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2023年1月の(音楽とかの)こと

今年もよろしくお願いします。

1月も終盤に差し掛かったころ、yumboのライブ情報が届く。

https://7ep.net/events/20th-anniversary-show/

来たる3月11日、実はその日は他にとても楽しみな予定が入っていて、最初日付を見た途端に、よりにもよってなんでその日なんだと動揺で頭がいっぱいになってしまい、発表された直後は手放しで喜べなかったのですが、先に入っていた予定の方を調整して頂いたお陰で両立できることになり、発表から5日ほど経った今ようやく、yumboのライブを観れるんだという喜びが込み上げてきているところ。

出会って1年半くらい、今に至るまで夢中で聴き続けて、去年は映像作品を擦り切れるほど (古典的な比喩) 観て待望のyumboのライブ。あー楽しみすぎる。どんな曲をやるんでしょう。とりあえず4枚のオリジナルアルバムからは全部やってほしいし、「歌の終わり」や『衝突トリロジー』の3曲も当たり前のように聴きたいし、おそらく来るならば一曲目とかに来るであろう、掴みどころのない未発表曲を聴いてあっけにとられたい。これでは最低でも5時間近くの持ち時間が必要ではないか。
各プレイヤーの演奏もまた本当に楽しみだし、この膨らむばかりの感情をどう鎮めておけばいいのか、もはや分かりません!


年が明けてからもう一つのビッグニュースと言えば、World Standardのニューアルバム『ポエジア…刻印された時間』リリースの報に他ならない。yumboとWorld Standardの大きな動きを同時にフォローできる2023年初春、夢のようである。

すでに公開されているLP盤に片面4曲ずつのトラックリストをみるだけで、うっとり。また、前々作の『色彩音楽』からタッグを組む横山雄さんのカバーアートは今回も一際素晴らしく、発売前からすでにタイムレスな名作然とした匂いを醸してさえいる。
発売は3月。予定している引越しの後だったので、届け先として初めて新住所をスマートフォンに入力した。新居宛てで注文した最初のレコードとしてこの作品のことはずっと忘れないのだろうな。


ここからは来たる3月の話でなく、1月に実際に触れたものについて。

書店で何か感じるところがあり前情報なしで購入した、大崎清夏『目をあけてごらん、離陸するから』が圧巻。素晴らしい文章を前にしてわけもなくうれしくなり、勝手に勇気を分け与えてもらった気にもなる。躍動する生が一文ごとに目一杯刻まれている。

中でも「呼ばれた名前」という短編小説がお気に入り。
二人乗りの自転車で横転したこと、"たまに、コップに半分だけビールを飲んで機嫌がよくなっているようなとき" の変顔、"一緒に相模大野の伊勢丹に出かけたときみたいに、ほしいもの何でもひとつ買ってあげると言って、ウォーキングシューズの足で新宿伊勢丹のフロアをぐるぐる歩き回った" おばあちゃまに買ってもらったドクターマーチンのブーツ。
"おばあちゃま" との記憶全てに愛すべき身体性が宿っていて、みずみずしい。

私に見えるのは、昔のままの台所のダイニングテーブルに、おばあちゃまが肘をついて家電の子機で喋っている姿だった。テーブルの上にはヨックモックの空き缶と和紙張りの小物入れがあって小物入れにははがきとか油性ペンとかが入っていて、底には「相模大野の伊勢丹で、さやかさんと」と書いてあるはずだった。

大崎清夏「呼ばれた名前」 (『目をあけてごらん、離陸するから』収録)

小説と共に収録されているエッセイもどれもが素晴らしい。文章を読むこと自体にうれしさを感じるような、わたしにとって大崎さんの文章はそんな筆致なのだ。

ラストの「ハバナ日記」もいいし、「航海する古書店」も素敵。「音読の魔法にかかる (ウルフのやり方で)」もとても心に残っている。

『同じ話を異なる本で読む (ウルフのやり方で)』の実践の方法は、七通りの邦訳が存在するヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』を一冊ずつ七人で開き、一センテンスずつ交代で音読していくというものだった。

大崎清夏「音読の魔法にかかる (ウルフのやり方で)」 (『目をあけてごらん、離陸するから』収録)

というワークショップに参加したときのことを書いたエッセイなのだけれど、そもそものワークショップの内容がひどく魅力的だ。ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』というのもこれ以上ない選書。「お花はわたしが買ってきましょうね」と自分でも他の人でも誰かが読みだした瞬間から、いい会となることが約束されるようなそんな気がする。

