シチリアのカポナータ
シチリアでカポナータ(Caponata alla Siciliana)と言えば、ナスをメインにした甘酢っぱい料理のことを言います。
イタリア料理は砂糖をほとんど使わない料理ですが、シチリアは他の州と比べて、砂糖を使った料理があります。
これは、9世紀頃、アラブ人が砂糖をシチリア西部に持ち込んで以来、特にパレルモの料理にその影響が残っているからだそうです。
※出典: Comune di Palermo (https://turismo.comune.palermo.it/)
イタリアでの料理修行の初期は2006~2012年、毎年、パレルモ近郊のリストランテに通い、シチリア料理の魅力に取りつかれて沢山の素晴らしい料理を学ぶ機会を得ました。
当時マエストロ・トトは76歳だけど厨房でまだ中心的存在のシェフでした。パレルモ料理を盛り上げ発展させたシチリア料理協会名誉会長で、その美味しい評判とまわりの薦めにより、幸運にも学ばせてもらえることになりました。
シチリア弁しか話さないシェフの動きに必死についていき、味見し、メモを取りまくる日々・・・少しシチリア弁も覚えて、「だんだんシチリア人になってきた」と褒められるようになりました。
現在は91歳になり引退されてますが、先日久しぶりにメッセンジャーでお元気な様子を拝見、お話できて嬉しかったです。
私のイタリア料理の根底には、マエストロ・トトの料理が深く染み込んでおり、カポナータは何度も厨房で作っていたので、思い入れが強い料理のひとつです。
~<YAEのイタリアン>7月アドバンスコース・『郷土料理レッスンのシチリア本編』メニューより~
リストランテの料理は工程が長いので、レッスンでご紹介する機会はないとお蔵入りしていたのですが、家庭向けに少しアレンジをして、先月の郷土料理レッスン・シチリア編で、特別にご紹介することにしました。
※出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)シチリア』
シチリアは、地中海のほぼ真ん中に位置することから交易の重要処であり、紀元前8世紀から19世紀後半にかけてイタリアに統合されるまで、様々な国に支配されてきた歴史があります。
フェニキア人、ギリシャ人、アラブ人、スペイン人、フランス人・・・
新しい食文化を取り込むことで、シチリア料理はより豊かに発展していきました。
マエストロ・トトの料理にも、これらの歴史の影響が多く見られます。
それは、他のどの州の料理とも違う、複雑な味わい。
よくシェフが「シチリア料理は強い味なんだよ」と教えてくださった通り、どれも強烈に美味しいものでした。様々な文化を受け入れ、力強く生きてきたシチリア人の料理。
しかも年季が入ったマエストロの料理だから、とびきり美味しかったのです。
シチリアのカポナータは、アラブ人がシチリアに伝えた砂糖やケッパー、干しブドウ等を使っており、名前の由来には諸説あるようですが、貴族の食卓によく登場した魚のカポーネ(和名シイラ)を使っていたのを、庶民がナスに変えてアレンジした料理だとも伝えられています。
アラブの商人を通じてナスが入り、のちに一般に広まってから今はシチリアが生産量最多のナス。ナスで作るようにだんだんアレンジされたのか、揚げたナスで作ったほうが、コクと旨味があって魚より美味しかったからナスがメインになったのでは?なーんて色々想像を膨らませたりします。庶民やマンマは美味しく工夫する天才ですから。
ちなみに、アンナ・ゴゼッティ・デッラ・サルダのイタリア郷土料理集
(1900年代、イタリアを4周して1つづつ書き留めたレシピ集)のシチリア州の中にはカポナータレシピが2つ紹介されていて、
「カポナータその1」の材料は下記のとおり。
6人分:ナス1kg、玉ねぎ500g、トマト500g、セロリ100g、オリーブオイル100g、塩水漬けオリーブ、塩漬けケッパー、ビネガー1/2カップ、フレッシュなバジリコ、砂糖、塩。
「カポナータその2」
4人分:ナス600g、スーゴ用トマト200g、塩漬けグリーンオリーブ50g、酢漬けケッパーこさじ1,松の実とレーズン、たっぷりのバジリコ、玉ねぎ1,セロリ1、オリーブオイル、赤ワインビネガー、砂糖、塩、胡椒
シチリア各地で使う食材も少しずつ違うようですが、ナスの占める量が食材の中で最も多いのはだいたい共通しているようです。
私のはパレルモ流です。レッスンメニューなのでレシピ詳細は控えますが、
ナスについて美味しくなるポイントをいくつかお伝えしますね!
① 現地では、食感が加茂ナスや米ナスのような緻密で弾力のあるものを使っています。歯ごたえが良いのでぜひ米ナスをお勧めします。最近スーパーでも見かけるようになりましたね。
② イタリアのナスのアクの抜き方は、塩を振って出てきた水分をふき取ります。最近のナスはアクが少ないと言われてますので神経質になることはありませんが、この方法は揚げたときに油をあまり吸わず、少なめのオイルでも大丈夫です。また下味もついて揚げただけで美味しく、全体を混ぜ合わせたときにさらに美味しくまとまります。
③ ナスは揚げること。加熱に強いオリーブオイルできつね色になるまで揚げます。コクがうまれ美味しくなる大事なポイント!試作時に炒めてみましたが、揚げたほうが断然美味しく、シチリアの味に仕上がりました。
④ カポナータが出来上がったら、一晩冷蔵庫で寝かせてからいただきましょう。味が落ち着き、冷たくて、とても美味しくなっています。
そのまま前菜として、バゲットにのせたり、冷製パスタソースにしたり、
魚肉料理に添えても美味です♪
シチリアのシンボルマーク「トリナクリア」
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