【詩】五
鱗のような欠片が
わたしの目に入っていないだけで
世界はこれほどまでに曖昧なのか
水中のような霞み
陽炎のような揺らめき
シャツの色は散らばり
改札の切符の入れ口を囲う
蛍光黄色の円だけが
鮮明にみえた
すりガラス越しに見つめることに飽きて
ぼんやりと身を委ねる
この世界には
わたしのことを知ってる人がいても
わたしは知らない
見えていないのに
見えているふりをしなくていい
雑踏の中を
洗い立てのシーツのように
何も抵抗せず
風にはためいて
取り繕わず
感じず
丸裸のままいればいい
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