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そろそろ“医療の正義”の話をしよう⑬

医療における機能分化について考える

 厚労省は今年4月の診療報酬改定で、医療を機能分化の方向へ大きく舵を切りました。急性期と慢性期を明確に区別しようとする試みです。この方針は2022年8月の時点で成果を上げているように見えます。

 高度医療機関に比べ見劣りする急性期病院を「なんちゃって急性期」と呼んで非難する声も聞かれます。当院のような小規模民間病院にはこの種の病院が多く含まれます。一方で、地域医療を古くから担っていたのは、その種の病院である一面もあるのです。

 当院は90床の民間病院ですが、10床の新型コロナ病棟を開設しています。第7波の真只中、病床は常に満床ぎりぎりで診療しています。どこの県でも同様のようですが、茨城県でもコロナ病棟を有している病院と行政だけが閲覧できる「コロナ病棟利用の状態が示されるweb page」が準備されています。それを見ていますと、診療報酬改定前には、大きな病院から小さな病院まで、多種多様な病院がコロナ病棟を開設していました。しかし、改訂後、少ない病床を確保していた民間病院の名前は減少し、その減った病床分を大病院が病床拡大しているようです。改定前にはなかった100床規模の病院も増えました。

 2022/8/4、茨城県のコロナ病棟800床の利用率は70%です。数字的には病床逼迫には見えないのですが、医療現場では大変な混乱が起きています。コロナ感染者の受け入れ先が見つからず、救急車が病院を何件も探す状況です。不思議に思いコロナ病床のサイトを確認すると、100床規模で診療に当たっている大病院が30%程度しか利用されていないところがあるのです。これを県のコロナ診療統括本部に確認すると、当該病院スタッフに多数のコロナ感染者が出てしまって、受け入れ不能だということでした。

 機能分化は一見理屈が通っているように見えます。すっきりしていて美しい。急性期疾患は高度医療が必要だから、大規模高度医療機関に集約し、中小病院は回復期・慢性期医療への転換を進める。効率も良くなるでしょう。しかし、純血種というのは、一般に想定外のことが起きたときに脆いのは世間的に知られています。普段さぼっているような人が、災害の時に思わぬ働きをことがあるのを私は東日本大震災のときに経験しました。私は、政府は中小急性期病院を排除すべきではないと思いますし、「なんちゃって急性期」と揶揄され易い私達が、今、その実力を発揮する時だと思っています。皆様、頑張りましょう。

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