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はい、縫製室です/縫製工程ごとに妄想するあれこれその①

 縫製の工程は(ズボン丈詰めの場合)
1)「カット」
①仕上がり線のピン打ち位置にチャコでしるしをつける
②スラックスを整えて置く
③仕上がり線を引く(”まっすぐ”引く。「まっすぐってなんだ!?」ってよくなるから「まっすぐ」を探すまでの手間が意外とかかることも。)
④縫い代分の線にしるしをつけてカットする
⑤丈詰めが短いと、”解き(ほどき)”をする。(これが地味にいちばん面倒くさい)
⑥裾上げ幅の調整の為に裾周りの”幅の詰め・出し”をおこなう(数ミリ単位の作業です。縫い代を利用します。)

2)ー1「縫い」ー直線ミシン
①”幅詰め・出し”を縫う
②紳士スラックスの場合は、”靴擦れ”なる布を縫い付ける。(かかと部分につける長方形の布で、裾をカットするときにでる残布から取ります。残布が出ないときは後ろポケットに付属のクツズレ布を使います。かかと部分によく起こる擦り切れから本体を守ります。)
②ジーンズなどは三つ折り縫いです。

2)ー2「ロック」ーロックミシン
①端始末が必要な「縫い」がある場合はロックミシンで端の始末を行います。
②2本ロックでほつれが心配な時は、あらかじめ1.2㎝ほどの幅にカットした接着テープをアイロンで貼ってからロックをかけます。

2)ー3「スクイ」ースクイ縫い(まつり縫い)ミシン
①裾上げして折り曲げたところをすくいでとめる工程です。

3)アイロン
①業務用のスチームアイロンで塗ったところを整えます。(基本的にアイロンをかけるのはお直し部分周辺を整えるのみです。それは苦情を避けるための社内ルールです。)


 …と、まぁざっくりと書きましたが、書き出してみるとあれこれその工程しているときに頭に浮かぶことっていろいろあったりします。

 その①は 「スッキリするとき~~!」を話します。

 それはアイロンのとき。

 最終工程ですね。
 スッキリする、というか、「ウキウキしちゃう」というか、「やってやったぜ」みたいなことなんだけど、理由は「仕上げたから」ではないんですよ。そこじゃなくて。

 元の縫製が歪んでいたりすることがあるので(あるんです)、それがピシャっとまっすぐに整ってしあがったときですね。
 うっすらとゆがんだラインのミシン跡が残っていて、それをプレスしながら、仕上がったまっすぐラインとの差を眺めてうっとりしてます、はい。

 ライン縫製のことは経験が無くて知らないのですが、縫いはやはり手作業だと思いますから、縫いにゆがみがあると、その向こうに「人」を感じます。
 
 「やっぱり?そう? これってホント、縫いにくい素材よねぇ!」って勝手に共感してます。
 最近は本当に増えましたよね、ストレッチ素材。
 ストレッチ素材!

 便利ですよね。伸びるから体にフィットするし、シルエットは整うし。

 でも縫うときは「スベる!ズレる!ユガむ!」なもので、「消えてなくなれ」案件です。(「消えてなくなれ」案件は複数ありますから、そのうち書きましょう。)

 個人的にはストレッチ素材の「臭い」が私にはキツイです。独特の臭いがしますけど、合成化学っぽい臭いのアレです。(参照:『はい、縫製室です/合成化学物質過敏症を知ってくれたらありがたい』)


 「スベる!ズレる!ユガむ!」対策はいろいろありますよ。

①押さえ紙をする。(紙ヤスリや、厚地の接着芯で手作りします。私は接着芯でつくった押さえ紙が好み。)
②ピンを仕上げ線にとめて折線のガイドをつける。
③ガイド定規(…代わりのマグネット)を使う

 私が縫製室に居る理由は、縫製のプロにあわよくばプロの技術を学ぶことです。こういうプロならではの道具使いは勉強になります‼ ありがとう!

 


 「ストレッチ素材」だけで文章がスラスラと出てきてしまいました。いえ、「すっきり、うっとり、うきうき、やってやったぜ」感はストレッチ素材征服のことではありません。

 売られている時点でゆがんでたやつーっ!
 お直しで!
 キレイにしてやったぜーーーっ!

です。「お直しするといいよ♡」って脳内でうふふってなってます。

 特に価な大量生産の既製品は、右足と左足の長さの違いとか、裾がまっすぐに揃っていないこともよくあります。購入するときは…横に置いてチェックして、きれいに整えたいと思ったらあえて丈の長めのものを購入して丈詰めお直しを依頼することを勧めたいなって思いますよ。そのときは”解き”が必要ないくらいの長めで、ね。「詰める長さが短いほうが負担が無いのでは?」は間違いです。”解き(ほどき)”はとっても面倒くさいです。

 お直しサービスの依頼はセール期間は利用しないで、時間に余裕のありそうな時間帯も狙ったほうがよさそうですね。内側らの目線でいいますと、忙しい時間に「ゆっくりでいいから!」って言われても次が控えているので、”それだけ丁寧に時間をかけてやる”ために時間を作ることは無理です。忙しい時は全部忙しいですよ?

 丁寧に対応してほしいと思ったらむちゃくちゃ店内が閑散としてて人がいなくて暇そうな通常運転の時期にお買い物をするのがオススメですね。
 セール販売なんてやめておけばいいのに。必要な時にお買い物すれば、買う方も売る方も落ち着いていられます。

 レジにお直しを頼みそうな人が並んでいるなら、時間を30分以上ズラしたほうがいいですよ。一日でいえばものすごく暇なのに、なぜかその日のこの1時間だけ超集中してきて忙しい!ってことがよくあります。とてもよくあります。まったく同じタイミングではいってきます。そういうときは必ず仕上がり時間に「遅延」が生じます。

 どういうわけか「波」ってあるんですよね。なんなんですか。レジに一斉に引き寄せられるんですか。「グループでお買い物ですか?帰る時間が決まってるんですか?」って思うくらい。あれはなんなのでしょう…。確かに店内アナウンスや環境音などによって購買意欲をコントロールする手法はあるらしいのですが。まさか、それで…?

 


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