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#タクシードライバーは見た「得て増えて」

得て増えて。
知識や情報を得ることで、増えることで何かが出来るようになったりする。
タクシー運転手においては道路の知識は必要不可欠。
選択肢を幾つも持ち、最善の方法を選べることでお客様に安心して移動してもらうことが大事だと思っている。
ただ、それがかえって害になることもある。

昨日は銀座9丁目の真横にある新橋駅で「銀座行ってください」と言われた。
銀座に行けば良いじゃん。そう思うところだろうが、新橋駅は中央区銀座と港区新橋の間、丁度境目の当たりに位置している。
そこで「銀座」だけを言われると、
ーーーそこ、ここだよ。
となってしまう。
銀座でも1丁目と9丁目ではだいぶ変わってくる。東銀座だってある。
「銀座の何丁目ですか?」
と聞いて詳しい目的地に向かうだけだが、そのように選択肢が増えることで困ってしまうのが悩み。

この間は「銀座シックスの裏の方へ」と言う30代前後の女性をお乗せした。
普通に考えれば「銀座シックスという建物の裏」が挙がるだろうが、
タクシーではお客様の解釈で“裏”がいくつも存在してくる。

銀座シックスは中央通りという銀座を一直線に走るメイン通り沿いにある。
それが表だとしたうえでの裏。普通はそれが基準だ。
僕も一瞬は思い浮かぶが、同時にいくつもの場所が浮かんできた。
その時に走っていた場所は青い位置だ。矢印の方向に走っている。

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銀座シックスは赤い目印の位置で、中央通りというメイン通りがオレンジの銀座線のラインがあるところ。
もしこの中央通りを表とするならば、裏は緑の側になる。

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ただ、今走っている場所を表とした場合、裏はメイン通りのオレンジのライン沿いになる。
ここから見た場合緑が表にもなる。
この時点で二つだ。
もう一つ上げると紫の位置だ。

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このような「銀座シックスの裏」がいくつも出てくるので裏がどのあたりなのか聞いてみると、お客様の答えは「真っ直ぐ行ってください」だった。

真っ直ぐ言うことはさきほどの走行中のそのまま直線になる。

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こうなった場合、裏ではない。でもまあいい、“裏”という解釈もゼロではない。そんな独自の解釈を持つお客様なんて山ほど見てきた。
そして肝心なことを言うと、真っ直ぐ行くと一方通行や道路の構造で右折ができない。だからこそ何度も聞いてしまう。

そこを走りながら本当にこのまま真っ直ぐで良いのか問うと
「はい、裏なんで」。
お客様は何で分からないの?と言わんばかりの口調で答える。
念のため何かの間違いじゃないかと
ーーー銀座シックスは何本か向こう(右側)になりますけど良いですか?
と問うと、
「知ってます」
ーーーホントかよ!?
そう思いながら混乱して来るが、この場所が“裏じゃないけどなんとなく裏”と言いたくなるのも百歩譲れば分かる。
だから真っ直ぐ行ったが、その時点で黒い点の位置にいる。

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せめて裏と言うなら縦で見て同じブロックになるこの辺だろうと思ったが、
最終的に降りたのはここだった。

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ここも銀座シックスの裏か. . . ?

どんだけ選択肢を拡げれば済むんだろう。
増えすぎて逆に通常の裏を裏と思えなくなる。

得て増えて、今日も煩雑で奇怪な東京の街を走る。

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