見出し画像

2024年2月の(音楽とかの)こと

春めいていると思ったら今はまた寒い。

春めいてくると少し音楽を聴きながら散歩してコーヒーを飲みながら本を読んでくるだけでもとても気持ちいい。

柴崎友香の新刊『続きと始まり』や、ヴェルナー・ヘルツォーク『氷上旅日記』を読んでいた。

一人で車を運転することについての描写。こういうのが柴崎友香の文章における"神髄"かもしれないと個人的に思っている。

 次の曲になって、もっと大きい声を出してみた。わからないところは適当に、ほとんどただ叫んでいるみたいに歌った。その次の曲も、その次も。
 アルバムが終わって、自動的に次のなにかが流れる前に止めた。
 急に静かになった小さな空間に、かちかち、とウインカーの音だけが聞こえた。
 慣れてもうほとんど自動的になった動作で左折すると、まっすぐな道路の先、湖の向こうに消えかけている夕日が見えた。

柴崎友香『続きと始まり』


途中まで読んだ『氷上旅日記』、田舎道をズタボロになりながら彷徨い続ける姿は、なかなかどうして静謐な祈りのように見えるのである。

朝、とても早く出発。家のなかに目覚まし時計があることには気づいていたが、それがチクタクと、あまりにも気になる、大きな音をたてていたので、戻って取ってきて、少し先の茂みのなかに放り込んだ。

ヴェルナー・ヘルツォーク『氷上旅日記』

不法侵入して一夜を明かした他人の家の目覚ましがうるせーからわざわざ一度出発してから戻ってきて外にぶん投げるところ、理屈でない感情が揺すられて本当に最高です。勢い。

読みながらよく聴いていたのは、グラタンカーニバルのアルバム『そんな12月』である。プライヴェートな雰囲気を湛えた光永氏のアコースティックギター弾き語りをベースとして、サックスやクラリネットといった管楽器が空間を拡げていく。

10曲中の8曲目までは歌あり/なしが交互に続くアルバム構成が、各曲のもつ魅力をさらに引き上げているように思う。

インスト曲で特に顕著であるサックスとクラリネットの響きは、例えばBILL WELLSとMAHER SHARAL HASH BAZのコラボレーション作品『OSAKA BRIDGE』のようでもあり、時に見せる幽玄な揺らぎはサム・ゲンデルのそれを彷彿とさせる時もある。「火星の教育」とか。ギターと管の掛け合いも相まって素晴らしい。

そして歌モノはすべてがシンプルに最高。特に好きなのは4曲目の「シャッターチャンスは五年前」、そしてラスト手前の「本当の夢」。どちらも静かな初春のような歌。名曲です。

「みずたまり」のようなソングが7分あるのも本当にいい。素晴らしいアルバムである。2020年リリース作品ですが、去年の秋にLPリイシュー。まだ在庫が残っているところには残っていて、わたしも最近買いました。あと数ヶ月レコードプレイヤーが無い家に仮住まいせねばならないのが辛い。

グラタンカーニバルと言えば、去年の秋には大阪の雲州堂でyumboと共演しているのだ。7月に同じく雲州堂で催されたyumboの澁谷さんと、麓健一さんの2マンにて公演が発表されたときはグラタンカーニバルの存在を知らず、さすがに2か月後に再び大阪まで来るのはと思い、見送ったのですが、こちらも素晴らしい共演だったのだろうな。麓健一、グラタンカーニバルとyumbo(澁谷さん)との共演で初めて名前を聞いたしばらく後に聴き始めてすっかり気に入ってしまう事例が続いている。

他に最近聴いているのは、ドイツのブラスバンド Hochzeitskapelleと日本のミュージシャンによるセッションのようすを収めた『The Orchestra In the Sky』である。神戸編(Kobe Recordings)と東京編(Tokyo Recordings)の2バージョンがあるのですが、わたしはKobe Recordingsのほうが好みかな。両者はアナログ盤もリリースされていて、都合よく神戸編だけ在庫があったので、ギリギリのところで入手しました。

参加ミュージシャンは、神戸編がテニスコーツ、ゑでぃまぁこん、三田村管打団?、popo、沼田佳命子、遠藤里美、そしてグラタンカーニバル (!!)、東京編は、Kama Aina、テニスコーツ、関雅晴、ざやえんどう、ふいご、池間由布子、中尾勘二、三田村管打団?、と平たく情緒も無しに言ってしまうのであれば、テニスコーツを中心とした日本のインディーシーンの良心というわけであります。

神戸編、オープニングの「Garden of Peace」におけるテニスコーツとのアンサンブルを聴くだけで胸がいっぱになってしまう。そして、なんと言っても4曲目、こちらもテニスコーツとの共演である『Kaze No Uta』である。

「しろいもの」や「光光ランド」と並ぶ大名曲ではなかろうか!!

『Kaze No Uta』はどんな曲なんだっけと思って調べていて、1月にテニスコーツのニューアルバムがリリースされていたこと、『風の歌』はそのアルバムに収録された新曲であることをたった今知りました!

ストリーミングサービスMinna Kikeruにて、全員聴きましょう!!

他にTsege Mariam Gebruのボーカル作品は、構えてしまっていてまだ一度も聴いていない。Tsege Mariam Gebruのボーカル作品って。とんでもない発掘音源がこの世には眠っているものだ。

柴田聡子の新作『Your Favorite Things』、数回聴く限りいい感じだけど、まだ何か言いたくなるほどには捉え切れていない。ユリイカの特集も手に入れたので、読みながら繰り返し聴きます。

タイミングを逃して続けていたヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』を観た。予想以上。いつまでも観れてしまいそうな撮影。画の力である。そしてフラッシュディスクランチ!!久しく行っていないがこんなところで店内が見れるとは思わなんだ。そして、柴田元幸!全然気づかなかった。"役所広司が休日の度にフィルムの現像に行く写真屋の主人"役を完璧にものにしていた。レイトショー後の帰り道、自動販売機で飲み物を買って、音楽をしっかり流して運転するのがとても気持ちよかった。


3連休、極寒の軽井沢へ。雪の中温泉宿でくつろいだり、街を歩くには歩くが寒すぎてすぐに建物に入ったりしながら過ごした。

東北で過ごしていた時間は長いが、ここまで極寒の地域にしっかり極寒の時期に訪れたのは未だなかったように思う。この気温では枝は一本一本コーティングされるように凍るのだと知った。

フレスガッセで食べたハムステーキ定食の美しさ。その佇まいからはこれは定食であることがベストアンサーなのだという堂々とした説得力を感じる。
思わずワインも頼む。

温泉宿にも最終盤に立ち寄った喫茶店にも軽井沢にはあらゆるところに薪ストーブがある。

最後に立ち寄った喫茶店でアイリッシュコーヒーを飲んで帰った。
アイリッシュコーヒー、もっと多くの喫茶店でメニューに載せてほしい。
バーでは寝れなくならないか心配して結局頼まないことが多いので。

どうぞお気軽にコメント等くださいね。