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書評① 「在宅医療の真実」

私の本に、書評を寄せてくださった方々がいらっしゃいます。その中で、公開のご許可をいただけましたお二人のコメントをご紹介させていただきます。本当にありがとうございます。


川口有美子さん
NPO法人ALS/MNDさくら会 理事
「逝かない身体ーALS的日常を生きる」(第41回大宅壮一ノンフィクション賞受) 著者


在宅医療をめぐる様々な「誤解」を解く画期的な一冊。
 「救急車を呼んでしまうと、過剰な医療に繋がってしまう」とか、「救急医療が「自然な死」を妨げてしまう」などと久しく言われてきましたが、そんな世間の風潮に、小豆畑氏はNOと言います。
 本来の在宅医療は「看取ること」だけを目的としていない。それは私たち在宅介護にかかわる家族や介護者なら言うまでもないことなのですが、尊厳ある終末期医療を目指して、多くの有識者が、年齢を理由に高齢者に医療を制限してきました。しかし尊厳のある生を目指す医療と介護があってこそ、豊かな最期を迎えられるのです。そのために何が必要なのかを、本書は具体的に説明していくれています。


竹田主子先生
内科医
東京メディカルラボ 代表


[最期は病院?施設?自宅?]

著者は、大学病院の救命救急医として合計10年、外科医として合計10年勤務した後、故郷に戻って父親の病院を継いで、地域医療を担い、病院だけでなく、在宅医療グループや、特養、老健などの高齢者施設を率いている。
 本のタイトルを見ると、何かの暴露本かと思ったが、帯の『在宅医療は自宅で看取るための医療ではない』 というフレーズに惹かれて購入してみた。
在宅医療=終末期=看取り、ではなく、どういう時に在宅医療を検討するのか、お金はどのくらいかかるのか、まずどこに相談すればいいのか、在宅ではどんなことをしてもらえるのか、などがわかりやすく書いてある。
 いやあー、自宅じゃとてもじゃないけど病人は見れないな。。と思う人にも具体例をあげて解決策が書いてある。
次は施設だ。
子供に迷惑かけたくないから、という理由で老人ホームに入ろうと思っている人も多いだろう。しかし巷には、様々な介護施設高齢者施設がある。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設老健、認知症高齢者グループホーム、小規模多機能ホーム… 素人には何がなんだか分からない。これに関しても具体的な例や、医師や看護師が常駐しているかなど、丁寧に載っているので、選ぶ参考になる。あとから見直せるように整理されているので便利。
親の面倒を見ると決めている人、親の面倒を見たいが、仕事を辞めるのは困る人、将来一人になったら、認知症になったら、どうなっちゃうんだろう… と心配な人、すべての人に参考になる。
重度訪問介護制度の章は、他の在宅本では触れられていない部分で、興味深い。障害者運動が勝ち取ったこの制度は、紛れもなく、日本が世界に誇れる制度だろう。
後半はぐっと濃密な内容になる。
 延命治療なのか救命治療なのか… については、世間でも議論の分かれるところだ。90代の2つの実例、末期がんで、手の施しようのない症例を筆者が手術で助けた例は、そういう人たちを切り捨てていいのか、考えさせられた。
 在宅医と病院医(救急医) の構造的な確執にも切りこんでいる。患者の立場から見ると、そんなことどうでもいいから良質な医療を提供してくれ。と言いたくなるが、著者はそれに対しても2017年から研究会(後に在宅救急医学会) を立ち上げ、在宅医と病院医を同じテーブルについてもらって、その溝を埋めるべく奔走している。
 その姿は実に清々しい。
 その活動が実現すれば、長年患者に関わっている在宅医と病院医が協力して、在宅療養中の患者にとって、ベストな医療を提供できるようになるだろう。
病院の医療、在宅の医療と分けてしまうとどうなるのか。医療者に、是非読んでいただきたいところだ。

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