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2020年4月の記事一覧

アイドル

このまま死ぬのも悪くないな、と本当に思った。胸が痛くて原因がわからなくて丸くなってた。

窓の外は眩しいくらい明るくて、光の奥から生えていた木は手を無数に伸ばしている。作られた喜びの中で循環している彼に私は何の印象を持つことなかった。カーテンがゆれて、意識がぼやけて目を瞑る。

胸の中で一体何が起きているのか、暗闇の中で無数の細胞と記憶が世界のルールにそって働き続けている。私の意思は儚く、その儚さ

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観察者

河川敷で孤立している子には、空に浮かぶ雲が長い溜息に見えている。寝転んだ体の奥で川が流れる音に解されている記憶は、草花の隙間を縫い広がり、土を暖め始めている。

見られている雲は輪郭を滲ませて、別の目に映り脳の中に溢れ寄せる。脳の中でまた浮かび、耳から高揚感として抜けてゆく。見ていた子は、黒くて長い道の途中でてんとう虫を見つけた。

広けた空間から離れ小さく部屋に閉じ込められている子は本当

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