『目をあけてごらん、離陸するから』は小説とエッセイで構成された単行本ですが、大崎清夏さんはこれまでは主に詩人として活動してきた作家であるという。詩の方もこれからアーカイブを遡っていく気満々でいるのですが、しばらくは先に魅了されてしまった素晴らしき散文の数々を中心に据えて読んでいく形になりそうだ。


『目をあけてごらん、離陸するから』の前には稲田俊輔『おいしいものでできている』を読んでいた。

おもしろいんだろうなと思いつつ、少しばかり複雑な自意識が働いた結果2年近くスルーしていたのですが、思いつきで手に取ってみたら想像以上におもしろく一気に読み切ってしまった。

わたしはあえて日本の飲食店的なインパクトのある味覚から離れていくような調理の方向性を "そっけない味" と呼んで、概念としてのそれを漠然と目指しているのですが、近しい話が随所に非常に解像度高く書かれていて共感した。

しかも氏としてのその集大成的と言えるであろう『ミニマル料理: 最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』が刊行間近だというから、発売早々にこちらも購入した。読むのが楽しみ。

さらに"ミニマル料理" "そっけない味" というワードに近いところで言うと、稲田さんの書籍に付随して少し前に読んだ白ごはん.comの運営を手掛ける冨田ただすけさんのインタビューをふと思い出したりもした。買えない料理があるということ。大好きなインタビュー記事です。

料理関連でもう一つ。dancyu2月号は1か月前の予告から待望していた『開眼!豆腐料理』特集。

期待通りの素晴らしさに加えて、「厚揚げブック」なる厚揚げ特化のブックインブックに興奮。3年くらい前までは文字通り眼中になかったはずの厚揚げという食材をここまで寵愛することになるとは。人生は分からないものである。


音楽。年明け早々に麓健一というSSWの作品に出会ってから今に至るまで、ずっと彼の作品ばかり聴いていた。bandcampで2011年リリースのアルバム『COLONY』を一通り聴き終わって、それが一年に一度あるかないかの "出会ってしまった" 体験なのだと確信。

その『COLONY』から11年ぶりの3rdアルバムとして去年末にリリースされた『3』もすぐさまCDを購入。

エレキギターの鳴り・コード感だけで感動ものの曲ばかりで何度聴いても新鮮に感動しています。特に「幽霊船」という曲が一番好き。曲、演奏、音作り、歌唱、こんなの他に聴いたことありません。完璧。ビデオが作られている「ヘル」という曲も次いで好きです。

まだディスコグラフィを全部聴ききれていないし、聴いているものも文章にできるのは未だ断片的なレベルにとどまるので、今月は音楽的なところについてはこのくらいにしておきます。麓健一という作家の音楽については一年がかりとかそういうスパンで向き合いたい。これからも隔月で進捗のようなものを書くと思います。皆さまもぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。新作は今時点でCDオンリー、その他のディスコグラフィーはおそらく全てbandcampにあります。

ときにすっかりその音楽世界に魅了されたあとに、そういえば麓健一という名前どこかで見たことあるな、と細い記憶の糸を手繰っていったところ去年の10月にyumboの澁谷さんと七針でライブをしていたという衝撃の事実にたどり着く。今にして思えば、この機会を逃したのは痛恨というほかないが、当時は麓健一という名前を一目見てハードロック寄りのベテランギタリストか何かかととんでもない思い込みをしていたのである。澁谷さんのソロは去年2回観に行った後だったから、そこまで前のめりな気持ちにならなかったこともあり。ないとは思うけれど書くのは自由なので、澁谷浩次・麓健一両氏の姿を思い浮かべながら書きます。どうか今年もう一度共演してください。


S・S・ラージャマウリ『RRR』という179分の体験も忘れがたい。愛すべきビーム、ラーマという主役二人の人間としてのフィジカルを3時間これでもかと浴びて、こちらまですっかり元気になってしまった。


前作の『Pokémon LEGENDS アルセウス』に続いて『ポケットモンスター スカーレット』もちまちまと進めている。Pokémon LEGENDS アルセウスで出会って寵愛していたヌメラ - ヌメイル - ヌメルゴンの3段進化が今シリーズでも登場してうれしい。一番の推しポケモンです。

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