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消費税 インボイス制度「2割特例」

 皆さん、こんにちは。約1か月ぶりのご無沙汰でしたが、お元気ですか?
 税理士ラベンダーです。
 本来は昨日12日投稿を予定していましたが、投稿直後、誤って削除してしまい、書き直し+本日投稿することになりました。
 ご了承いただければ、幸いです。

 さて、今年の申告はもう終わりましたか?
 消費税以外の申告は3月15日まで。残すところ、あと2日となりました。
 何とか、頑張ってほしいと思います。

 私はというとこの間、通常業務に加え、各地で無料申告相談に赴き、申告のお手伝いをしてきました。
 会場型のもあれば、国税庁コールセンターでの電話相談もあります。

 相談者の皆さんは、政治不信や申告の苛立ちからなのか、怒った口調で相談される方も中にはいらっしゃいます。
 しかし、そういう方が相手でも、こちらが丁寧に説明すると最後には「ありがとうございました。助かりました」と言って、笑顔になって頂けます。

 こういう時、日本人というのは本当に生真面目な気質の人が多いなという印象を受けます。
 政治不信の苛立ちや、申告の難しさなどを抱えながらも、それでも申告しなければならないと切羽詰まり、相談にやってきて、きつい口調になってしまうわけです。

 政治を変えるには、国民の力が必要です。
 しかし、それが叶わない今、僅かながらでも皆さんのお力になれることが、私のやりがいのひとつになっています。

 さて、余談が長くなってしまいましたが、前回2月2日投稿日に予告した通り、4月1日申告期限の消費税について投稿します。
 インボイス制度により、インボイス発行事業者となり課税事業者となった個人事業主を対象としています。

 また、申告がどうしても大変で、免税事業者に戻りたいと考えている人もいるかもしれません。その際、取引先との関係上、本当にインボイス発行事業者になる必要があるか否かの判断についての情報も書いてありますので、是非、最後まで読んで頂けたらと思います。


1.消費税の課税方式

 まず、納付すべき消費税額は、次の計算式により求められます。
納付すべき消費税額 = 売上に係る消費税 - 仕入に係る消費税
 詳しくは「3分でわかる! インボイス制度-Ⅰ」を参照してください。

 そして、仕入れにかかる消費税額(仕入税額控除)の課税方式は次の3つがあります。
 詳しくは「詳しくわかる! インボイス制度-Ⅱ」(一部有料)を参照してください。
⑴一般課税
⑵簡易課税
⑶2割特例
 

2.2割特例

 消費税の計算上一番厄介なのが、この仕入にかかる消費税(仕入税額控除)です。

 消費税についての知識がなく、今回申告が初めて人にとって、上記⑴⑵の方式は、あまりにも過酷すぎます。
 そこで考案されたのが、「⑶2割特例」です。

 これは、売上にかかる消費税額がわかれば、その80%分を仕入にかかる消費税額として認め、結果として20%分を納付すべき消費税額とすることを認めたものです。
 これを計算式で表すと次のようになります。

納付すべき消費税額=  売上に係る消費税額 - 売上に係る消費税額×80%
  
 申告書は「2割特例用」というものはなく、今までの「一般課税用」を使って申告します。
 ただし、添付する付表は「付表6 税率別消費税額計算表」を利用します。これが、2割特例用となりますので注意してください。
 なお、2割特例を採用する場合、特別の届出は必要ありません。

3.2割特例の要件

 但し、この2割特例はすべての事業者が使える訳ではありません。
 次のすべての要件に該当する場合に限ります。
①今回、インボイス発行事業者となり、免税事業者から課税事業者となった
②令和5年9月30日以前に課税事業者に該当しない
③令和3年分の課税売上高が1,000万円以下

 つまり、過去において課税事業者である場合は適用されず、あくまでインボイス制度により課税事業者になった事業者を対象としています。

4.2割特例が使わない方がいい場合、使えない場合

⑴次の場合は「2割特例」を使わない方がいい場合です。
 ①卸売業(簡易課税の適用の場合、みなし仕入率が90%となるため)
 ②仕入金額が売上金額より大きい場合

⑵次の場合は「2割特例」が使えない場合です。
 ①課税売上高が1,000万円を超える場合
 ②資本金1,000万円超の事業者
 ③調整対象固定資産・高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った事業者

5.2割特例が使える期間

 この2割特例、残念ながら永遠に使える制度ではありません。
 令和8年9月30日が属する各課税期間までとなっています。
 つまり、個人事業主の場合、1月1日から12月31日までが課税期間となりますので、令和8年分までの課税期間が対象となります。
 その後は、一般課税か簡易課税のいずれかを採用して申告することになります。

6.インボイス発行事業者を取消す場合

 中には、今年の申告が大変で「もう嫌だ!」となり、インボイス登録事業者を取消し免税事業者に戻そうと考える事業者もいるかと思います。
 この場合にも、トラップがあり注意が必要です。

 勿論、取消すことは可能ですが、すぐにでも免税業者に戻れるわけではありません。

 まず、発行事業者を取消すには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を翌事業年度の初日(2025年1月1日)から起算して15日前まで提出しなければなりません。
 つまり、仮に明日届出書を提出したとしても、2024年はそのまま、免税事業者に戻れるのは2025年1月からということになります。

 また、取消した後も注意が必要です。
 取引先とのトラブル等により、インボイス発行事業者に再登録した場合、2年間は免税業者に戻れない、いわゆる「2年縛り」があります
 ですので、取消しの際も十分な注意が必要です。

届出書のひな型
invoice_07_01.pdf (nta.go.jp)


7.まとめ

 いかがでしたか?
 ここまでくると、なんとも八方塞がりの感がありまね。
 発行事業者の取り消しをして免税業者に戻すか、消費税の申告を続けながら取引先との取引を続けるか、悩ましいところもあると思います。
 
 そこで、改めて考えてほしいのが、そもそも「インボイス発行事業者になる必要が本当にあるのか」ということです。

 売上先の仕入税額控除の計算上、仕方なくインボイス発行事業者になったという事業者も多いと思います。

 しかし、売上先の消費税額計算上「簡易課税」を適用している場合、インボイスは必要ありません。
 つまり、売上先が「簡易課税」を適用している場合は、インボイス発行事業者になる必要はないのです。
 
 そのことについて、詳しく書いているのが「詳しくわかる! インボイス制度-Ⅱ」です。
  是非、お役立てください。

 最後まで、読んで頂いてありがとうございました。
 しかし、書き直しはきつかった・・・

税理士ラベンダー
24.3.13


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