_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__6_

#タクシードライバーは見た「試される瞬間」

「おまかせします」

コースを伺い、どの道でも良いという反応をするお客様のなかには
あえて試しているのか?と思う人がいる。
おまかせするお客様にもタイプがあって、
道が分からないためにおまかせするタイプだと感じれば、逐一、ここからいくとこうだからこういった方がいいという細かい説明を入れたりするが、
試すタイプであればそれに乗ってしまう。
「おう!まかせろ!」と。

実際そんなことは言わないが、頭の中では
時間帯、交通量、信号の数、信号のタイミングを考慮して
コースを決めるとお客様に念のため
「〇〇を通りますが良いですか?」
と聞いてゲームが始まる。

その時に、お客様が一瞬反応に詰まったりすると
きっといつもと違うコースの可能性があるが、
僕は様々な要素を考慮したこのコースに自信があるため、
「まあ、見ててよ」
と言わんばかりに走り出す。

何時だから、あの道はこれくらい混んでいて、
混んでいたら、少し迂回だけど早いのはこっちで、
この道のこの区間は右車線より左車線のほうが流れが速くて
この先行くと信号が青のタイミングで止まることがないからスーっと行ける。

そんなことを頭で組み立てながら、
現状の道路状況によっても判断を変える。

そして到着した時、何も言われなくてもちょっとだけお客様の様子が嬉しそうだったり、乗った時よりも快な雰囲気を纏っていると
「やった!」
と思う。

ただ、どれだけ考慮しても
自分が走っているタイミングだけ車の数が増えたり、
工事していたり、駐車車両がいたり、
歩行者が急に渡ったり。
常に絶対はなくて比較的こっちの方が早い、距離が短いというだけで、
時間も2,3分の短縮にしかならないし料金も大きくは変わらない。

時たま楽しむゲームのような感覚だが、
それに外れたりするとお客様に
「このコースよりあのコースの方が....」
なんて言われたりする。

しかも、それが
あなたより自分の方が道知っています風になるともうお手上げ。

「このコースよりあのコースの方が....」
なんてことは何百回と経験している。
今回はたまたまそうなってしまっただけで、普段はこっちの方が早い
ということを知らずに疑うお客様もたまにいる。
ナビを見ても、本当の今この瞬間という意味でのリアルタイムの
判断としては使えない。

不確定要素が多い道路の運転の仕事にそんなお客様が評価を付けたら、
きっとみんな低評価ばかりで、
「このコースよりあのコースの方が....」という時まで完璧を求められると
運転手にとってはそれを完璧にするにはもう厳しいため
「それも低評価になるんだったらやってらんねぇ」
と不満が続出するような気がする。

評価制度によっては運転手のサービス向上どころか
さらに最悪な状態になりかねない。

常に試されているのは質の向上として大事だけど、
電車のようにレール一本で繋がり、コースは常に同じでも数分のズレは生じる。
そこを詰めるより、受け入れられる余裕を生める仕組みを
創った方がいいよな~とたまに思う。

というか、
電車数分の遅れで謝らなきゃいけない日本ってヤバ過ぎる気がする!


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