_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__34_

#タクシードライバーは見た「高速道路で笑う」

お客様をお乗せし高速道路を走っていた。
お昼ごろの高速道路は事故や工事が無い限り少なすぎることも多すぎることもなく、一定の速度で流れ続けるから走りやすい。
それでも油断はせず、車間距離を確保しながら目的地へ進む。

二車線の高速道路の左側は少し遅めだったため右側の追越車線を走っていると、左の車線を走る軽貨物車に近づいた。
妙な運転をする訳でもなくいたって普通ではあったが、丁度こちらがその軽貨物の右後ろを走っていると、急に軽貨物の車体が揺れた。

ガコガコッ!と音が鳴っている左側を見ると、軽貨物が高速道路の壁に接触しながら走っている。
接触の反動から急に右にハンドルを切る可能性も考え、一瞬ヒヤッとしたがそのまま向きを変え、流れに戻っていった。

何事も無くて良かった。

そう思うはずが、僕はどうしてもそうは思えなかった。
ガコガコッ!と音がなるほど車体を揺らし、事故になるかもしれないとヒヤりとさせておきながら、また普通に走っているのである。

その様子に、
「前から歩いてくる人が歩きながらウンコを踏んだのに、それも一瞬気付いたのに、無かったことにして歩き出した」ような、
「目の前を歩いている人がお店を出ようとしたが、入口と間違えてガラスにぶつかったのに、何事もなかったかのように戻っていく」ような感覚を覚え、
「あ、あの人、今ウンコ踏んだ!・・・だけどそのまま歩いてる!」
とか思ってしまったり、
「透明だと思った!?」とか言いたくなる出来事と同類の出来事のように捉えてしまった。

要するにガコガコ言わしておきながら
「何事もなかったかのような顔してる!」
と思ってしまい、笑いがこみ上げてきた。
こちらは右車線だったので、流れ的に次第に右隣になり追い越していくのだが、運転手はおじさんだった。
ナビを触っていたのか、一瞬うたた寝したのかは知らないが
追越しざまにチラッとみると何事も無いように運転していた。

それを見て「いや、だからなんでそんな何事もないような感じなの?」
という感情から再び笑いがこみ上げる。
フフフフん!と息を吐きながら背中を揺らしていることがもしかしたらお客様にはバレていたかもしれない。
でも、一度ツボというかその疑問符が付いてしまうと理由を考えだしては笑いがこみ上げてしまう。
なんとか落ち着かせることが出来たが、お陰で一層ハンドルを慎重に握った。

そんな瞬間に出会うのが大好きだな~。


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