴くのはいつぶりだろう。くるりが調子がいいということには、何か特別なうれしさがあるっすよね。

レコードもほれぼれする音圧の名プレス

「doraneco」と「California coconuts」が特に好きです。「In Your Life」とかもしみじみと岸田さんのボーカルが素晴らしくてグッときますよね。


レコードと言えば、念願であったyumbo『鬼火』のレコードが到着。それはもう大変にスペシャルな代物なのであります。間違いなく一生もの。

メンバーの工藤夏海さんが、津波で流される前のふるさと宮城県 志津川町の街並みを記憶を頼りに描いたというこの絵を、LPサイズでみれる日がようやく来たのである。縦書きの歌詞に合わせてゲートフォールドが右開きなのもしみじみと良い。そして「馬男」、「薬のように」、「鬼火」の3曲しか入っていないD面である。この3曲しか入っていないという条件下でしか生まれない宇宙があるのだ。


最後に突然だが、わたしはブリティッシュパブ探訪を一つのライフワークとしようと考えている。ブリティッシュパブの魅力・よさ。まず第一にそれはドリンクの安定感だとしたい。どんなにごちゃごちゃとしたチェーン店(〇UBとか)であっても最低限ドラフトのギネス他数種類のビール、そして数種類のスコッチウイスキーのラインアップが保証されているということ。この価値に気付いたとき、わたしは一つ "真理" に近づいてしまったというわけ。
とりあえずブリティッシュパブに入れば、つまらないサワーばかりがずらりと並ぶメニューを見なくてもいいし、ビールがパーフェクトサントリービール(糖質ゼロのやつ)しかないみたいな悲劇を未然に回避できるのだ。
また、ウイスキーをオーダーする時は、洗練された個人店でおすすめなんかを聞いたりしながら選ぶこと、チェーンに近いお店でメニューの中から勝手気ままに選ぶこと、どちらにもまたそれぞれのよさがある。チェーン店に近いお店で適当に選ぶこと、これが思いの外いいのだ。ウイスキーには膨大な種類のボトルがありますから、有名どころであってもなかなかタイミングが合わず手を出せていないものというのは尽きないわけで、そういったものをメニューの中から(ここではあえて選択肢は限られているというのも重要なポイント)ひょいと選んでじっくりと飲んでみること、これがなんとも豊かな時間なのである。

そしてフードである。ブリティッシュパブのフードと言えば、フィッシュアンドチップス、ピクルス、ちょっとした燻製もの、少しこだわったところだとパイ系やハギスくらいであろうが、それで充分、いやそれこそがいいのだ。選択肢が限られているということはよいことでもある。お腹に余裕があるのならば、フィッシュアンドチップスはマストでオーダーしよう。そして、一つ一つチェックしていくのだ。フィッシュの形状(一本丸々タイプか、一口大か)、大まかな魚の種類、衣の質感、フライの方向性(シューストリングスかウェッジカットか)、付け合わせにグリーンピースをマッシュしたものはついて来るか、タルタルソースはついて来るか、付いてくるとしたらどんなテクスチャーか、そしてモルトビネガーはついて来るか。ここまでチェックした時、あなたは気づくだろうフィッシュアンドチップスに無限の可能性があるということ、そして一つとして同じフィッシュアンドチップスは存在しないということを。

フィッシュアンドチップについて少し話を盛りすぎてしまったような気がしますが、最後に10月に訪れたお気に入りのブリティッシュパブを紹介しておきます。

浅草にほど近い路地に佇むその店は「THE AULD」という。ここはもう日本におけるブリティッシュパブの一つの到達点なのではないかと思う。全てが洗練されており、一方でとてもカジュアルで居心地がよく、もし近くに住んでいたら毎日のように通ってしまうであろう。浅草中心街から少し外れていることもあり、ちょっと空いているのもポイントである。

この10月でお店は2周年だという。訪ねたその日に偶然周年イベントをやっていた。

まずは美しいドラフトギネス
スコットランドの伝統料理ハギス (茹でたヒツジの内臓ミンチ、オート麦、たまねぎ、ハーブを刻み、牛脂とともに羊の胃袋に詰めて茹る(もしくは蒸す)詰め物料理の一種)

滋味深いハギスの魅力。少量ついてくるタリスカー10年を垂らしながら食べる。

周年イベントで出ていたボウモア23年ポートカスクマチュアード1989年蒸留2013年ボトリング

落ち着いた口当たり。口の中をアルコールが軽やかに回る。異次元。そして優しさプライス。

こちらも周年メニュー
ドライフルーツも美しい
頼んたフードと合わせておすすめを頼んだらこちらもボウモア。店主さんが実際にスコットランドのボウモア蒸留所で買ってきた一本だそう。
この日は2軒目だったのでオーダーしなかったフィッシュアンドチップス(以前の訪問時の写真)

ブリティッシュパブ、よいものですよ。


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