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#タクシードライバーは見た「憤りに夢中」

―――あっっぶねぇな!
一日に14,5時間運転していると危ない瞬間が訪れる。
毎回ではないが、年間を通すと本気で危ない瞬間もある。
どれだけ慎重に運転しようが、こちらが避けることのできない危険というものもあるのが車の運転。
基本的に平常心を保つが、疲れてくるとどうしてもムカついてしまう瞬間だってある。
車だけでなく、自転車も危ない。
そんな、危ないと感じる瞬間は歩行者にもあるはず。

「あっぶねぇ!」と思った瞬間、その自転車や車に対して憤りを感じてしまう。
その感情が起こることが嫌なのだが、出てきた場合はしょうがない。
どうにかして対処するが、その方法を長時間運転をしているうちに見つけた。

我慢したってムカつくならば、ムカついた感情をとことん掘れば良い。高めればよい。夢中なほど憤れば良い。
でも人を傷つけると言う意味ではない。

「あいつあぶねぇ運転するなぁ、こんな運転するやつ絶対いつか事故るわ、
今のはタイミング悪かったら事故ってた。ていうかもう事故れ。
事故らないと気付けない奴は事故った方が早い。
人轢いて後悔しないと気付けないのなら轢き〇してしまわないと分からないだろ」

まあ野蛮な考えだが、疲れて余裕がなくなった場合のこと。

「人轢いて、〇して、相手と相手の家族の人生を壊して、そして自分の人生も壊して、事故った事を後悔する。
それで普段の運転がいかに悪かったかを認識する。いや、そんな余裕も無いか。もうまともに人生を送れなくなるというところまで行けば良い。一番最悪の事態を想定して、それがどれほど大きい不幸になるかも想像出来ないのだから、現実にそうならないと直らないと思う。それに、急いでも信号にかかるし。
だから人を轢いて、苦しんで、、、、あ、余計な事考えてた」

疲れて余裕がなくなった状態で運転しているとこういう思考がたまに起きる。
そして我に返る。

「人轢いて気づくしかないとはいえ、その場合は被害者が出るなぁ。
関係ない被害者が可哀そう。だからやっぱり轢くな。あんな奴のせいで人生壊されたらと思うと悔しくてしやるせない。
死んでしまえばそれすら思えない。だから轢くな。
自分ひとりで壁にぶつかれ、そして自分だけケガして、全治半年で苦しめ。自業自得。...いや、でも家族がいたら悲しむ。だからぶつかるな。事故るな。一番良いのは車だけ大破して、大金を損することか。いや、その大破した車を処分するという面白くない仕事が生まれる。大破されたら車のメーカーも嬉しくない、もう何あっても誰も嬉しくない、だから事故るな、
. . . . . . なんだこれ。」

そうやって、気付いたら憤りが消えている。

憤りを持った時、気をそらすより、いっそのこと掘り下げたほうがいいかもしれないな~なんて思うようになり。
それを何度か繰り返しているとこうなった。

「あっぶねぇな!
いつか事故れ . . . . . だから事故るな」

憤りを感じた時にその感情を何度も掘り進めた結果、
結論がどこに到達するかが分かるくらい綺麗に整えられているため一瞬で消えるようになった。
迷路で何度も迷っていると、ある道を通るとまた同じ場所に戻ってくることを知ったように。

アホらしいが、あくまでも頭が疲れて感情的になってしまうときの対処法でしかない。
最初から気にせずに済むならその方が良い。


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