【詩】六

抱かれたいなと
思うことがある

それはふとした瞬間

ハンドルを捌く節ばった指
パソコンに落とす眼鏡越しの目線
名前を呼ぶ低い声

朧に霞む目には
そのどれもが耽美で妖艶にうつる

しかしもしもあなたも
霞んだ目でわたしを求めてきたら

そのときは
気でも狂ったかと罵倒し
その手を振り解き
怒りに我を忘れたふりをするだろう

一夜の淡い夢は
陰をつけ闇を纏い
深い沼へと為っていく

夢と現実とが交わる
仮想現実世界に
没落していった獣を
何人も何人もみた

わたしの欲望如きが
あのひとの光を奪うなんて
そんな悍ましいこと考えたくもない

わたしだけの疼きは自分の手で殺せる

忘れた頃にマグマのように湧く
ねっとりとした妄りがましい感情を
今までも何人も殺してきた

あのひとが同じ夢を見ないように
あのひとに悟られないように

わたしは今日も潔癖なほどに距離をとる

意識させないように道化者を演じ
無邪気な子供のような顔をして

深層に欲望を滴らせている

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