_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__68_

#タクシードライバーは見た「普通じゃないお仕事」

「俺からは逃げられないけどな」
これを言われた時がマジで怖かったと話す後ろの男達は三軒茶屋で乗って来た。
深夜2時ころ、見た目厳つい二人の男性。
1人はカジュアルで1人はスーツを着崩している。飲んだあと、またもう一軒行くようだったが、それまでの車内では何やら普通じゃないお仕事のお話をしていた。

「あ、運転手さん、沖縄じゃん」
ヨナシロという名前を見てすぐ気付く。
「そうです、あ、お客様コースは下道で宜しいでしょうか?」
「あー、そう、、ソーキそばで」
沖縄の流れでスーツ姿の男性はそのまま口からソーキそばの名前が出てきた。
「なんすかソーキそばって」
すかさずもう一人のカジュアルな男性が聞く。
「俺は下道のこと、ソーキそばって言うんだよ」
「は?そうなんすか?じゃあ高速は?」
「ジーマミー豆腐」
「ハッハッハッハ」

何が面白いのかよく分からない。
二人は楽しそうに笑っているがバカにしているとかいう訳ではなく、酔いと流れでそのまま出てきたのだろう。

それからしばらくして近況的な話へ移った。
「いや~、じゅん君(仮)大丈夫なんすか残ってて」
カジュアルな男性が聞く。
「いやもう飛ぶわ、そろそろ」
「そうした方が良いっすよ、俺離れて良かったっすもん」
二人は元同僚で、今は職場が違うらしい。
ブランドやらホストを経営している組織にいて、歌舞伎町の名前も出てくる。一概には言えないが怪しく感じる。

「俺宮古とかで静かに生きるわ」
「その方がのんびりできて良いっすよ」
「・・・でもこの前サトシ君(仮)と飲んだんだけど、前飛んだヤマサキのこといろいろ言ってたからな~」
「サトシ君はヤバいっすよ、裏と繋がってるぽいし」
サトシは組織の人間らしい。会話を聞いた感じだと、どこかのタイミングで飛ぶか離れるのがその組織ではよくあるのか、少し前に飛んだヤマサキのことが話題に出た。

「サトシ君、俺からは逃げられないけどな、って結構マジで言ってたから」
「それあるかもしれないっすね、、、見つかるってヤバイだろうな~」
「・・怖かったわ~」
その後二人は少しの間沈黙が続く。

「俺も早めに抜けないとな~、もう持たないわ」
スーツ姿の男性も、どこかのタイミングで飛ぶことは考えているよう。
「もし飛んだら、戻るんすか?前の仕事」
「いや~、もう戻れないでしょ」
「まあ、そおっすよね~、じゅん君ホントここ来たの間違いだったっすよね」
「ん~、まあ・・・。」
会話で薄っすら感じるのは、普通じゃないお仕事。
なにかのきっかけでそこに入ったじゅん君はもう少し、まともな仕事だったのかもしれない。見た目も、大手企業にいそうなバリバリのタイプにも見える。知らないが。
ただ、最後の口数が今の心境を表しているように思った。

その後、その日の営業終了まで30分しかないラウンジに向かうため降りていった。

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